日本には「風邪の時にはお粥」という暗黙の了解のような習慣がありますが、「ドイツではラスク」「中国では温めたコーラ」など、病気の時の常識は国によって様々。民間療法のみならず、ドクターが正式に施す治療法だって、土地によって全く異なるのです。世界の少し変わった治療法をご紹介させてください。
【カナダ】モントリオールのアートセラピー
まず最初にご紹介するのは、カナダのモントリオール市で始まった「アートセラピー」。モントリオールのフランコフォン医師会(Médecins francophones du Canada)に所属する医師たちと、カナダ最古の美術館「モントリオール美術館」(Musée des beaux-arts de Montréal)が合同で始める世界初の公式な治療法です。
2018年11月よりモントリオールでは、精神的な疾患や糖尿病、高血圧などの患者に対して、医師が「美術鑑賞」を治療の一環として処方することができるようになりました。そう処方された患者は、モントリオール美術館に年間50回も無料で入館できるようになるのです。
医師会の研究では、芸術との接触が人々の健康にプラスの影響を及ぼしていることを示唆する研究が増えているのだそう。その研究に感銘を受けたモントリオール美術館が、「博物館の美しくインスピレーションに満ちた空間で患者の気分を高め、幸福感を改善したい」と協力することになったのです。この治療法が効果を上げたら、「芸術は薬になる」という考え方が世界中に広がるかもしれませんね。
【ルーマニア】超巨大!元・塩鉱山のハロテラピー
東欧ルーマニアからは、廃鉱を利用した驚きの治療法です。ルーマニアにある「サリーナ・トゥルダ」(Salina Turda)という塩鉱山は、古代より岩塩の産地として知られていました。20世紀中に塩鉱山としての役目は終えているのですが、地中に残った巨大な穴と坑道が再利用され、現在は「地下の遊園地」として生まれ変わっているのです。
鍾乳洞を連想させるような空間と、遊園地というミスマッチが話題を呼び、毎年多くのルーマニア人や外国人が訪れています。
そんな「サリーナ・トゥルダ」は、実は「ハロテラピー」という代替医療法のための施設としても知られています。日本では耳慣れない「ハロセラピー」は、気管支喘息や慢性気管支炎などの呼吸器疾患の治療のために使われる手法のひとつ。天然の塩鉱山が無い日本では知られていない治療法ですが、天然の岩塩洞窟が多い東ヨーロッパやロシアでは、19世紀頃から研究が進められているのだとか。岩塩鉱山の労働者の中には風邪や呼吸器疾患、肺疾患がほとんどみられないことから、塩鉱山が自然に噴出するエアゾール(煙霧質)には抗菌性、抗炎症性があると考えられているのだそう。
「サリーナ・トゥルダ」鉱山内にはスパ&ウェルネスセンターも設置され、こちらも人気を博しています。効果のほどは未知数ですが、テーマパークで遊びながら症状が軽くなるなら、こんなに嬉しいことはありませんね。
【インド】アーユルヴェーダのヒル療法
インドやスリランカの伝統的医学であるアーユルヴェーダは、医学のみならず生命科学、哲学、インド占星術、錬金術など、人間に関する様々な要素を包括する総合学問。紀元前5世紀または6世紀ころには体系的にまとめ上げられたとも言われるアーユルヴェーダは、諸外国では代替医療とみなされています。けれど本国インドでは、アーユルヴェーダ医師の資格は国家資格であり、現代西洋医学と並ぶほどの存在なのです。
そんなアーユルヴェーダにも、驚きの治療法がありました。
それはなんと、大型動物の血を吸うことで知られる蛭(ヒル)を用いた治療。悪い血が体の特定の部分に停滞し瀉血が必要な患部にヒルをあてがい、悪い血を吸わせるという治療法なのだとか。何世紀も亘って継承されてきた治療法とはいえ、これはなかなか勇気のいる治療ですね。
世界の驚きの治療法、いかがでしたでしょうか。日本では日常生活で触れる機会のない治療法ばかりでしたね。けれどもし筆者が外国でこういった治療法のお世話になる機会があれば、「郷に入っては郷に従え」精神でぜひチャレンジしてみたいと思います。
※画像はすべてイメージです。
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[Montreal museum partners with doctors to ‘prescribe’ art]
[Montreal Museum]
[Salina Turda]
[HISTORY OF SALT THERAPY (HALOTHERAPY)]
[Fun and therapy in a Romanian salt mine, one of the oldest in the world]
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[What Is Leech Therapy?]