なぜ宮崎牛が日本一おいしいと言われるの?
宮崎牛が日本一おいしいというのは、もちろん自称でも主観でもありません。5年に一度開催される、和牛のオリンピックとも言われる全国和牛能力共進会で史上初4大会連続、最高賞の「内閣総理大臣賞」を受賞しているんです。つまり5年×4回で実質20年間連続日本一! 2022年大会では過去最多となる41道府県から438頭もの出場があったそうなので、これは和牛界における注目すべき躍進といえます!
全米No.1シェフとしての呼び声も高いウルフギャング・パック氏も、「宮崎牛が一番お気に入りの日本産牛肉だ」と絶賛。氏の運営するレストランでも宮崎牛が提供されているそうです。
- 【1】宮崎生まれ宮崎育ちの黒毛和牛
- 【2】肉質等級が4等級または5等級である
- 【3】県内種雄牛、もしくは家畜改良のため指定された種雄牛を父にもつもの
最高の宮崎牛を食べるならここ!
仕事柄ブランド牛を食べる機会も多い筆者ですが、実は宮崎牛を食したことはおろか、宮崎県に行ったこともありません。今回は、日本一と言われる宮崎牛のおいしさが他のブランド牛とどう違うのか? そのおいしさを生み出す秘密が何なのか? 胸とお腹の音を高鳴らせながら、宮崎の地に降りたちました。
見上げれば青い空と宮崎県の木フェニックス。2月でも南国を感じる風が心地よく、開放的な気分になります。この宮崎の温暖な気候もまた、宮崎牛のおいしさの秘密のひとつだということを、このときはまだ知りませんでした。
宮崎牛といえば「ミヤチク」!地元でも有名な人気店
まず訪れたのは、宮崎牛専門レストラン「ミヤチク」。「宮崎牛といえばミヤチク」と地元の人も口をそろえる名店です。県内外に7店舗、東京に姉妹店が1店舗あります。
宮崎空港から車or電車で約20分強の橘通りミヤチクAPASでいただきます!
ミヤチクでは、最高級の宮崎牛を鉄板焼、焼肉、しゃぶしゃぶ、すきやきで楽しめますが、今回は鉄板焼きの「厳選ロースステーキランチ(100g) 6,000円(税込)」を味わいたいと思います。
目の前にたたずむ宮崎牛の芸術的なサシと赤身の美しさにうっとり。ロースは霜降りの入ったジューシーさと甘みが特徴です。
お皿に添えられた個体番号を牛の個体識別情報検索サービスで検索すると、牛の出生年月日、雄雌の別、母体の個体識別番号、種別(品種)、飼養場所の履歴を照会できるようになっています。今日いただくのは、2020年に日南市で出生した宮崎牛でした。
コースには、ご飯・スープ・焼野菜・サラダバー・ソフトドリンク 1杯・パンのデザートが付いています。かぶの豆腐が入っているスープは、優しい味わい。かぶの葉・生ハム・アーモンド・エディブルフラワーなどがトッピングされ、見た目も華やか。添えられている食パンのみみは、チーズの風味が香ばしくておかわりしたいほどでした。
メインのステーキは、目の前の鉄板で焼いてくれます。普段からステーキを焼くのって奥が深くて難しい、と思っている筆者。最高峰のお肉を最高の焼き加減でいただけるのは至福です。牛脂を使って、側面まで丁寧に焼かれていきます。
おお! ブランデーに火をつけて香りづけをするフランベは、想像以上の炎の勢いにびっくり! 大迫力の演出に、期待もマックス高まってきました!
美しい……最高の状態に焼き上げられた宮崎牛のステーキは、お皿ではなく食パンの上へ。こうすることでお肉がお皿で冷やされないようにするのだそう。すごい発想です!
まずは塩とわさびでいただいてみます。これは……!!! 今までに食べたことのない食感です。やわらかく、口の中でとろけていくのですが、お肉の食感と香りもしっかりある。宮崎牛の最大の特徴は脂の質が格段に違い、旨味成分の「オレイン酸」が多く含まれていることだといいますが、たしかにあっさり食べられて臭みもクセも全くなく、脂っこくも重くもない。
霜降りの多い肉は高級でも一口で胃もたれしがちな筆者なのですが、このお肉は何切れ食べてもそんな気配すら感じさせず、正直驚きました。
どういえば伝わるでしょうか。これまで食べたことのある霜降り和牛は、お肉を食べているというより脂を食べているという印象で、脂は口の中でフワッととけるけれど重く感じることが多かったのです。
しかし今回いただいた宮崎牛は、ちゃんとお肉を食べている、という食感と旨味があり、それでいて食べ疲れせず軽やか。脂はスッととけて体にしみこんでいく感じです。日南の海水を窯で炊き上げた塩とわさびでいただくと、無限に食べ続けていられそうなほどでした。
焼き野菜は、もやしと自家製ベーコン。サラダバーは、レタス・キャベツ・ミニトマト・海藻・枝豆・クリスタル海藻麺(コリコリしておいしい!)・コーン・マンゴープリン・つぼ漬けなどがありました。
お腹がいっぱいになってきたところでさらに驚いたのが、デザート。なんと、お皿代わりにしていた食パンを鉄板の上に並べて焼き始めたのです。
鉄板でこんがりと焼いた食パンに、粉糖・メープル・ココアパウダー・チョコレートソース・シナモンをトッピング。お肉の味がしないのかしら? と心配になったのですが、そもそもお肉にまったく臭みがなく脂も良質なので、杞憂でした。
この食パンを使ったデザートはミヤチク創業時から愛される名物なのだそう。何だかお母さんの手作りおやつのようで、心もほっこりしました。
もっとリーズナブルに宮崎牛を楽しみたい人には、「(数量限定)鉄皿サイコロステーキ(120g)1,200円(税込)」「(数量限定)鉄皿ハンバーグ定食(和風/デミソース)1,200円(税込)」などのランチメニューもありますよ。
https://rest.miyachiku.jp
焼肉・鉄板焼ステーキ 橘通りミヤチクAPAS
宮崎県宮崎市橘通西3-10-36(株)西村ビル地下1階
0985-31-8929
営業時間:
ランチ:11:30~14:30(L.O.14:00)
ディナー:17:00~22:00(L.O.21:30)
不定休
110席
駐車場なし:近隣の提携駐車場にて割引あり
クレジットカード利用可(VISA、MasterCard、UC、AMERICAN EXPRESS、DC、DINERS、JCB、NC、UFJ、銀聯)
著名人やアスリートにも愛される焼肉・ホルモン「幸加園」
夜はこれまた有名人気店の焼肉「幸加園(こうかえん)本店」へ。扱うお肉はすべてA4~A5ランクの最高級品。歩いて20分くらいのところに、「幸加園 橘通店」もあります。
店内は昔ながらの雰囲気の座敷席で、壁一面著名人やアスリートのサインでいっぱい! 多くの人に愛されている名店なのだとわかります。
- No.1 シャトーブリアン(塩・タレ)1人前4,500円/ヒレ 1人前3,800円、ハーフ2,280円
- No.2 塩タン 1人前2,400円、ハーフ1,440円
- No.3 厚切り特上ロース(塩)150g 4,400円/200g 5,870円
- No.4 ハラミ(塩・タレ)1人前 2,100円、ハーフ 1,260円
- No.5 特上カルビ(タレ)1人前 2,850円、ハーフ 1,710円
メニューの人気ランキング1位は肉の王様シャトーブリアン! ですが、今日は塩タン、ホルモン、上カルビ、上ロース、サガリ、焼きしゃぶ、ミノ、ハツ、キムチ盛合わせ、サンチュがセットになった「スペシャルコース6,800円(税込)」をいただきます。コース料理は2人以上から注文OK。
まず運ばれてきたのは塩タンと上ロース。肉厚でまったく臭みのない塩タンにレモンをキュッと絞っていただくと最高! きめ細やかなサシが入った上ロースも、上質な脂のおかげで、ペロッといただけます。脂身と赤身の絶妙なバランスは、焼肉でいただくときも際立ちました。
プリッとしたホルモンやコリコリ食感のハツ、歯応えのあるミノといった内蔵系の部位は、ことさらその鮮度のよさを感じます。
焼きしゃぶは、サッと炙るくらいでいただくと、良質な脂が肉の甘みや旨味と渾然一体となり、宮崎牛ならではのおいしさを存分に味わえました。
よく、霜降り和牛に「口の中でとけてなくなるような食感」という表現をすると思います。宮崎牛もよく「とろける食感」「口の中でとける」と表現されます。たしかにそれは正しいのですが、真を突いていないように感じるのです。とける部分だけを強調すると、むしろ他の霜降り和牛と同じだと誤解されてしまう。
宮崎牛のおいしさは、ずば抜けて上質な脂のおかげで、雑味ゼロの状態で肉の旨味を味わえること、かつ胃疲れしないこと、脂と赤身のバランスが絶妙であることだと、筆者は思いました。
宮崎県宮崎市江平西1-1-1
営業時間:月~日、祝日、祝前日: 16:00~23:00
(料理L.O. 22:30 ドリンクL.O. 22:30)
0985-26-0458
定休日 年末年始のみ
クレジットカード利用可(VISA、マスター、アメックス、DINERS、JCB)
65席
https://koukaen.owst.jp
宮崎牛のおいしさの秘密を肥育農家に訊く
宮崎牛のおいしさをたっぷりと堪能した後、肥育農家を訪ねてみました。「え?なになに?誰だれ?」と一斉にこちらを見つめる牛さんたちが可愛すぎます。宮崎県庁の職員の方曰く、「こちらの農家さんの牛たちの性格は本当に穏やかです」とのこと。ストレスのない穏やかな環境がおいしい肉質につながっているのでしょうか?
蓑毛敏雄(みのも としお)さん
肥育農家の長男として生まれ、現在はその隣で繁殖農家として子牛の育成を担当している、蓑毛さんに宮崎牛のおいしさの秘密についてお聞きしてみました。
「肉質の決め手は、何といっても血統」と蓑毛さん。宮崎方式と呼ばれる、徹底的な系統管理による優秀な種雄牛を交配することが大事なのだといいます。
その上で、よい牛に育てあげるには、しっかりと餌を食べられる胃腸を作る必要があるのだとか。子牛の首に巻かれている布は、実はネックウォーマー。風邪をひいてしまうと食欲が落ちて発育に影響が出るので、冷えないよう注意しているのだそうです。そう考えると、牛たちの健やかな成長に、宮崎の温暖な気候も活かされているんですね。
子牛は生後10ヶ月ほどで子牛セリ市に出荷され、宮崎県生まれの子牛の約32.9%は県外に出荷されます。全国的に有名な近江牛や松阪牛、佐賀牛などの一部は、実は宮崎県内で誕生した肉牛なんです。
残りの67.1%は、県内の肥育農家で約30ヶ月齢になるまで肥育され、出荷されます。
蓑毛さん「実は農業大学卒業後、最初は実家ではない農場で働いていました。そこでは、4人のスタッフで5000頭の牛を世話していたんです。とても1頭1頭覚えることはできません。現在は、蓑毛家全体で140頭の親牛を管理しています」
よく見ると、個体識別番号などが書かれた黄色いタグに、手書きで名前が書かれています。この子はかずみちゃん。1頭1頭大切に育てられていることが伝わってきました。牛舎はとても清潔で、牛たちは人懐っこく穏やかです。
肥育期間は、牛の体調に合わせて麦やとうもろこしや大豆、稲わら、乾牧草などを食べさせる必要があります。1頭1頭の体調をちゃんと見守って管理していること、牛たちが病気をせずいつも食欲旺盛でいられること、それらが保たれているからこそ、満たされて健やかに育つのでしょう。
穏やかに満たされた健康な命をおいしくいただくのだから、自分自身も幸せで健康でいなければいけないな、と決意を新たにした宮崎の旅なのでした。
[All Photos by Aya Yamaguchi]