日本の世界遺産【25】先史時代の人々の生活と複雑な精神文化を今に伝える「北海道・北東北の縄文遺跡群」

Posted by: あやみ

掲載日: Jan 24th, 2024

約1万5,000年前〜2,400年前を「縄文時代」と呼びます。北海道・北東北の地域は、太古から変化に富んだ地形が特徴的ですが、内湾や湖沼、水量豊富な河川に恵まれています。このような環境のもと、約1万5,000年前に人々は定住を開始。複雑な精神文化を構築していきました。今回は、定住した人々の精神文化が息づく「北海道・北東北の縄文遺跡群」をクローズアップ。概要や見どころはもちろん、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

青森県・三内丸山遺跡
 


 

縄文人は複雑な精神文化の発展を示す「北海道・北東北の縄文遺跡群」

白神山地
白神山地

北海道、青森県、岩手県、秋田県は、世界自然遺産である「白神山地」や「知床」といった緑豊かな美しい自然が残る場所です。これらの地域は、山地、丘陵、平地、低地など変化に富んだ地形があることに加え、内湾や湖沼、水量が豊富な河川も形成されています。

ブナ林を中心とした冷温帯落葉広葉樹が広がっているほか、海洋は暖流と寒流が交差しており、サケやマスといった回遊魚が遡上する恵まれた環境なのです。

北海道・北東北の縄文遺跡群
約1万5,000年前、人々は食料を安定して確保できる同地域に定住を開始。その後、1万年以上にわたり、温暖化や寒冷化に伴う、海進・海退などの環境の変化が起こりましたが、人々はそのような変化に対応しながら、採集・漁労・狩猟を基盤とした生活を続けました。

縄文土器
縄文土器

また、定住を開始してすぐに複雑な精神文化を構築。墓地を作ったり、祭祀場を形成したりしました。

このような、先史時代の人々の生活や複雑な精神性を今に伝える貴重な遺跡が、2021年に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」です。17の考古遺跡で構成されています。

「北海道・北東北の縄文遺跡群」の見どころは?

青森県津軽半島の外ヶ浜町に位置する「大平山元遺跡」は、陸奥湾に注ぐ蟹田川沿岸の河岸段丘上にある遺跡です。サケ・マスが遡上するほか、石器となる良質な石材(珪質頁岩)が採取できます。この遺跡からは、旧石器時代の終わり頃の特徴を持つ石器類をはじめ、土器片と石鏃も出土。土器片に付着していた炭化物の放射性炭素年代測定を行ったところ、紀元前1万3,000年頃のものである可能性が出てきました。そのため、これらは現時点で、北東アジア最古級の土器です。

旧石器時代には土器はまだ作られていないと考えられていることから、この遺跡は旧石器時代から縄文時代へ移り変わる頃の貴重なものだといえるでしょう。「大山ふるさと資料館」に立ち寄り、日本最古の土器片を見学したいですね。

三内丸山遺跡
また、1992年に始まった発掘調査により、縄文時代前期~中期の大規模な集落跡が見つかった「三内丸山遺跡」も必見です。多数の竪穴建物跡や掘立柱建物跡のほか、盛土、お墓、多量の土器や石器なども出土。ここは縄文の丘三内丸山まほろばパーク内にあり、縄文時代の「ムラ」を体験できます。

復元された大型掘立柱建物跡や大型竪穴建物跡、土器や石器、土偶、ヒスイなどの遺物がたくさん出土している盛土、ゴミ捨て場として使われていた谷といった見どころが盛りだくさんです。入口施設である「縄文時遊館」では、三内丸山遺跡からの出土品を見学できますよ。

北海道伊達市にある「北黄金貝塚」は、水産資源豊富な内浦湾に面していて、かつては後背地に落葉広葉樹の森が広がっていました。ここでは、縄文前期の5つの貝塚を中心とする大規模な集落遺跡、儀式や祭祀の場と考えられている、国内最大最古の水場遺構が見つかっています。

史跡北黄金貝塚公園として整備されているため、復元された貝塚や竪穴住居を見学できます。ガイダンス施設「北黄金貝塚情報センター」には、縄文時代の貝塚や、墓が再現されているほか、発掘品の展示も! 縄文好きにはたまらない遺跡になっていますよ。

さらに、約1,500年にわたり継続して集落が営まれたとされる函館市の「大船遺跡」も見逃せません。この遺跡は、住居の規模が大きく遺構の密度が高いことが特徴です。土器、副葬品、動物の遺骨など 20万点を超える出土品がありました。

大船遺跡・国宝「中空土偶」
©️公益社団法人北海道観光振興機構

ここには、竪穴建物、貯蔵穴、墓、盛土が配置されていて見学可能です。また、ガイダンス施設「函館市縄文文化交流センター」には、国宝「中空土偶」を常設展示しているほか、函館市の縄文遺跡から出土した、土器・石器などを多数展示。予約なしで体験できる「縄文ペンダントづくり」「組みひもアクセサリー」といったプログラムも開催していますよ。

大平山元遺跡、三内丸山遺跡、北黄金貝塚、大船遺跡への行き方

今回、見どころとしてご紹介した4カ所への行き方は下記の通りです。

大平山元遺跡

JR津軽線「大平駅」から徒歩約5分

大平山元遺跡
住所:青森県東津軽郡外ヶ浜町字蟹田大平山元
電話:0174-31-1233(大山ふるさと資料館)
公式サイト:https://www.town.sotogahama.lg.jp/bunka/bunka/oodai_yamamoto.html

三内丸山遺跡

JR「青森駅」から市営バス「三内丸山遺跡」行きで約30~40分

三内丸山遺跡
住所:青森県青森市三内丸山305
電話:017-766-8282(三内丸山遺跡センター)
開園時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
ゴールデンウィーク・6月1日~9月30日 9:00~18:00(入場は17:30まで)
休園日:毎月第4月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月30日~1月1日)
入園料:一般410円、高校生・大学生等200円、中学生以下無料
公式サイト:https://sannaimaruyama.pref.aomori.jp/

北黄金貝塚

JR「黄金駅」から道南バス「伊達駅前」「洞爺湖温泉」行きで「北黄金貝塚公園前」下車、徒歩約5分

北黄金貝塚
住所:北海道伊達市北黄金町75
電話:0142-24-2122
開館時間:9:00〜17:00
開館期間:毎年4月1日から11月30日(冬期間閉鎖)
公式サイト:https://www.city.date.hokkaido.jp/hotnews/detail/00001560.html

大船遺跡

JR「函館駅」から函館バス「鹿部」「古部」「椴法華」行きで約100分「大船遺跡下」下車、徒歩約10分

大船遺跡
住所:北海道函館市大船町
電話:0138-25-2030(函館市縄文文化交流センター)
公開時間:4月~10月 9:00~17:00、11月~3月 9:00~16:00
休場日:12月29日~1月3日
公式サイト:https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2022012400058/

日本の灯台50選に選ばれた!詩情あふれる「龍飛埼(たっぴさき)灯台」

青森県・龍飛埼
龍飛埼(たっぴざき)

大平山元遺跡のある青森県東津軽郡外ヶ浜町を訪れたら、日本の灯台50選にも選ばれた「龍飛埼灯台」も見に行きたいところです。津軽海峡を行き交う船の安全を見守ってきた灯台で、夕暮れ時に訪れるとより趣があります。また、龍飛崎を通る国道339号線は、岬下から灯台まで362段の階段になっており、日本で唯一、総延長388.2mの「階段国道」です。

マグロ丼のイメージ
加えて、外ヶ浜町は一本釣りマグロで有名! お刺身や寿司などお好みで味わってみてくださいね。

龍飛埼灯台
住所:青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩龍浜
電話:0174-31-1228(外ヶ浜町役場 産業観光課)
交通アクセス:JR津軽線「三厩駅」から町営バスに乗車し「龍飛埼灯台」下車、徒歩すぐ
公式サイト:https://www.town.sotogahama.lg.jp/kanko/spot/minmaya.html

[参考]
世界遺産 北海道・北東北の縄文遺跡群
Amazing AOMORI/青森県観光情報サイト
外ヶ浜町
青森市
北海道伊達市
北海道
函館市

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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