世界で一番の天文台
アタカマ砂漠
旅に関するギネス世界記録を紹介するTABIZINEの別の連載で、南米チリにあるアタカマ砂漠を取り上げました。
世界で最も乾燥した砂漠として、ギネス世界記録にも登録される場所です。南北1,200kmに広がるその長大な砂漠に実は、東京大学が関係した世界一も存在します。
どんな分野での世界一なのでしょうか。答えは、世界で最も標高の高い場所にある天文台になります。
ギネス世界記録にも登録
チャナントール山 ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
天文台の正式名称は、「東京大学アタカマ天文台」です。広大なアタカマ砂漠は、低い場所でも標高が3,000mに達します。
さらに、アタカマ砂漠にはいくつかの孤立峰が存在し、その中でも標高の高いチャナントール山の山頂に、東京大学アタカマ天文台が存在します。
「Highest astronomical observatory(世界で最も標高の高い天文台)」と登録されるギネス世界記録では、標高5,640mと記載されています。
言うまでもなく、富士山の山頂よりも高い場所にある天文台なのですね。
大気透過率の高さが抜群に優れている
🔭The Tokyo Atacama Observatory Telescope (TAO) of the University of Tokyo, Japan 🇯🇵 will be installed on top of Cerro Chajnantor at a height of 5,640 meters above sea level. (2/6)
📸: TAO pic.twitter.com/hZkv7hrJfO— Chile MFA 🇨🇱 (@ChileMFA) March 20, 2021
こうなってくると凡人としては素朴な疑問が浮かびます。東京大学がなぜ、チリの砂漠の独立峰に天文台などをわざわざ建てたのでしょうか。
その理由はまさに、これまで触れてきた、標高の高さや、乾燥した気候が関係しているとの話。
専門的な言葉をそのまま使えば、大気透過率の高さが抜群に優れているらしいです。標高が高く乾燥した地域であるため、大気中の水蒸気量が極めて低く、晴天率も高いので、天体観測に適しているのだとか。
未開拓の独立峰に天文台をつくる
東京大学アタカマ天文台の様子。東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画のニュースリリースより画像引用
ただし、このような土地に天文台をつくるためには、容易に予想が付きますが、かなりの険しい道のりがあったそうです。それこそ、チャナントール山は未開拓の独立峰だったため、幅4m・長さ6.4kmの道路そのものを開通させるところからスタートしなければいけなかったそう。
気圧も気温も低いため、作業メンバーは酸素吸入器を必要とします。各種の機器についても、平地とは異なる条件下での作業を想定して選定・運用しなければいけないようです。
この東京大学アタカマ天文台がギネス世界記録に認定されたタイミングは、2011年5月5日でした。
その年の7月の時点で、チャナントール山の山頂には、口径1mのminiTAOという赤外線望遠鏡とドーム、観測コンテナ、倉庫コンテナ、発電機コンテナが設置されていました。
あの大震災で日本が難局に差し掛かっていたとき、世界では一方で、日本人の研究者たちが素晴らしい偉業を達成していたことになります。
しかも、この天文台プロジェクトは、現在進行形で進化し続けています。
日本がどんな状況下に置かれても、われわれ日本人の同胞は「世界の果て」で立派に活躍している。なんだか勇気をもらえる話ですね。
[参考]
※ Highest astronomical observatory – Guinness World Records
※ 第5章 サイト
※ チャナントール山頂で地鎮祭が行われました – 東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画
※ 東京大学アタカマ天文台がギネスに認定されました。
~世界最高地点の天文台~ – 東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画
※ 【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ – 東大新聞オンライン
※ 世界で一番高い場所に望遠鏡 東大がチリに建設 – 朝日新聞
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