町に残る唯一のブティック「タケダ」
兵庫県姫路市は、世界遺産・姫路城を有する人気の観光地。なかでも、レトロな街並みが残る網干(あぼし)区に唯一のブティック「タケダ」があります。1956年、竹田宗之さんが婦人服店として創業。息子の誠さんが28歳で店を継ぎ、1988年に現在の店舗を構えました。
店舗は広くないながらも、洗練されたディスプレイとえりすぐりのアイテムが目を引きます。
「うちは至って普通のブティックです」。にこやかに語る誠さんですが、その言葉の裏にはタケダを長年支える3つの柱がありました。
「長く着られる」商品セレクト
オープン当初から「嫁入り前に買って、長く安心して着られる服を売ろう」という思いを大切にしてきたタケダ。現在もそのポリシーは変わらず、商品のセレクトで重視しているのは“長く着られること”です。「安いけれどすぐに駄目になる服は置かない。安心して着てもらえるものを」という誠さんの信念通り、素材や仕立てに一切妥協がありません。
例えば、冬物は暖かさだけでなく、軽さや肌触りも重視。「素材は触ってしっかり見て選ぶべき」と語る誠さんの妻・照美さんの言葉通り、どの商品も細部まで配慮された品質を誇ります。
「娘が買った服を見て、お父さんが“ええ娘に育ったな”と思えるような服が好き」という誠さんの言葉にも表れているように、タケダでは今年着たら来年着られない服は置かない。それが長年愛されてきた理由の一つです。
自信を届ける「タケダ流」の接客
誠さんが大切にしているのは、服を売るだけでなく、お客さんに自信を届けることです。「服は気持ちよく買ってもらうのが大事。『ええやん』と言われて、自分もええなと思えたら、それが自信になる」という考えのもと、一人ひとりに丁寧に寄り添います。
自信を持って着られる服は、値段以上の価値を生む。嘘がない丁寧な接客で、お客さんに自信を持たせるのがタケダ流なのです。
地域に根差した信頼関係
タケダに足を運ぶのは常連客がほとんど。なかには、手作りのおかずを差し入れてくれる人もいるほどの親密な関係ですが、誠さんはお客さん同士のプライバシーを徹底的に守ることを心がけています。
「ここで聞いた話は絶対に漏らさない。ここにいる間は安心してもらえるようにしている」と語る誠さんの言葉には、服の品質以上に“安心できる場所”としての役割を果たしている自覚が表れていました。
「商品セレクト」「自信を届ける接客」「信頼関係」これら3つの柱が、長年愛され続けている理由だと取材を通してわかりました。
愛され続ける理由は「安心感」
町の人々がタケダに感じる「安心感」は、長年積み重ねてきた信頼と、地域に根差した丁寧な商売によるものです。「前に買った服、まだ着られるけど、また欲しいわって言われたら最高」と語る誠さん。その一言には、店主としての喜びと責任感が詰まっていました。
「普通」を貫くこと。それは誠さんにとって、品質の高さを守り、丁寧な接客を続け、プライバシーを大切にすることを意味します。誰もが「当たり前」と思う日常を、誰にも真似できないレベルで実現し続けてきたタケダ。だからこそ、68年もの間、地元の人々に愛されているのです。
兵庫県姫路市網干区新在家1371-12
営業時間:10:00〜18:00
電話番号:079-274-0701
定休日:水曜日
[All photos by Kei]