東京・有明の「東京臨海広域防災公園」へ
ゆりかもめ「有明」駅から徒歩2分、東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅より徒歩4分にある、「東京臨海広域防災公園」。1995年の阪神淡路大震災を受けて開園した、首都圏の大規模災害に備えるための「基幹的広域防災拠点」です。
今回の目的は、その中に位置する「そなエリア東京」。
被災地や避難所の様子を再現した実物大のジオラマ展示による防災体験学習ツアー「東京直下72hTOUR」を中心とした、防災体験学習施設になっています!
「東京直下72h TOUR」を体験!
地震発生後72時間を生き延びる術を学ぶ
地震発生後、国や自治体などの支援体制が十分に整うまでの目安は3日間=72時間と言われています。
その間は災害初期の混乱の中、人命救助が最優先。つまり無事だった人は、自力で生き残らなければなりません!
そのような理由から、「東京直下72h TOUR」は、地震発生後の72時間を生き抜く知恵を学べる内容になっているんです。
ゲートの横、インフォメーションで参加受付。1時間に1回程度のスケジュールで開催され、ツアーの所要時間は30分ほどです。
なお荷物がある際には、コイン返却式の無料コインロッカーも利用可能ですよ。
ツアー参加時には、1人1台のタブレット端末を貸し出し。こちらのタブレットを使って、防災クイズや案内を受けながら進行していきます。
出題されるクイズ・シナリオの種類は子ども用と大人用に加え、「外出先」「自分の住むまち」の2パターンから選ぶことができますよ。
大地震発生!実際に揺れるエレベーターからスタート
スタッフの方の説明を受けて、ツアー開始。駅ビル10階のシネマフロアからの帰り道、マグニチュード7.3、最大震度7の首都直下地震が発生するというシナリオです。
エレベーター(型のゲート)へ乗り込むと、揺れとともに照明が暗転! こちらのエレベーター、実際に床が激しく振動して、臨場感がすごいんです。筆者は1人で乗っていることもあり、かなりの恐怖を感じました……!
かろうじて1階に着いたエレベーターから降り、駅ビル内の従業員通路へ。避難誘導灯の明かりを頼りに、停電し、暗く入り組んだ建物内を脱出していきます。
リアルに再現された震災直後の街へ
ビルから出ると、大地震発生直後の街が! ジオラマでリアルに再現されています。
等身大で広がる被災地の街は、まさに迫力満点。家屋は崩れビルは傾き、ところどころから火の手が。
電柱が倒れて垂れ下がる電線や、頭上でグラグラと揺れる室外機、倒れて漏電している自販機など、普段どこにでもある街中の光景が、地震では凶器になり得ることを実感。
画面は撮影NGでお見せできないのですが、実際にテレビ局で再現・制作されているニュース映像も街頭ビジョンに映し出され、緊迫した様子でアナウンサーが被害状況を伝えています!
タブレットの誘導に従って、防災クイズに答えつつフロアを巡っていきます。
さらに特定の場所でタブレットをかざすと、各所に対応したARの演出も。倒壊しかけたビルの下では、頭上から窓ガラスが降ってきました……!
ジオラマのリアリティはもちろんですが、音で演出される臨場感もかなりのもの。
余震が繰り返し発生するなか、緊急地震速報のアラートや、サイレンやヘリの音、地響きやガラスの飛び散る音などが連動。緊迫感ある没入体験になっていました。
リアルな情報で避難先について知る
被災した街中を脱出し、避難場所・避難所を再現したフロアへ。こちらでは実物の防災用品などの展示とともに、避難先での対応を学ぶことができます。
先ほどと同じくタブレットをかざすと、映像と共に解説をしてもらえますよ。災害伝言ダイヤル「171」や簡易トイレなど、いざという時必ず必要になる情報ばかりです。
特に印象的なのが、東日本大震災における、福島県いわき市の避難所事例を再現したコーナー。
こちらでは避難所内を再現した展示に加えて、「避難所でペットは受け入れてもらえる?」「携帯電話のバッテリーが切れたら連絡手段は?」「避難所が整備されるまでの時間はどうする?」といった、被災者の方々が実際に直面した困難もコメントで紹介。自分に置き換えて考えるいい機会となりました。
立ち入ったり触れたりはできませんが、避難生活の苦労まで再現された展示を通して、TVで見ただけでは伝わらない実情を伺い知ることができます。
「東京直下72h TOUR」はここで終了し、全5問のクイズのスコアが発表になります。
筆者の結果は100点! 無事72時間を生き延びることができたようです。スタッフの方にお伺いしたところ、クイズのバリエーションは全体で100問以上あるのでは、とのことでした!
それぞれのための備えを!「防災学習ゾーン」
「東京直下72h TOUR」を終えた後は、津波到達の高度・速度を体感できる階段を通り上階へ。
2階「防災学習ゾーン」では、どんな人でも持ちたい知識である「きほんのそなえ」と、個人の特徴に合わせた「一人ひとりのそなえ」の2エリアを通して、災害への備えをわかりやすく解説してくれます。
この備えが足りない、と感じた内容はQRコードを読み込むことで、メモとして持ち帰りが可能ですよ。
展示フロアが段ボールや鉄パイプ、ポリタンクなどで作られていることにも注目です。先述したQRコードを読み込める解説ボードは、小学校時代を思い出す「防災頭巾」でできていますね!
そしてこちらは「一人ひとりのそなえ」のエリア。それぞれの人が持つ特徴ごとに、災害への備えを提案してくれます。
例えば「花粉症である」とのボードの裏には、
このように対応したアドバイスが。
食物アレルギーや障害のある方、性的マイノリティの方やヴィーガンの方など、多様なニーズまで網羅されていて驚きでした!
災害時だからこそ、備えや相互理解によって、助け合っていきたいものです。
体験学習施設以外のスポットも
シン・ゴジラでも登場「緊急災害現地対策本部」見学
ここまでは「体験型防災学習施設」として紹介してきましたが、東京臨海広域防災公園の元々の役割は、災害対策の拠点。
関東近郊で大規模災害が発生したときには、現地における被災情報のとりまとめや災害応急対策を行う「緊急災害現地対策本部」が置かれます。
そのとき実際に利用されるオペレーションルームの様子も、ガラス窓越しに見学できるんです! 残念ながら撮影はNG。
約960㎡という大きな部屋には、正面に巨大なモニターが設置されており、無人であっても緊張感が漂っていました。
実は映画「シン・ゴジラ」では、こちらのオペレーションルームを使った撮影が行われたそうですよ。劇中では首相官邸地下との設定だったので、ここから脱出したヘリコプターはゴジラに撃墜されていましたね……。
公園としての施設も充実
建物のエントランス部分には、防災グッズや防災食を販売している「そなえカフェ」も併設。
休憩所としての利用はもちろん、防災の見直しができたら、足りないものを購入していくのもおすすめです。
また、防災の拠点ではありますが、平時は国営・都立の公園として開放されているのも特徴。
建物の屋上は庭園となっており自由に出入りできるほか、ヘリポート周辺の広々とした芝生や噴水などもきれいに整備されているので、散策しても楽しいですよ!
さらには手ぶらで楽しめるBBQガーデンも併設されていて、シーズン中には連日賑わいを見せているそうです。
ここでしかできない体験で防災を学ぶ「そなエリア東京」
2023年度は年間25万人が訪れたそなエリア東京。筆者は平日の朝にお邪魔しましたが、校外学習の小中学生に加え、家族連れの方もいらっしゃいました。
実は、地震についての知識や防災学習のあり方について学ぶため、海外の政治家が来園することもあるのだそう。
また設立以来、展示内容のアップデートも続いています。
実際、避難所の最新事例などに対応するべく、2024年の6月25日~7月28日にも改修工事が行われます(その間も「東京直下72h TOUR」への参加は可能です)。
加えて、昨今はインターネットを通して、当事者の生の声に基づいた避難や被災の情報も届くようになりました。
「乾パンと水を備蓄しましょう」というレベルの話から、「一人ひとりのそなえ」の展示のような、具体的で現実に即した防災対策に。地震が相次ぐ日本だからこそ、被災の経験の積み重ねで進化を続けているんですね。
迫力ある展示で震災を体験できた「そなエリア東京」。備えと知識が、自分や大切な人を守ることに直結すると感じました。
なかなかイメージしづらい大地震。ここでしかできないリアルな体験を通した防災の見直しに、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
所在地:東京都江東区有明3-8-35
電話番号:03-3529-2180
利用時間:園地の開園時間:6:00〜20:00/防災体験学習施設の利用時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
料金:無料
公式サイト:https://www.tokyorinkai-koen.jp/
[Photos by ぶんめい]