【読書に没入する新しい旅トレンド】レトロ映え穴場カフェ&温泉で読書三昧!書を捨てず町へ出よう|大分県湯布院

Posted by: 山口彩

掲載日: Oct 12th, 2025

「読書に没入する旅をしませんか?」そう誘われて、どんなに仕事が立て込んでても絶対行きたい! と即答したほど読書好きな筆者。旅媒体の編集部という仕事は、頻繁に地方取材がありますが、旅先では取材とリサーチと懇親会がみっちり詰まっていて、読書時間など中々とれません。“読書リトリート”は、心と体を癒やし整えてくれるのか? 旅の満足感を得られるのか? そして大分県湯布院で見つけた、レトロ映えする最強穴場読書スポットとは? 現地ルポでお届けします!

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘1

毎日通いたい穴場読書カフェ「ゆふいん文学の森」

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 外観

今回の旅で筆者が毎日でも通いたい! と心が震えた場所、それが喫茶室&読書スペース「ゆふいん文学の森」です。文豪・太宰治が27歳の頃暮らした東京都杉並区の”碧雲荘”を、宮大工により見事に湯布院に甦らせたスポット。

 


 

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 入り口 太宰治 銅像 1階 洋間 ベンチ 窓際席

入り口には太宰治の胸像。1階の6人掛けの洋間と、庭の眺めに和む3人掛けのベンチ席。湯布院に太宰治が滞在した記録はありませんが、「文学的な価値がある建物を残してほしい」という住民の声を聞き、解体される予定だった碧雲荘を救うため名乗りを上げたのが、湯布院の旅館「おやど二本の葦束」の女将・橋本律子さんでした

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 1階 内観

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 1階 窓際席

1階の入り口すぐのスペースには、2人用と4人用のテーブル席があります

1階は「本の読める喫茶室」

アンティーク家具の温かさ、森や庭の緑の眺め、あちこちに置かれた本、ノスタルジックな雰囲気……。読書環境として理想的すぎる! 昭和モダンなテーブル席も、重厚な洋間も、窓辺のベンチも、書斎も和室も、どの席も魅力的です。「素敵ですね」と表面上は落ち着いた感想を述べた筆者ですが、心の中は狂喜乱舞しておりました。

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 1階 書斎 和室2

1階奥には、アンティークチェアのテーブル3人席、書斎風の2人席、和室の2人席、縁側の1人席がありました

2階は太宰作品の名が付いた5部屋の読書スペース

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 2階  洗面所 階段
読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 2階 HUMAN LOST 人間失格 

2階は飲食禁止で、読書スペースとなっています。5部屋すべて太宰作品の名前が付けられていて、こちら「HUMAN LOST」は、太宰治が下宿していた8畳間。代表作「人間失格」の原型とされる小説「HUMAN LOST」をこの部屋で執筆したそうです。

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 2階 HUMAN LOST 人間失格 お供えコーナー

部屋の一角には、太宰治先生への差し入れプレゼントコーナーも。1人のお客さんをきっかけに増えていったのだとか

読書リトリート ゆふいん文学の森 碧雲荘 2階 富嶽百景/斜陽/走れメロス/グッドバイ/HUMAN LOST

左から富嶽百景/走れメロス/グッドバイ/斜陽

「富嶽百景」で、愛する人の裏切りを知り、共同便所の窓から小さく見える富士山を眺めてじめじめと泣いたと書かれたトイレも現存しています。トイレの窓からは、今は霧に霞む由布岳が見えました。

>>「ゆふいん文学の森」間取り図

読書リトリート ゆふいん文学の森 読書体験

今回、読書旅の供として選んだ本は、太宰治の「人間失格」。誰もが知る名作ですが、筆者は20代の頃読んだもののあまり共感できず、その後太宰先生とは縁遠くなっておりました。この旅で、もう一度太宰作品と向き合いたかったのです

行きの飛行機から読み始めた人生2回目の「人間失格」。記憶よりずっと軽妙な太宰の文体に驚きつつ、このカフェでは呼吸をするように読書もするすると捗りました。途中から降り出した雨の音も心地よく、この世とあの世の間にたゆたうような、浮遊感ある読書時間を堪能したのでした。

カフェメニューもおいしい!

読書リトリート ゆふいん文学の森 カフェメニュー ピザ

筆者は季節野菜の旬菜ピザをオーダーしたのですが、新鮮な野菜がたっぷりで、クリスピーな薄焼き生地が香ばしく、とても美味でした。ご飯もおいしい読書カフェってかなりポイント高いです。

▶︎ゆふいん文学の森メニュー一覧
  • 読書コーヒー 650円
  • 読書紅茶 650円
  • アイスコーヒー 650円
  • ウインナーコーヒー 650円
  • 黒糖きなこミルク 700円
  • 冷やし甘酒 700円
  • 大分県産 ゆず蜜ソーダ 600円
  • 大分県産 かぼすはちみつ 600円
  • レモンスカッシュ 600円
  • ぶどうジュース 500円
  • オレンジジュース 500円
  • 牛肉々うどん 1,200円
  • 大分キノコとチーズピザ(10インチ) 1,200円
  • 季節野菜の旬菜ピザ(10インチ) 1,200円

混む時間帯は?予約できる?

読書リトリート ゆふいん文学の森 テラス

晴れたらテラス席もいいですね

次に訪れるときは1日中このカフェで過ごしたいと切実に思った筆者。今日のようによりどりみどりで席を選べて、1部屋1人で貸切にできればいいけれど、満席や行列になることもあるのか気になって聞いてみると、土日祝日の12:00-15:00は比較的混みやすく満席となることもあるそうです。

おすすめの時間帯は平日のオープン10時。予約もできます。ワンオーダーで時間制限はないので、2階で読書に耽り、お腹が空いたら1階で食事をし、また2階で本を読みながら寝てしまう人も過去にはいたそうです。自分もいつかそんな夢のような1日をここで過ごしてみたい……。

ゆふいん文学の森 
大分県由布市湯布院町川北1354-26 
由布院駅からタクシーで約8分 
0977-76-8171
10:00〜17:00
不定休
[公式サイト]
[Instagram]
[X]

旅の図書館〜YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)〜

旅の図書館〜YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)〜

センスのいいローカルフリーペーパーなども充実。展望デッキから由布岳を望めます

由布院駅前の観光案内所・由布市ツーリストインフォメーションセンターは、全面ガラス張りとなっており、開放感あふれる建物。旅に関する図書約1,500冊を紹介する「旅の図書館」も兼ねていて、旅の情報を仕入れたり、一休みするのに便利です。

「ゆふいんの森に乗りたいから由布院へ行く」という人も多いほど人気の観光特急

1階のカウンター席で読書していると、行き来する列車が旅情を誘う。「『ゆふいんの森』に乗りたいから由布院へ行く」という人も多いほど人気の、緑色の観光特急にも出会えました

由布市ツーリストインフォメーションセンター ~YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)~
由布市湯布院町川北8-5 JR由布院駅隣
※「駅前手荷物配送サービス」(由布院温泉観光協会加盟宿泊施設に限る)をはじめ、「手荷物の一時預かり」や「ベビーカー・車いすの貸し出し」なども行う
※コインロッカー 9:00-17:00 大600円/小500円
9:00~17:30
https://www.visit-oita.jp/spots/detail/8595

読書露天風呂を初体験「ゆふいん 月燈庵」

大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵

本館母屋は390年ほど前の庄屋屋敷2軒を解体・再設計し移築したもの。中央のテーブルは蔵の扉を加工したもので蝶番が見て取れる。客室へは観樹橋と名付けられた大きな吊り橋を渡ってゆく

今夜泊まるのは、全室離れ・露天風呂付きの「ゆふいん 月燈庵」。湯布院は、ゆったりとした造りの旅館・温泉宿が多いエリアですが、その中でも最大級規模の約1万坪という広さを誇ります。周囲を渓谷や森に囲まれた豊かな自然の中に佇むのはたった18棟。静謐さが漂う、圧倒的なプライベート感は、大人の読書リトリートにぴったりです。

大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵 露天風呂付き 離れ 読書1

夕食前に部屋の露天風呂で旅の疲れを癒やしながら早速読書。自宅のお風呂でも本を読むことが多い筆者ですが(寝落ちして人から借りた本を2回水没させたことも)、読書露天風呂は初めて。庭の緑が風流で開放感があり、頭が涼しくのぼせにくいので、つい読み耽ってしまいます。

▶︎ゆふいん 月燈庵アメニティ
  • バスタオル
  • フェイスタオル
  • ハンドタオル
  • POLA ESTHE ROYERのシャンプー・コンディショナー・ボディーソープ
  • カラハリのメイク落とし・洗顔料・化粧水・乳液
  • ドライヤー
  • 歯ブラシ&歯磨き粉
  • くし・ブラシ
  • 髭剃り
  • シャワーキャップ
  • 綿棒
  • ヘアゴム
  • 浴衣&靴下
  • 電気ポット、日本茶、談話室にドリップコーヒー
  • 無料ドリンク(ミネラルウォーター、コーラ、りんごジュース、かぼすジュース、アサヒスーパードライ2本、サッポロ黒ラベル2本)
大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵 大浴場 女湯 露天風呂

由布岳を望む大浴場の露天風呂。夜は満天の星空を楽しめる

盛り付けや味わいに芸術性がある料理

大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵 露天風呂付き 離れ 夕食

オリジナルの日本酒(月燈庵 ボトル300ml 1,980円)は水のように飲みやすく危険を感じるほど。松茸や足赤えび、銀杏などの旨味が詰まった土瓶蒸しは、切り株風の敷物にのせて。樹齢は30歳〜70歳くらいのものまであるそうで、筆者の敷物は数えたところ66歳でした

月燈庵は料理にも定評ある宿です。独創的な田舎料理と銘打つ夕食はどれも滋味深く、気取りがないのに随所に光るセンスに唸らされる。八寸の盛り付けも、ガマの穂や毬栗があしらわれ、季節をたっぷりと感じさせてくれます。

関あじや関さば、豊後牛などももちろんおいしかったのですが、筆者はステーキしいたけのアワビのような弾力ある食感にノックアウトされました。スライスして凍らせたシャインマスカットの上品さにも脱帽です。

大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵 露天風呂付き 離れ 読書 談話室1

滞在中何度も読書しに訪れた談話室。コーヒーを自由に飲めるのがうれしい。夕食のお刺身盛り付けに使われていたスケルトンリーフを本の栞にしてみました

大分県 湯布院 由布院温泉 月燈庵 露天風呂付き 離れ 竹茶碗

竹茶碗 1個1,430円/積層箸 1膳1,400円

そして朝食でご飯茶碗として使われていた竹の器に一目惚れした筆者は、宿のショップで箸も合わせてお土産にしました。旅先で器を買うと、家でその器を使うたびに旅先のことをふっと思い出して幸せな気持ちになれます。

器と同じように、今回共に旅した「人間失格」も湯布院と結びつき、本を開くたびその土地を思い出し、湯布院を訪れるたび「人間失格」を思い出すようになるのでしょうか。

ゆふいん 月燈庵
大分県由布市湯布院町川上295-2
0977-28-8801
[公式サイト]
[Instagram]

湯布院を代表する癒やしの居場所「茶房 天井棧敷」

大分県 湯布院 由布院温泉 亀の井別荘 茶房 天井棧敷

金鱗湖のほとり、亀の井別荘の豊かな庭園の中にある「茶房 天井棧敷」。梁や柱も現役で本物が持つ力強さに抱かれるような安心感がある。窓際席から見える緑が美しい

翌日、お土産屋さんが連なる湯の坪街道での自由時間に筆者が迷わず向かったのがここ。以前湯布院を訪れたとき、あまりの居心地のよさに必ずまた来ようと心に誓ったカフェ「茶房 天井棧敷」です。湯布院御三家と言われる高級旅館の1つ、亀の井別荘の敷地内にあり、気軽にその贅沢な趣を味わうことができます。

※湯布院御三家は由布院 玉の湯、亀の井別荘、山荘無量塔

大分県 湯布院 由布院温泉 亀の井別荘 茶房 天井棧敷 2階席 読書

2階席はまさに天井棧敷の雰囲気でしっぽりできる

江戸末期の造り酒屋の屋根裏を移築・改装した重厚でクラシカルな空間に流れる、グレゴリオ聖歌。結界があるのではと錯覚するほど、一歩足を踏み入れた瞬間、一気に厳かな気持ちになります。ここでの読書はまさに至福。

モーニングやカツサンドなどの料理メニューも絶品なので、朝食やランチにあわせて訪れるのもおすすめです。夜は「BAR 山猫」になります。

▶︎茶房 天井棧敷メニューの一部
  • 天井座敷ブレンド 660円
  • 天井座敷アメリカン 660円
  • コーヒーおかわり 330円
  • 特選有機栽培ダージリン 700円
  • 柚子蜜ソーダ 700円
  • 冷やし甘酒 700円
  • 大分県産 ゆず蜜ソーダ 600円
  • 自家製ジンジャーエール 700円
  • 自家製バスク風チーズケーキ 880円
  • プリンレモネーゼ 660円
  • モーニング 1,870円
  • ビーフシチュー 2,750円
  • カツサンド 1,540円
  • まきのやのトースト 880円
茶房 天井棧敷
大分県由布市湯布院町川上2633-1
0977-85-2866
9:00~17:00(17:00-24:00は「BAR 山猫」として営業)
不定休(年2回程度)
30席
https://www.kamenoi-bessou.jp/databox/data.php/facility_cafe_bar_ja/code

読書リトリートはいつもと違う特別な旅

読書リトリート 人間失格

人間失格の主人公・葉蔵と共に湯布院の地を巡るような親近感を覚えた今回の旅。20代の頃あまり共感できなかったのは、人間の弱い部分を認めたくなかったからかもしれない、と思いました。時が経ち、人間の弱さをしみじみ感じ、弱さと共に生きていこうと思えるようになった今は、他の太宰作品も読んでみようと興味が湧きました

旅はもともと、日常から離れて非日常を生きる時間です。
読書も本来、日常とは違うもう一つの物語を心の中に持つ行為です。

その2つを掛け合わせるわけですから、より日常を切り離した読書時間、より異世界に没入しやすい旅を実現できる。「読書没入旅」という体験は、自分だけの特別な記憶を創ることだと感じました。

旅先でのんびりするのが苦手と言われている日本人にとって、「読書リトリート」という旅テーマは、忙しなく観光しないためのいい口実になるのではないでしょうか。

旅の強い味方!「スカイスキャナー」とは?

「スカイスキャナー」は、無料の旅行検索サービス。今回の読書リトリートは、「スカイスキャナー トラベルトレンドレポート2026」で発表された2026年注目したいトレンド旅の1つです。他にも、「山岳リトリート」「ローカルツアー」など、多様化する旅のスタイルが注目されています。

覚えておきたい!スカイスキャナーの便利な機能

スカイスキャナー「すべての場所から探す」

2人に1人が利用するという「すべての場所から探す」機能 ※昨年スカイスキャナー上での検索で予約を行った日本におけるユーザーのうち

料金順のおすすめや、見落とされがちな目的地が発見できる「すべての場所から探す」機能。「ビーチ」「グルメを満喫」など 旅行先で体験できることなどキーワードに基づいておすすめの旅行先を提案してもらうこともできます。

大きく価格が下落した航空券を紹介してくれる「DROPS」(アプリ限定)、航空券の金額が変動したタイミングで通知を受け取ることができる「プライスアラート」機能、最安日の目安がひと目で分かる「カレンダー/チャート」も要チェックです!

スカイスキャナー
https://www.skyscanner.jp/
 
スカイスキャナー トラベルトレンドレポート2026
https://www.skyscanner.jp/travel-trends

©︎Aya Yamaguchi

travelist

PROFILE

山口彩

Aya Yamaguchi 統括編集長

インターネットプロバイダ、旅行会社、編集プロダクションなどを経てフリーに。旅と自由をテーマとしたライフスタイルメディア「TABIZINE」編集長を経て、姉妹媒体「イエモネ」を立ち上げる。現在は「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「novice(ノーヴィス)」「bizSPA!」統括編集長。可愛いものとおいしいものとへんなものが好き。いつか宇宙に行きたい。

インターネットプロバイダ、旅行会社、編集プロダクションなどを経てフリーに。旅と自由をテーマとしたライフスタイルメディア「TABIZINE」編集長を経て、姉妹媒体「イエモネ」を立ち上げる。現在は「TABIZINE(タビジン)」「イエモネ」「novice(ノーヴィス)」「bizSPA!」統括編集長。可愛いものとおいしいものとへんなものが好き。いつか宇宙に行きたい。

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