>>1本の木に会いに行く【20】宮沢賢治が元気をもらった“ぎんどろの木”<岩手県>
複数の登山コースがある岩手山
こちらは八幡平から見た岩手山。大きくてどっしりとした山で、山頂からはいったいどんな光景が広がるのだろうと、想像力をたくましくしていました。
登山口です。東西南北、いろんな方向から登ることができますが、今回選んだのは東側にある柳沢(馬返し)ルート。東北自動車道から近く、この日宿泊する盛岡の宿へのアクセスが便利という理由です。もっともメジャーなコースかもしれません。
ちなみに柳沢の登山口は緑豊かな高原にあって、気持ち良さそうなキャンプ場もあります。
登り4時間40分、下り3時間10分というのが目安の時間。馬返しコースともいうだけあって、馬も引き返すほどの急勾配ということなんでしょうか。
登山口から1時間少し歩くと、登山道は旧道と新道に分かれます。このあたりから傾斜は急になってきます。旧道は樹木の少ない分、展望のいい岩場を登ります。一方の新道は樹林帯を歩くようです。そこで上りは左側の旧道、下りは新道を歩いてみることにしました。
旧道を歩いて上っていくと、確かに眺望がきき、下界がよく見えるのです。東北本線や東北自動車道、そして盛岡のある盆地、さらに北上山地が南北に広がっていました。
たくさんの高山植物に魅了されます
筆者が訪れた6月下旬は、高山植物がほころび始めていました。こちらの写真は「ハクサンチドリ」。チドリという鳥が羽ばたいているように見えることから名付けられました。
そして、こちらは「ヤマオダマキ」のようです。
登山道のすぐ左手には、急斜面で滑りやすい岩場が広がっています。少しでも足を入れると危険な場所ですね。その分、後ろを振り返っては広々とした絶景に癒やされるのです。
ちなみに帰りに通った新道には緑が広がっていて、「シラネアオイ」がたくさん咲いていました。シラネアオイが咲き乱れる小道もあって、この季節はとても美しい場所なのですね。
八合目は平坦 ふたたび山頂に上る
4時間近く歩いて、旧道と新道が交わる7合目に着きました。ほどなく8合目。ここで平坦な高原に出ます。
こんな山の上に台地状の高原が広がっているのです。標高は1,760m。ここにりっぱな八合目避難小屋があります。夏場は管理人も常駐しているそうです。
避難小屋の前には「御成(おなり)清水」があって、こんな標高の高い場所で冷たい水がこんこんと湧き出ているのです。おいしい水でした。ちなみにトイレもありますので、ご心配なく。
噴火口になった山頂へ
八合目避難小屋から10分ほど平坦な道を歩くと、こちらもトイレのある不動平避難小屋に到着します。ここから、ふたたび山頂を目指すことになります。火山性のきめの細かい砂地で足が滑ります。とはいえ、それほど時間はかかりません。15分ほどで山頂火口が見えるお釜の周縁部までたどり着きます。
周縁部には石の古い祠が建てられていました。昔から修験者たちがここで修業に励んだのでしょうね。この日は風も穏やかで、周囲は360度見晴らしがきいて気持ちいいこと。
この周縁部の緩やかな道を歩いて山頂に到着です。不動平避難小屋からは30分ほど。この周縁部は、ぐるりと一周することもできます。時間は1時間もかかりません。下界からは想像もできなかった岩手山山頂の大きな火口、そして360度の絶景をたっぷりと味わうことができました。
住所:岩手県滝沢市上岩手山
電話:019-656-6534(滝沢市観光物産課)
公式サイト:https://www.city.takizawa.iwate.jp/data/takizawa_kankou/sizen_kanko/cp_umagaesi.html
盛岡の奥座敷・つなぎ温泉「四季亭」へ
この日は、盛岡の奥座敷と呼ばれる「つなぎ温泉」に宿泊することにしました。盛岡市郊外の人造湖・御所湖のほとりに位置する、歴史ある温泉です。
「つなぎ温泉」の「つなぎ」とは、平安時代末期の武将・源義家が合戦に訪れた際、穴の開いた石に馬をつなぎとめ、温泉に入ったことから名付けられたそうです。実際に穴の開いた「繋石」がありましたが、これは近年、地元の建築業者が石を動かすために開けたそうで、もともとは現在地の南方の山のふもとにあったといいます。
とはいえ、この繋石の隣にあるのが、この日の宿「四季亭」。純和風の宿です。
和の佇まいが落ち着きます
山を下りて、汗だくになったままの訪問は少し気が引けましたが、玄関前には駐車係の方がいて、丁重に案内されて入館しました。
斜面に建つロビー脇の庭の築山も見事。
また玄関ロビーには小さな池があってたくさんの金魚が泳いでいます。上品な和の佇まいが落ち着きます。
客室も何が違うのでしょう、ゆったりと落ち着きますね。
部屋の窓からは、先ほどの築山が見えました。
名湯・つなぎ温泉で癒やされました
さて、温泉で汗を流しましょう。泉質はアルカリ性単純硫黄泉でpH9.1とのこと。源泉温度は72.5℃、引き湯は65.3℃と高温で加水することがあるそうで、山あいでもない場所でいいお湯なんですね。成分分析表を拝見すると、硫酸成分があり、メタケイ酸は87mgで美肌の湯といえます。
露天風呂もゆったりとしていて気持ちのいいこと。ほぼ貸切状態でゆっくりと癒されました。ちなみに脱衣場にタオルが備え付けられているのはうれしいですね。
岩手の山の幸海の幸をいただく
料理は出汁にこだわっていて、枕崎産のカツオ本節、宗田カツオ厚削り、三陸山田産のトビウオ焼干し、三陸普代産の昆布を使っているそうです。先付けは秋刀魚の南蛮漬け、もろこし豆腐など。盛り付けもきれい。
碗ものは鯖の菊花碗、煮物は里芋饅頭。岩手三陸の海の幸山の幸がお椀に閉じ込められていますね。このほか、お造りに口替わりとして鮎の有馬煮、鰻玉子、合鴨の燻製、揚げ物として舞茸と海老の天麩羅に茄子の挟み揚げと続きました。
そしてご飯のお供は、替わり鉢として岩手牛の鉄板焼き。ポン酢でいただきます。山歩きでおなかの空いた筆者にとっても十分な量で、大満足しました。そして眠りに着く前にもう一度入浴。
さて朝食ですが、こちらも手が込んでいるようです。ちゃんと説明書きがありました。岩手産のひとめぼれ、味噌やワカメが使われています。リンゴジュースだって地元の自然農法で栽培したジョナゴールド、そして岩泉のヨーグルトなどなど、地産地消にこだわっているんですね。
これで料金は1名宿泊で1泊2食2万円しませんからリーズナブル。上品で落ち着いていて、それでいて親しみやすい印象。ゆったりと気持ちよく過ごせる宿でした。
[All Photos by Masato Abe]
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