風変わりな祭りのために世界中から観光客が集まる
マレーシアのタイプーサム ©️Calvin Chan / Shutterstock.com
タミル族という言葉をどこかで習った記憶が、頭のどこか片隅にありますか? 世界史で大学受験した人は、例えば「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」という言葉を特に覚えているかもしれません。
タミル人とは、スリランカの国民の15.3%を占める民族で、もともとは南インドやスリランカに暮らすヒンドゥー教徒という出自を持ちます。
しかし、シンハラ人(仏教徒が主体)が74.9%を占めるスリランカでは、シンハラ人が優遇されるような社会が存在するため、タミル人が独立運動を展開してきました。その一環で「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」のような武装組織も誕生したのですね。
そんなタミル人は、南インドやスリランカのみならず、移民として各国へ渡っています。
『ブリタニカ国際大百科事典』によると、マダガスカル、マレー半島、インドシナ半島、タイ、ミャンマー、南アフリカ、フィジー諸島、西インド諸島などに多く見られるそうで、これらの土地に移住したタミル人は、移住先でも献身的なヒンドゥー教徒として暮らしているそうです。
当然、独自の文化や伝統を移住地でも守っており、「タイプーサム」 という奇祭も毎年、行っています。マレーシアでは、タイプーサムの日は祝日となるほど。その風変わりな祭りの内容を一目見ようと世界中から観光客も集まります。
一体、どんな祭りを維持しているのでしょうか?
針や釘を皮膚に刺しまちを練り歩く
©️Nicky Urban / Shutterstock.com
まずは小学館『大辞泉』の解説を確認してみましょう。タイプーサムについては、次のように書かれています。
<体中に鉄串などを刺し、カバディと呼ばれる一人用の神輿を担いで練り歩く> (『大辞泉』より引用)
「体中に鉄串などを刺し」という部分がエキセントリックすぎて意味がわからない人も多いはず。
例えば、タミル人の一部が移住した南アフリカで開催されたタイプーサムの取材記事によると、祭りの参加者たちの一部は、カラフルな衣装にプラスして、かぎ針や釘を皮膚に刺し、そのかぎ針に装飾品をぶら下げ、まちを練り歩いているのだとか。
要するに、体を痛めつけた状態で祭りに参加する熱心な信者がいるのですね。なぜ、このような苦行に取り組むのでしょう?
これは信者が、美・若さ・力を象徴するヒンドゥー教の神・ムルガ神の生誕を祝うために、1カ月にわたって肉食を断ち、厳格な菜食主義を守り、精神を極限まで追い込めば、痛みを感じないまま神聖な苦行に取り組めると考えているからなのだとか。
上述した南アフリカのみならず、マレーシアやシンガポールで毎年1月~2月に開催されるタイプーサムは特に有名です。
世界の変わった祭りを見て回りたいという欲求があれば、今から来年に向けて旅の準備をスタートしてみてはいかがでしょう?
[参考]
※ タイプーサム – Singapore Tourism Board ※ ライムの実ずらり、南アでヒンズー教の奇祭「タイプーサム」 – AFP ※ Batu Caves – Britannica ※ Murugan – Britannica ※ スリランカ内戦の終結~シンハラ人とタミル人の和解に向けて – 外務省 ※ スリランカ基礎データ – 外務省 ※ タミル・イーラム解放の虎(LTTE) – 外務省
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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