国内最大になる地下40mにあるトンネル式の巨大な水槽
今回、取材が許されたのは「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)」。完成すれば中野区野方5丁目から練馬区高松3丁目まで約5.4㎞に渡る、環七通りや目白通りの地下に整備されるトンネル式の調節池。
現在、工事の真っ最中。フェンスに囲まれた小さなエレベーターに乗車し、地下約40mの世界を目指します。
実は、この調節池の整備は2023年から始動した「TOKYO強靭化プロジェクト」のひとつ。1923年(大正12)年9月1日に発生した関東大震災から100年を迎えるのを機に、2040年代までに総事業費15兆円規模で実施される都市計画。風水害や地震、火山噴火、電力・通信などの途絶、感染症などに備え、被害を最小限に抑えるさまざまな施策を実施予定。
それにしても、足がすくんでしまう高さ!
階段で降りれば、工事中のトンネルの姿が間近に迫る大迫力。
煙や粉じんなどで覆われている過酷な環境と思いきや、空調も効き、ピンクのフェンスや柱などと、明るく整然とした雰囲気が印象的。
立坑から横に伸びるトンネルに入っていきます!
まさにこのトンネルが調節池になるところ。豪雨時などは水でいっぱいになるのです。「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)」は、1時間に75mmの降雨に対応できる能力があり、貯留量(貯水量)は約68万立方メートル(68万トン)。25mプールに換算すると約2,200杯分もあります。
さらにこの調節池は、すでに完成し運用されている練馬区の「白子川地下調節池」と杉並区の「神田川・環状七号線地下調節池」を連結させる役割もあるんです。それぞれの貯留量は約21万立方メートル(21万トン)と約54万立方メートル(54万トン)。合計すると貯留量は約143万立方メートル(143万トン)となり、25mプール約4,800杯分もの水を貯めることが可能に。
総延長は約13.1kmにもおよび、国内最大の地下調節池となるのです!
こちらが、外径約13.45mもの巨大なシールドマシンによって現在掘削中の最先端部。
まったく音はせず、粉じんも立たず、削っているのかいないのかわからないほど。
1分間に約4mm、1日に4mほど掘削しているんだとか。その状況は、トンネル内に設けられた中央監視室で24時間、常に監視され、2025年12月の完成を目指します。
掘削された土砂は、1日で10トンダンプカー100台になることもあるとのこと。
調節池が密集する激レアスポットに広がる巨大な地下空間
実際に運用されている調節池はどうなっているのか興味ありますよね! ということで、これは練馬区の「白子川地下調節池」。
内径は約10m。特別にライトアップされていますが、貯水のための施設なので通常は真っ暗。
ぽっかりと口を開ける暗闇の向こうには、約3.2kmに渡りトンネル(調節池)が続きます。
地下トンネル式の「白子川地下調節池」周辺には、異なるタイプの調節池が3つあり、白子川地下調節池群と呼ばれる都内有数の珍しいエリア。川の左岸に列柱が連なる取水口が見えるのは「比丘尼橋下流調節池」。
「比丘尼橋下流調節池」は、地下に広がる神殿ような造りをもった箱式。
左側から水が流れ込み、右側には流木などが流れ込まないようにフェンスが設けられています。
こちらは、川の向こうに広がるテニスコートやグランドに水が流れ込む「比丘尼橋上流調節池」。普段は目にすることや気にすることの少ない調節池ですが、東京都には、12の河川に27カ所のさまざまなタイプの調節池が設けられ、水害への備えが進められているのです。
URL:https://tokyo-resilience.metro.tokyo.lg.jp/
環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)
URL:http://kanzyou7.com/
白子川調節池群
URL:https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000053906.pdf
[Photos by ©︎tawawa]