奄美群島でハブがいる有人島は5つだけ
ハブは、クサリヘビ科マムシ属に分類される毒蛇です。
南国諸島にはハブがいるというイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実はそうではなく、鹿児島県の有人島では、トカラ列島の小宝島と宝島、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島といった南西諸島に生息しており、喜界島や沖永良部島、与論島にはいません。沖縄県では沖縄本島と慶良間諸島などの一部の周辺離島のみに生息しています。
なぜ、ハブは南西諸島のみに生息し、散らばった島に生きているのでしょうか。実は長い年月が関係しています。
ハブは、約1,000万年前、琉球列島が中国大陸と地続きだった時代から生息する生物で、500〜200万年前に琉球列島が大陸から切り離されて独自の進化をとげたとされています。
その後、150万年ほど前の氷河期に伴い日本列島に北上したハブは絶滅。また、地殻変動による海面上昇により、奄美大島(加計呂麻島、請島、与路島を含む)や徳之島以外の島々の陸が沈んでしまったことにより、限定的な地域のみに生息するようになった、という説が有力だそうです。
1匹3,000円で取引されるハブ
かねてから奄美大島や徳之島などの各自治体では「ハブ買取事業」として、ハブを生け捕りにすると報酬金が貰えるという制度があり、1匹につき3,000円で取引されています(記事公開時の情報)。
そのため、現地のタクシー運転手や農家の方々はハブを捕獲するための「ハブ取り棒」を携帯していることも。筆者が子どものころ、土手で昼寝をしているハブがいたことを近所のおじさんに伝えると、勇んでハブ取り棒を持って駆けつけてくれた、という思い出もあります。
当時は一匹あたり5,000円で取引されていましたが、各自治体の財政状況により、年々と価格が引き下げられて現在の報酬金となっているようです。
危険なだけじゃない!奄美の文化に密接に関わっているハブ
古くから恐れられてきた一方で、人々の生活の一部としてのハブの姿もあります。例えば「ハブ酒」。ハブが1匹入ったまま売られているビッグサイズのハブ酒はかなりインパクトがあります。お土産店で見かけた人もいるのではないでしょうか。
また、食材としても用いられることもあり、奄美地方の郷土料理を収集・編纂した書籍では「ハブのからあげ」や「ハブのスープ」といった調理法が紹介されています。すっぽんや鶏肉の食感や味に似ているらしく、薬用としての効用が大きいとのことです。
ハブに縁があるのは食文化だけに留まらず、奄美大島の伝統工芸品である「大島紬」にも。龍郷町にルーツがある「龍郷柄」という柄は、金色のハブがソテツの葉を伝って移動していた姿から着想を得たとされており、ハブの背中にある特徴的な模様がモチーフとして用いられています。
ちなみに、数は少ないですが、黄色のハブは実際に生息しており、地元の人たちの間では通称「キンハブ(金ハブ)」と呼ばれています。なんとも縁起のいい名前ですね。奄美大島や徳之島を訪れる際には、ハブと島の人々の暮らしに思いをはせると、一味違った旅になるかもしれません。
[Photo by PIXTA]
[参考]
『奄美で40年ハブを研究してきました』(株式会社新潮社)
鹿児島県
https://www.pref.kagoshima.jp/aq04/chiiki/oshima/kurashi/habu-joho.html
本場奄美大島紬協同組合
https://amamioshimatsumugi.jp/cloth/
『シマヌジュウリ』(道の島社)