連日のようにテレビや新聞で報道されているシリア情勢。悲しいニュースや映像を見聞きするたびに、本当に胸が痛くなってしまいます。
筆者は中東湾岸に住んでいたことがあり、情勢が安定していた2010年末にシリアへ一人旅したことがあります。世界最古の街のひとつとも言われる首都ダマスカスは、アラブの美しい情緒にあふれ、歴史を感じさせる活気ある街並みがありました。
今回は、平和で穏やかな時間が流れていたダマスカスについてお伝えしたいと思います。
ダマスカス空港着陸直前。雨が少なく乾燥しているため、砂が舞っている濁った中東特有の空。
新市街中心部。ダマスカスは約1万年前から人が住み続けている、世界最古の都市のひとつと言われています。奥に見えるのは旧約聖書にも登場するカシオン山。
多くの商店が軒を連ねる新市街。活気ある下町風情が漂っていました。
中東のファーストフード、「シュワルマ」を売るお店。
街で一番人気のローストチキン屋。お客さんがひっきりなしに入っています。
店頭のオーブンで豪快に焼かれるローストチキン。香ばしくジューシーなお肉が絶品でした。
シリアの街では、マクドナルドやコカ・コーラなど「米資本的なモノ」が全く見当たりません。日頃見慣れた看板やモノがないと、独特の不思議な雰囲気を感じます。
米国からの経済制裁の影響も関係しているのか、古い車が現役でたくさん走っていました。
最近ではめったにお目にかかれなくなった、四角いフォルムのクラシックカーも街にあふれています。
こちらは世界遺産にも登録されている旧市街。ローマ時代の神殿の列柱も残っており、古代都市の面影も感じられます。
時が止まったかのようなノスタルジックなお店が立ち並ぶ商店街。
シリア伝統の雑貨などが売られていたお土産屋さん。
旧市街は迷路のような細い路地が入り組んでいます。ゆったりとした、平和で穏やかな時間が流れていました。
ダマスカス最大の市場「スーク・ハミディーエ」。約600mものアーケード街に、食料品から日用品までお店がひしめきます。地元のお客さんが多くシリアの日常感がありました。
スークにある大人気のアイスクリーム屋さん。店員のお兄さんにピスタチオをたっぷりトッピングしてもらいました。ピスタチオはシリアの特産品の一つのようです。
旧市街のシンボルでもある「ウマイヤド・モスク」。現存する世界最古のモスクであります。観光客も専用のベールで体を隠さなければならないほど、荘厳な雰囲気。お祈りの時間を告げるアザーンと、夕暮れのライトアップが心にも響く美しさ。
街灯のやさしい光に映える、しっとりした旧市街の夜。危険な雰囲気はありません。シリアの人達にとって女性の一人旅はとても珍しいのか、道を尋ねたら目的地の近くまで一緒に来てくれたり、一人でお茶を飲んでいたら気遣って話しかけてもらえたことが多々ありました(やましさは全くないです)。行く先々で忘れられない親切を受け、シリアの人々の温かさを感じました。
宿泊は旧市街の小さなホテル。太陽の光が差し込む中庭が素敵でした。
シリア特産のオリーブやラブネと呼ばれる濃厚ヨーグルトなど、シリアスタイルの朝食。
市内から空港へ向かうバスの中。首都の空港バスにしてはとても古い。旅の疲れが出たのか一人なのに爆睡してしまいました。空港到着後慌てて起きるも何も盗まれておらず、それどころか隣に座っていたおじいちゃんが優しい目でビスケットをくれました。治安のよさや人の温かさ、優しさを感じたシリア一人旅でした。
あまり報道されていないよう思えますが、騒乱前のシリアには確かに「平和」や「温かさ」があり、現在の惨事は想像さえできませんでした。アイスクリーム屋のお兄さんや、バスでビスケットをくれたおじいちゃん。シリアで出会った親切な人々が無事で元気に暮らしているのか、ニュースを見る度に気になって仕方がありません。
一日も早くシリアに平和が訪れ、安全で穏やかな国に戻ってくれることを願うばかりです。
[All photos by Nao]