どの業界にも、業界用語がありますよね? 業務上のやり取りを円滑にするためのジャーゴン(職業用語)であり、外部の人間に意味を知られたくない暗号といった側面もあります。
そこで今回は、タクシーに関する日本最大級のポータルサイト『タクシーサイト』に許可をもらい、同サイト掲載のタクシー業界用語辞典の中から、筆者が「これは面白い」と思った言葉を4つ、ピックアップしてみました。
同サイトの担当者によれば、同サイト掲載の業界用語は「タクシー乗務員や業界関係者から投稿されたものを掲載しております」との話。まさに正真正銘の生きた業界用語なのですね。特定の地域のみで使われていたり、内輪だけで使われていたりするケースもあるようですが、特にユニークな言葉を、筆者の感覚でチョイスしてみました。
タクシー業界用語その1:お化け
タクシーにお化けが乗車するという怪談話、よく聞きますよね。山中で乗車させた髪の長い女性の乗客がいつの間にか消えていて、シートだけがぬれていた・・・。怖い話によくあるパターンですが、実際のドライバーは「お化け」を乗車させると、大喜びなのだとか。
「え、話しのネタになるから?」、「特殊勤務手当がつくから?」などと不思議に感じてしまいますが、実は「お化け」とは業界用語で、「通常では誰も乗車しないような時間と場所にひょっこり現れる、極端な遠距離利用のお客」を意味するのだとか。「お化け」、万歳ですね。
タクシー業界用語その2:ネギ
ネギという言葉から何を連想しますか? タマネギを連想する人も居れば、長ネギを連想する人も居ると思います。筆者は長ネギ派ですが、「ネギ」は業界用語で「苦情」を意味するのだとか。どうして「ネギ」が苦情なのでしょうか。京都周辺に暮らしている人であれば、「まさか」と思うかもしれません。
ネギの産地として、ブランド化されている場所はどこでしょうか? 京都の九条ネギですね。京野菜である九条ネギは「くじょう」ネギで、「くじょう」は苦情とも読みますから、「ネギ」=苦情になったのだとか。
タクシー業界用語その3:大きな忘れ物
タクシーの車内に何か忘れ物をした経験はありますか? 筆者は携帯電話を忘れてしまった失敗談があります。ドライバーの方が保管してくれていて、後から無事に戻ってきましたが、携帯電話のような小さなアイテムは車内に置き忘れてしまいがちですよね。
しかしまれにタクシーの中で、「大きな忘れ物」が見つかる場合もあるそう。各社のタクシーに無線で「大きな忘れ物です」と連絡が入り、その後に「忘れ物」の特徴がドライバーの間で情報共有されるのだとか。
「大きな忘れ物」とは、大事件や事故を起こした指名手配中の犯人や逃走中の犯罪者を意味します。仮にタクシー乗車中に「大きな忘れ物です」と聞こえてきたら、下車後もちょっと身の安全に注意した方がいいかもしれませんね。近くに凶悪犯が潜んでいるかもしれません。
ちなみに似たような用語として、「小さな落とし物」もあるようです。携帯電話や鍵、財布などの忘れ物ではなく、この場合は「犯人が落とした凶器」を意味するみたいですね。
タクシーの業界用語その4:脳梗塞(のうこうそく)
「のうこうそく」という音の響きを聞いたとき、ほとんど全ての人が「脳梗塞」と頭の中で漢字変換をすると思います。別に医療従事者でなくても、脳梗塞は有名な病気ですよね。脳梗塞とは、脳の血管が詰まって、脳に新鮮な血液が流れ込まなくなってしまう病気です。
<脳細胞が壊れ、意識がなくなったり、半身まひや言語障害・認知症などの症状が現れます>(厚生労働省のホームページより引用)
とあるように、普通ではいられない大病。しかしタクシー業界では、仕事終わりに「今日、脳梗塞になっちゃったよ」などと、普通に会話するのだとか。ドライバーが使う「脳梗塞」とはどういう意味なのでしょうか。
もう一度、「脳梗塞」と漢字変換をした言葉を「のうこうそく」に戻してみましょう。その上で、「のう」と「こうそく」の間にスペースを置き、「のう」を「のー」に置き換えてから、それぞれ再変換してみてください。きっと「ノー」「高速」という言葉が候補に出てくるはず。
つまり、「ノー高速」→「No高速」。「高速道路を走るような利益の大きい仕事がなかった」という意味になるのだとか。その分だけ売り上げは上がらないはずですから、頭が痛くなる点では似ているかもしれませんが・・・。
以上、タクシー業界のユニークな業界用語を特選してみましたが、いかがでしたか? 旅先で、あるいは近所でタクシーに乗ったら、乗務員と業界用語について語り合ってみると、車内がより楽しくなるかもかもしれませんね。
[タクシー業界用語辞典 – タクシーサイト]
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