旅にはトラブルがつきものですが、何か起こったら自分自身で行動することも時には大切。今回は、旅行中にスーツケースを奪われながらも、最後まで諦めずに自身で奪回した筆者の体験記をご紹介したいと思います。
トランクにスーツケースを入れたまま、タクシーが発進
数年前オマーンに在住中、アブダビを旅した時のことですが、タクシーを降りた際にトランクにスーツケースが入ったまま運転手が去ってしまうという出来事がありました。
領収書を受け取るのを忘れていたので、連絡先がわからず途方にくれましたが、アブダビ中のタクシーを管轄してるセンターの電話番号を知ることができ連絡してみることに。
手がかりは、「乗り降りした時間・場所。支払った料金。運転手の国籍。タクシーの車種」だけでしたが、なんとか運転手を特定できて、センターから運転手に連絡してもらえることに。しかし運転手は「荷物なんて何もない。トランクは空だ」と一点張りとのこと。
こうなったら自分自身で直接話をするしかないと思い、運転手の名前と携帯番号を教えてもらうことに(規定では運転手の連絡先を教えることができないようですが、きちんと事情を説明し、特別に対応してもらいました)。
しかし運転手に連絡するも、同じく「何もない」と言われる始末。その上通話も切られ、携帯の電源も切られてしまいました。怒りが込み上げてきましたが、オマーンに戻るフライトの時間も迫っていたので泣く泣く帰国。
帰国後、オマーン人の友人ヤヒア君にこの一件を話したところ、彼自身も腹を立てて運転手に連絡してくれることになりました。ちなみに運転手はパキスタン人。ヤヒア君はパキスタンの使用言語であるウルドゥー語を少し話せるので、もう少し問い詰めてみてくれるとのこと。
ヤヒア君が電話で「日本人のスーツケース盗んだろ。警察に突き出すぞ」と言ったところ、運転手もさすがに警察という言葉に反応したのか、一転して「わかった、返す。カギがかかってたから開けてはいない。だから警察には言わないでくれ。でもアブダビまで取りにきてくれ」とのこと。
盗んだ立場で取りに来てくれとは、なんとも自己中心で本当に頭にきましたが、警察云々よりもスーツケースを取り戻すのが第一。当時は格安LCCがなかったので、車で往復10時間かけてアブダビまで奪回の旅に出ることになったのです。
いざ、奪回の旅へ
週末の金曜日(オマーンの公的休日は木金)、朝8時半に出発。
運転手と込み入った話になったら心配だということで、ヤヒア君も来てくれることになりました。
アブダビへは片道約5時間
オマーンの首都マスカットからアブダビまでは車で片道5時間。マスカットの大動脈である高速をまっすぐ突っ走ります。
ドライブインでちょっと休憩。
陸路での国境越え
オマーンとUAEを隔てる国境に到着。検問所はオマーン側とUAE側にそれぞれあります。オマーン側はとてもフレンドリーな一方で、UAE側はかなり横柄な態度。
ちなみに個人差はあるものの湾岸諸国の中でもオマーンはのんびりとした温厚な性格の人が多く、UAEは傲慢な性格の人が多い印象(ちなみにクェート、サウジアラビア人も傲慢な人が多いと聞いたことがあります)。
色々質問されながらも無事国境を通過。陸路での国境越えは空路よりもやっぱり厳しい。これからアブダビ市内へと向かいます。
運転手との待ち合わせ場所はコンビニ
ヤヒア君から運転手に電話してもらい、こちらのコンビニで落ち合うことに。
しかしなかなか来ないので隣のバーガーキングで昼食。
それからしばらくして、外で待っていると・・・。運転手が現れました! 確かに見覚えのある顔です! 早速トランクを開けてもらうことに。
やっと奪回できたスーツケース
ありました! 我がスーツケース! 貴重品は入っていないけれど、何十カ国も旅してきた大事な相棒との再会はうれしい。ちなみに運転手は態度が一変して気弱に平謝り。
片道5時間車に乗ってきて疲れていたし、スーツケースは戻ったことだし、もはや警察に通報する気力が無くなっていたので、言いたい文句は山ほどあるものの運転手とは和解という結果に・・・。
これからまた5時間かけてオマーンに帰ります。
一難去ってまた一難
再びUAEとオマーンの国境に到着。しかし、ここでまた災難が! 入国審査官にスーツケースを開けるように言われたのです。
あろうことか、鍵はオマーンの自宅に忘れてきてしまっていたのでした・・・。
ヤヒア君に事情を説明してもらうも、「不審物かどうか確認する必要があるから開けろ」と言い続けられたので、色々考えた末、力ずくで開けてみることにしました。
車に積んであった工具でファスナー部分をカチャカチャ押してみたところ、なんとか壊さずに開封成功!(意外と簡単に空いてしまったことにも驚きですが・・・)
スーツケースには衣類や化粧品、薬ぐらいしか入っていませんでしたが、かなり入念に調べられました。中でも「正露丸」が特に怪しいように思われ、別室まで持って行かれることに。どうやらアラブ人にとっても、あの正露丸のニオイはかなりのインパクトのようです。
ともあれ一難去ってまた一難でしたが、なんとか国境は通過。
無事にオマーンの自宅へ到着
なんとか自宅に戻ってきました。ずっと座っていたとは言えど、10時間車中は疲れました・・・。とにかく色々と助けてくれたヤヒア君に大感謝です。
旅にはトラブルがつきものですが、「自分でなんとかすれば、なんとかなった」筆者の体験記。これから海外へ旅する方のご参考になれば幸いです。
[All photos by Nao]