竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>

Posted by: 青山 沙羅

掲載日: Sep 19th, 2018

旅の目的は「たったひとつ」が潔いと思いませんか。今回の「たったひとつ」は、家とは火を囲む(台所)暮らしであることを改めて教えてくれる「他郷阿部家(たきょうあべけ)」。都会生活に味気なさを感じたら、塩むすびを食べに出かけてみるのも良いかもしれません。

竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>

旅の目的は「たったひとつ」で良い

旅の目的は「たったひとつ」が潔いと思いませんか。
あれもこれもと盛りだくさんは、大人には野暮というもの。情報が氾濫している現代だからこそ、余計なものは削ぎ落として、自分の「たったひとつ」を選び取るのが粋。旅の荷物はシンプルに、期待だけを詰めて。

私たちがまだ訪れたことのない、未知の場所や絶景。
笑顔で迎えてくれる、あたたかい地元のひと。
生産地ならではの、新鮮で美味しいもの。

珠玉のように散らばる日本各地の魅力を発信する「ONESTORY(ワンストーリー)」。「ONE=1ヵ所」を求めて日本を旅するメディアから、私たちの「たったひとつ」が見つかりそうです。

しっかりした梁が安眠を誘う宿

竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>
2階の「洋間」。立派な梁と端切れをモチーフにした客室。

島根県太田市にある築230年の武家屋敷を13年の歳月をかけて修復した、1日3組限定の宿。買い取った宿主が生活しながら繕うように修復し、家は徐々に命を吹きかえしました。

歴史を重ねた古民家独特の温もり。客室は3部屋あり、「洋間」は印象的なインテリアにもなっている梁(屋根を支える横木)が安定感を与え、心地よい眠りを誘います。1枚1枚異なった古ガラスをはめ込んだパッチワークの窓が素敵な「茶室」。庭を眺められ、冬には火鉢が備え付けられる「奥の間」。いずれも異なった魅力があります。

暮らしの道具の美しさに気づく

竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>

古民家の宿の中心は台所。人間古来の「火を囲む」暮らしが息づき、ごはんは竃(かまど)で炊かれます。しゃもじにおたま、すりこ木、鬼おろし、ほうろくにザル、かご、団扇。暮らしの道具の美しさに、改めて驚かされます。

棚田米のおむすびが堂々の主役

竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>

竃(かまど)で炊き上げたごはんは、塩むすびになります。棚田で収穫されたお米は、夕飯の主役。

皆で囲む食卓

竃(かまど)で炊いたおむすびがメインディッシュの宿|たったひとつを叶える旅<18>

前菜からデザートまで、13品前後の料理を供す。

ひとつひとつ手でむすばれたおむすびは、大勢でワイワイと食べるのが似合うもの。昨今の宿では個室で頂くお部屋食が人気ですが、この宿では皆で食卓を囲みます。

食卓を彩るのは、近くの山や畑で採れた野菜・山菜、新鮮な魚に出雲の神西湖特産のしじみ、県内生産者による肉類ほか。前菜5品に季節のサラダ、名物の胡麻豆腐に和風ピザ、のどぐろの煮つけや岩がき、天日で干して甘味を増したたまねぎのフライなどが並びます。そして、メインディッシュは棚田米のおむすび。宿主と宿泊客が食卓を共にし、美味しい料理をいただきながら、会話を楽しみます。食卓は本来、大勢で囲むものでしたね。


暮らす宿 他郷阿部家PV/gungendo

今回のたったひとつは、家とは火を囲む(台所)暮らしであることを改めて教えてくれる「他郷阿部家(たきょうあべけ)」。無機質なマンション生活に味気なさを感じたら、塩むすびを食べに出かけてみるのも良いかもしれません。私たちが旅へ向かわずにいられないのは、日常で求められない「たったひとつ」に出逢うためなのです。

PROFILE

青山 沙羅

sara-aoyama ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

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