オランダ北東部、オーバーアイセル州には「ヒートホールン」(Giethoorn)という美しい村があります。首都アムステルダムから列車を乗り換えつつ約2時間、さらに1時間1本しかないバスで約15分。交通の便がかなり悪いにも関わらず、「オランダ人が住んでみたい村ナンバーワン」と言われているのだとか。いったいどのようなところがオランダ人の心をとらえているのでしょうか。
おとぎ話の光景のような「オランダのヴェネツィア」
これが、ヒートホールンの村の様子です。おとぎ話か、絵画の中の光景みたいですね。でも実はこの画像には、運河(水路)、ボート、橋、茅葺き屋根の家というヒートホールンを象徴する要素がつまっています。
実はこの人口約2千600人、全長約7キロの小さな村には車道がありません。つまり、車が走れないのです。そのため、村の中の移動は徒歩か自転車、発達した水路を活用したボートのみになります。ボートでの移動がメインとなるため「オランダのヴェネツィア」という異名をもっていますが、ヴェネツィアが大規模な観光都市なのに対し、こちらは田舎らしく時間がゆったりと流れる場所。そしてボートも騒音をたてないように気を使われているので、「ヒートホールンで一番騒がしいのはアヒルの鳴き声」なのだとか。都会の喧騒に疲れたら、ぜひ訪れたい村ですね。
「ピート」を運ぶために発達した水路
ではそもそも何故、こんなにも水路が発達した村になったのでしょうか。
750年の歴史を誇るヒートホールンの村は、かつては泥炭(ピート)採掘が主産業でした。その泥炭の採掘跡が湖となり、泥炭運搬のための水路や運河が今ではボートのための水路として活躍しているのだとか。その水路沿いの島になっている土地に家が立ち並び、中にはボートでしか行き来できない家もあるのだそう。
村内に175もあるという橋も、村の名物のひとつ。逆に言うと、道路ではなく水路が発達して、小さな橋だらけだから車が入ってこられなんですね。
車ばかりではなく、この橋の下をくぐれないような大きな船も、村に入ってこられません。このヒートホールンの中世で時が止まってしまったような雰囲気は、こんな風に外部からのアクセスの悪さが効果的に働いているのかもしれません。
オランダ人が憧れる、昔ながらの茅葺屋根の家
車が入ってこられない静かで落ち着いた環境であることに加え、オランダ人のハートをつかんでいるのが、昔ながらのかやぶき屋根スタイル。
約10年ごとにメンテナンスをしないといけないので維持費がかかりますが、古き良き時代を思い起こさせ、自然に近いライフスタイルを象徴するかやぶき屋根はオランダ人にとってひとつのステイタス。豊かな暮らしのシンボルのような存在でもあります。
しっかりお手入れされているためか、古い家でも寂れた印象はありませんね。住人が愛情をもってメンテナンスをしていることが伝わってきます。
アムステルダムのような大都会も魅力的ですが、オランダの真の魅力はこういう田舎にあると筆者は考えています。もしオランダを旅行する機会があれば、このヒートホールンも目的地に加えてみてはいかがでしょうか。
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[This Village Without Roads Is Straight Out Of A Fairytale Book]
[GIETHOORN]