提灯の光が照らす蔵造りの街並み
昼間の取材を終えて、小江戸川越の中心地「川越一番街」へ。普段は多くの人でにぎわう川越一番街ですが、この時間に通るのは地元の方の車や、近隣の高校生のみです。
通りの奥までずらりと連なる、蔵造りの街並みは壮観。建物をゆっくり眺められるのは夜ならではで、ちょっとお得な気分でした。
軒先に並んで道を照らしているのは、2024年の7月27日・28日に行われた「川越百万灯夏祭り」に合わせて飾られた色とりどりの提灯(現在は撤去されています)。
江戸時代後期の1850年からの歴史を持つというお祭りは、川越の夏の風物詩。筆者訪問時はお祭り開催の2週間ほど前でしたが、赤・白・緑・青・黄色の提灯の光が縦に連なり華やかでした。
「時の鐘」が見守る鐘つき通り
川越一番街の中心を東側に入ると、川越のシンボル「時の鐘」がそびえる「鐘つき通り」へ。通りに続く石畳が小雨で濡れて、街頭の光を反射しています。
川越一番街より少し落ち着いた雰囲気の通りでは、スターバックスも景観に配慮した和のデザインに。昼間は時の鐘を背景にしたフォトスポットにもなっています。
“小江戸”とは言うものの、実は今に残る川越の町並みができたのは明治時代。
1893(明治26)年の大火事によって中心街のほとんどが焼失してしまったことを受け、火事に強い建築を目指して、現存する蔵造りの商家が立ち並ぶようになったのだそう。
時の鐘も、江戸時代初期に建てられてから度々の火事で焼失し、その都度代替わり。現存するものは、先述した明治の大火事後に再建した4代目です。
大正・昭和レトロの建物も
2階建ての商家が並ぶ川越一番街の中で、ひときわ目立つ背の高い純洋風の建築がライトアップされていました。白いタイルに緑の屋根が、大正モダンな魅力をたたえます。
こちらは、埼玉県で初の銀行・旧第八十五国立銀行の本店として、1918(大正7)年に竣工した建物です。
その後は旧埼玉銀行、現在の埼玉りそな銀行川越支店として使用されてきましたが、1996年には、これまた埼玉県で初めてとなる国指定の有形文化財に登録。
銀行としての役目を2020年で終え、2024年の5月からは、複合施設「りそなコエドテラス」としてオープンしています。
ほかにも多くのレトロ建築が残る川越。川越一番街の端にも、2軒が連なります。
奥に見えるのは「旧山吉デパート」。1936(昭和11)年に竣工した3階建てのビルにはステンドグラスが輝き、かつての百貨店のにぎわいを伝えます。現在は歯科医院として使われているのだそうです。
また、手前に見えるのは「田中家住宅」。こちらは1915(大正4)年の竣工ですが、実は外観だけ洋風の、擬洋風建築なのだとか。和洋折衷の意匠は、蔵造りで培った左官技術で挑んだ、当時の職人さんの意欲作とも伝わります。
今回は夜遅くで訪問しませんでしたが、一番街からもほど近くの「大正浪漫夢通り」では、このような大正~昭和初期に誕生したレトロモダンの建物が多く現存します。蔵造りとはまた違った歴史の魅力を感じられておすすめですよ。
夜ならではの川越の魅力
人気観光地の一味違った魅力を見せてくれる、川越の夜景。
さすがに食べ歩き系のお店は18時前後で閉店してしまいますが、蔵造りの建物を利用して営業しているレストランやカフェには、夜も営業しているお店があります。店舗情報や営業時間は、川越一番街商店街のホームページからも確認できますよ。
また、川越のパワースポットとして知られる川越氷川神社では、9月8日まで「縁むすび風鈴」が開催中。
こちらも夜の時間には、約1,500個の風鈴や境内に流れる小川がライトアップされ、美麗な光景が広がっています。あわせてチェックしてみてくださいね。
所在地:埼玉県川越市幸町
[Photos by ぶんめい]
※店舗営業については最新情報をご確認ください。