みそ汁やボルシチは入っていない?
「世界三大スープ」と言われて何を思い浮かべますか? 人によっては(特に日本人は)みそ汁を候補の1つに挙げるかと思います。
筆者には一時期、ロシア人たちと1つの家で共同生活していた経験があります。その意味で筆者は、「世界のスープ」と言われればボルシチを思い出します。赤カブのような真っ赤な野菜「ビーツ」でつくったスープで、見た目のインパクトとは異なる優しい味が印象的でした。
このボルシチも、場合によってが「世界三大スープ」に入るようですが、通説では選外となっていました。
『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典』(講談社)によると「世界三大スープ」の通説は、
- トムヤムクン(Tom Yum Kung)
- ブイヤベース(bouillabaisse)
- ふかひれスープ(鱼翅汤)
とされています。
ふかひれスープは説明不要ですよね。トムヤムクンもタイ料理の有名なスープです。
筆者の暮らす北陸に本社を構え、100店以上をタイでも店舗展開する「8番らーめん」は、現地で「トムヤムクンらーめん」を出して人気を博していると別媒体の取材で知りました。期間限定で国内でも販売し、北陸でも話題になっていました。
名前を聞いただけでタイを連想できるくらい、トムヤムクンはメジャーなスープと言えそうです。
ブイヤベースについてはいかがでしょうか?
<魚介類をサフラン、ニンニクなどとともにシチュー風に煮込んだ、南仏プロバンス地方の郷土料理>(小学館『精選版 日本国語大辞典』より引用)
とあるように南フランスの鍋料理です。
『世界大百科事典』(平凡社)によると、マルセイユ(南フランス)の漁師たちが、捕れたての魚を鍋に放り込んで煮た料理が起源らしく、沸騰したら(bouillir)弱火にする(abaisser)調理方法が語源となっているようですね。
世界三大スープは日本独自の考え方?
どうしてこれらのスープが「世界三大スープ」と認定されているのでしょう。
そもそもの話として、この「世界三大スープ」の考え方は、日本独自の定義だと知っておいたほうがいいのかもしれません。
英語で検索しても同様の定義が出てきませんし、「The Three grand soups (世界三大スープ)」に関する海外のQ&Aサイトを見ても、「世界三大スープ」のコンセンサスが世界的に取れていない様子が伝わってきます。
英語版の「Wikipedia」では、
<The Three grand soups (世界三大スープ sekai sandai sūpu) is a common term in Japan>(『Wikipedia』より引用)
とあります。「『世界三大スープ』は日本で通用する言葉」といった意味ですね。
『実用日本語表現辞典』にでは、料理研究家にしてエッセイストの西川治さんが考えたとの説が紹介されています。
<エッセイストの西川治が初めに考案したという説も見受けられるが、諸説ありはっきりしない>(『実用日本語表現辞典』より引用)
書籍版を持たない『実用日本語表現辞典』は「実用的で現代的な日本語の表現について解説する辞書・辞典サイト」です。信ぴょう性を疑う意見もネット上で見受けられましたので、記載の「説」の情報源を念のため確認しようと試みましたが、残念ながらわかりませんでした。
ただし『実用日本語表現辞典』にも西川治さんの話は引用文のとおり「説」として書かれています。そう思うと、謎の多い「世界三大スープ」については話半分に考えて、楽しい議論のたたき台として使うくらいがいいのかもしれませんね。
[参考]
※ 「HACHIBAN-RAMEN」がラーメンの呼び名になるくらい8番らーめんがタイで成功した話 – HOKUROKU
※ 8番らーめんのタイ出店30周年を記念して一番人気「トムヤムクンらーめん」が期間限定で発売開始!ライム増し・パクチー増しのトッピングも – HOKUROKU
※ プチ・ロワイヤル仏和辞典
※ TIL about the three grand soups, a Japanese term referring to the 3 best soups in the world: Borscht, Bouillabaisse, shark fin soup, and tom yam kung. There is no consensus about which of the 3 out of 4 are the true grand soups. – reddit
[All photos by Shutterstock.com]