そこで今回は、ソロモン諸島在住の筆者が、個性豊かすぎるソロモン諸島の良いところ、悪いところについて語ります。「やっぱヨーロッパって素敵だよね! う~ん、東南アジアも捨てがたいかな!」。そんな、南太平洋はノーマークの皆様もお付き合いいただければ幸いです。リレー形式で、さまざまな国を巡っていきます!
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コミュニティ意識
ソロモン人はコミュニティへの帰属意識が強く、物理的にも精神的にも完全な集団生活を営んでいます。
コミュニティの単位は、もちろん家族があり、親戚があり、そして同郷か、更に同言語を話すか、などがあります。(ソロモン諸島には少数言語が100以上あると言われています!)
このような国では、外国人は完全に「余所者」。いくらこちらが現地人と同じ食事をしても、現地人のようにサンダルとヨレヨレのTシャツを着て出歩いても、部外者として扱われるよりほかはないのです。
これは良いことでもあり悪いことでもあります。
良いことは「おもてなし」を受けられること。
ホテルのプールを、宿泊客でもないのに使わせてもらえたり、こちらが周りに恐縮してしまうくらい思い切り順番を飛ばさせてくれたり、店員さんの愛想が急に良くなったりします。
日本へ観光に行った外国人がよく「自分を王様のように扱ってくれる」と感想を述べますが、ソロモン諸島でも同じような現象が起きるのは、「内」と「外」の線引きの仕方が日本のそれと似ているからかもしれません。
そして悪いことは「冷やかし」も受けること。例えばこちらが歩いていると、車の中から「ハローベイビー!」などと青年が叫ぶだけ叫んで走り去ります。どうしろと(笑)。
たまにその声の主がどこにいるのかすぐには分からない時もあり、周りを注意深く見回してみたら、道路反対側の工事現場の、2階の足場にいる人だったということもありました(「ベイビー」と呼ばれそれを自分だと思って見回すくせがついた自分自身にも強烈な違和感です)。
外国人に興味津々、だけど不器用なのでとりあえず何か叫んで反応を見てみる。動物園のパンダ展示場のガラスを叩く子供のようで、これにはとにかく辟易するのです。
自然
ソロモン諸島には手付かずの自然が沢山残っています。特に首都ホニアラから飛行機で1時間で行ける「ギゾ島」は、埠頭から下を見ると熱帯魚が泳いでいるのがはっきりと見えるほどに海が綺麗(ホニアラも、車で20分も走ればカクレクマノミに会えるほど綺麗ですよ)。
そして農作物は地産地消。先進国では自然志向のライフスタイルが「オーガニック」や「マクロビ」、「ファーマーズマーケット」などという言葉でオシャレに再定義されていますが、ソロモン諸島では今も昔もずっと自然志向一択。近隣で採れた旬のものを食べるのが当たり前のことなのです。
新鮮なココナッツウォーターは、工場でパックされたものとは比較にならないほどナチュラルで美味しいですよ!!
マーケットで買ったココナッツウォーター
(C)Toki Tamagawa
ただし。豊かな自然は時には頭痛の種にもなります。
雨が降ると夜には体長5cmを超える巨大カタツムリがそこらじゅうに大量発生、歩を進めるごとに「クシャッ」と殻を踏みつけることは不可避。翌朝はおびただしい数の巨大カタツムリの死骸に、これでもかというほど沢山の蝿がたかります。
雨で濡れた土に日光が容赦なく照りつけ、むせ返るように湿っぽくなった空気。そこに腐臭を充満させながら土に返っていく巨大カタツムリと、ご馳走の山に大騒ぎの蝿・・・雨の後の朝は、いつもの道を息を止め半泣き、いや全泣きで通過しなければなりません。
また、家の中に招かれざる小さな客が現れる事も日常茶飯事。筆者はソロモン諸島に来て、フンの形状からその落とし主の特定ができるようになりました(詳しい解説は自粛します)。
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娯楽がない
「ちょっと時間あまっちゃった、立ち読みでもしよっかな」「あ、このイベント今週までなんだ、早く行かなきゃ」「あの新作映画、今日彼と見に行くんだ!」ソロモン諸島でこういう事は起きません。
もちろん、全く娯楽がないわけではないのです。ナイトクラブも数件ありますし、カジノもあります。
しかしそういった「酒! 賭け事!」というようなギラついた欲望のちらつかない、文化的な娯楽は壊滅的。
でも娯楽って、必ずしも何処かへ行って対価を払い、サービスを受けることではありませんよね?
ソロモン諸島には、「何もない」が、あるんです。
雨が降ればその雨の音をBGMに読書でもいいですし、風に揺れる椰子の葉の音を聞きながらヨガもできます。お昼寝でもいいです。
そして夜中にバルコニーに出て満天の星空を眺めたら、流れ星が見れるかもしれません。
なんとも贅沢ではありませんか。
いかがでしたでしょうか?
長所と短所は表裏一体、「ソロモン諸島はパラダイスです!」とは申し上げません。筆者は幾度となくホームシックになりました。
しかし、「パラダイスかもしれない」瞬間は間違いなく訪れます。この記事を読んで、南の島の小国に少しでも興味を持っていただけたら、在住者冥利に尽きるというものです。
[Photos by Toki Tamagawa & Shutterstock.com]