東京タワーと通天閣の生みの親は同じ !?「塔博士」と呼ばれた男と「タワー6兄弟」とは?

Posted by: 土田洋祐

掲載日: Aug 19th, 2024

日本各地にはその地域のランドマークとなる建造物がたくさんあります。中でも東京タワーや通天閣は観光スポットとしても人気ですが、実は生みの親は同じ人物と知っていましたか? 今回はそれらの生みの親である「内藤多仲(ないとうたちゅう)」と、彼が手掛けた「タワー6兄弟」について紹介します。

東京タワー トップ画像

「塔博士」と呼ばれた男・内藤多仲

東京タワー
1886(明治19)年、現在の山梨県中巨摩郡榊村(現南アルプス市)にて誕生した「内藤多仲(ないとうたちゅう)」は、日本を代表する電波塔や展望塔の構造設計を手掛けたことから”塔博士”の異名を持つ人物。

内藤が手掛けたのは、東京タワー、通天閣、名古屋テレビ塔、別府タワー、さっぽろテレビ塔、博多ポートタワーの6基。これらは「タワー6兄弟」と呼ばれ、各地のランドマークとしての役割のほか、人気の観光スポットとして多くの人々に愛されています。

また内藤は塔だけでなく、3代目歌舞伎座や日本興業銀行といった著名な建造物の構造設計士として携わっており、卓越した耐震構造理論によって建造されたそれらは、関東大震災を経ても「ほぼ無傷の状態だった」とされています。

彼の構造理論に対しての造詣の深さは、後世の建築界にも大きな影響を与えており、「耐震構造の父」としても呼ばれているのだとか。

日本各地にそびえ立つ「タワー6兄弟」

高度経済成長期にテレビが登場したことにより、国内ではテレビ電波を発信する電波塔の建設が急がれました。しかし、背の高い電波塔を建てるとなると、耐震性をはじめとした様々な課題が生じます。

そこで白羽の矢が立ったのが塔博士こと内藤多仲で、彼の優れた耐震構造理論は電波塔の建設にうってつけだったわけです。ここからは、内藤が設計を手掛けた電波塔をはじめとした「タワー6兄弟」について紹介します!

1954年開業 長男 名古屋テレビ塔(180m)│愛知県

名古屋テレビ塔
愛知県名古屋市中央区にそびえ立つ名古屋テレビ塔は、タワー6兄弟で一番最初に完成した長男的存在。日本初の集約電波塔として建造され、全国のタワーで初となる国の登録有形文化財や、日本夜景遺産などに認定されています。

2020年には全体改修工事後を経てリニューアルオープンし、翌年(2021)には「中部電力 MIRAI TOWER」と名称を改めました。

1956年開業 次男 2代目通天閣(108m)│大阪府

通天閣
©Gengorou

言わずと知れた大阪のランドマーク「通天閣」。現在の通天閣は実は2代目で、その設計を手掛けたのが内藤多仲です。

通天閣は電波塔ではなく展望塔で、展望台からは大阪の景色を一望できるほか、足裏を撫でるとご利益があるとされる「ビリケンさん」が鎮座しています。ちなみに現役のビリケンさんは3代目。

1957年開業 三男 別府タワー(100m)│大分県

別府タワー
©Lesley Photograph

1957(昭和37)年に完成した電波塔「別府タワー」は、同年の「別府温泉観光産業大博覧会」の目玉として構想され、およそ2億8,000万円の資金を投じて建造されました。

現在ではタワーを希望のカラーでライトアップできるサービスが好評! 桃色や紅白色、はたまたクリスマスツリーのようなカラーリングにもできるのだとか。

1957年開業 四男 さっぽろテレビ塔(147m)│北海道

さっぽろテレビ塔
©Takashi Images

北海道札幌市中央区大通公園内にある「さっぽろテレビ塔」。印象的なタワーの中腹にある電光時計ですが、実は全国のタワーの中でも設置されているのはさっぽろテレビ塔だけ!

なんでも市民の「時計が付いていたら便利」という意見から取り付けられたそう。電光時計は幅約12m、高さ約7mで、日本一の大きさなのだとか。雪が降る中でも健気に明るく人々に時間を知らせてくれます。

1958年開業 五男 東京タワー(333m)│東京都

東京タワー 夕景
2012(平成24)年に東京スカイツリーが完成するまで国内で最も高いタワー建造物だった、ご存知の「東京タワー」。

使用されている鉄鋼は4,000トンほど、建造当時では例にないほどの規模だったそうで、延べ約22万人の工事関係者関係が携わったとのこと。ちなみに工期は驚きの1年半! 恐るべし!

1964年開業 六男 博多ポートタワー(100m)│福岡県

博多ポートタワー
©yyama

タワー6兄弟の末っ子「博多ポートタワー」は、博多港の一角にあります。地上約70m付近にある無線局では、港に往来する船舶の動きを伝令する役割があり、博多港の安全を守る重要な役目を担っています。

隣接する「博多ベイサイドミュージアム」には、タワーはもちろん博多港の歴史を学ぶことができ、ぜひ立ち寄ってほしいスポットです。

高くそびえるタワーに思いを馳せて

いかがでしたか? 今回は国内各地にある「タワー6兄弟」と、それらの生みの親である「内藤多仲」について紹介しました。何気ない建造物も歴史を知ると、見え方が変わってくるものですよね。

旅行の際にはもちろん、見慣れている人も、それぞれのタワーを見上げるときには、少しだけ思いを馳せてみるのもいいかもしれません。

[Photo by Shutterstock]

[参考]
山梨近代人物館 第13回展示 紹介人物・内藤多仲
中部電力 MIRAI TOWER 公式サイト
通天閣 [公式サイト]
【公式】別府タワー
東京タワー
博多ポートタワー・博多港ベイサイドミュージアム – 福岡市

PROFILE

土田洋祐

Yosuke Tsuchida ライター

「好奇心が示す場所へ」をモットーに国内に旅するライター。各地で出会った人々とお酒を飲み交わす時間がなによりも喜び。好きな場所は寒い地域と端っこ。

【キャッチフレーズ】
日本文化を愛するビール好き

「好奇心が示す場所へ」をモットーに国内に旅するライター。各地で出会った人々とお酒を飲み交わす時間がなによりも喜び。好きな場所は寒い地域と端っこ。

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