トルコを代表する観光地カッパドキア。一口に「カッパドキア」といっても、いくつもの村が点在しており、行く先々でこの世のものとは思えない風景に出会えます。
カッパドキア滞在3日目。図らずも、偶然知り合ったエジプト人男性と、城塞都市ウチヒサルに始まり、ギョレメ野外博物館、ローズバレーと、絶景のハシゴをすることになりました。
一人旅仲間を道連れに
筆者がトルコを訪れるのは、これが3度目。カッパドキアは8年ぶり2度目の訪問でした。今回はカッパドキアの中心・ギョレメに3泊し、2日目はギョレメ発の日帰りツアー(レッドツアー)に参加。
ツアーで一緒だった一人旅のエジプト人男性とたまたま話す機会があり、「明日はローカルバスでウチヒサルに行こうと思ってるんだ」と話したところ、3日目は成り行きでその男性と行動を共にすることに。
筆者は一人旅をする機会が多いですが、たまに現地ツアーに参加すると、同じ一人参加の旅人と仲良くなることがあります。複数人で参加している人が多いからこそ、一人旅同士には連帯感が生まれるんですよね。
そのエジプト人男性は、アメリカの大学院で学ぶ学生で、異なる環境でさまざまな経験をしているため、話していて面白い相手でした。
城塞村ウチヒサル
この日まず向かったのは、ギョレメからローカルバスで10分ほどのところにある、ウチヒサル。巨大な一枚岩でできた城塞がシンボルで、カッパドキアに行ったら必ず訪れたい村です。
ウチヒサルへのバスは、ギョレメのオトガル(バスターミナル)から出ているので、アクセスはとても簡単。ウチヒサルに到着したら、10分ほど歩いてウチヒサル城へと向かいます。
ギョレメから簡単に行けるにもかかわらず、ギョレメとは比べ物にならないほど静かなウチヒサル。ウチヒサル城の表面に見える無数の穴は、ハトの巣穴。現地では「ハトの家」と呼ばれ、カッパドキアの住民は、ハトの糞を集めブドウ畑の肥料にしていたのだといいます。
ウチヒサル城からの大パノラマ
ウチヒサル城の内部は、まるで洞窟。かつてここに岩を掘って造った部屋や教会が設けられ、「城」というよりも、「砦」という表現がぴったりです。
坂と階段を上って城の頂上にたどり着くと、眼下にはカッパドキアの大パノラマが広がります。にょきにょき奇岩が連なるダイナミックな風景はもちろんのこと、トルコの田舎らしい素朴な風景も魅力。果てしなく広がる雄大な大地に、圧倒されていまいます。
異世界に迷い込んだかのようなウチヒサル城周辺
ウチヒサル城からの眺望を楽しんだ後は、城の周辺を歩いてみようということに。というのも、「城の足元からの景色がすごいのでは?」と思ったからです。
ウチヒサル城の脇の小路を下っていくと、洞窟を利用したカフェなどがあり、城の壮大な風景が広がっていました。しかしこれはまだまだ序の口。散策路を歩きながら少しずつ移動するごとに、この世のものとは思えない、異世界に迷い込んだかのような光景が目に飛び込んでくるのです。
カッパドキアを訪れるのは初めてではないとはいえ、世界に類を見ないこの風景には、感嘆の声が止まりません。直線距離にするとわずか数百メートルの散策路ですが、角度が変わるたびに風景も変わり、シャッターが止まらなくなってしまいました。
キリスト教徒のフレスコ画が残るギョレメ野外博物館
ウチヒサル観光の後は、一旦ギョレメに戻り、昼食がてら休憩を取った後、徒歩でギョレメ野外博物館に向かいます。
カッパドキアを代表するこの博物館では、30以上の岩窟教会が保存されており、いくつかの教会では色鮮やかなフレスコ画を見ることができます。
カッパドキアはユネスコの世界遺産、しかも自然遺産と文化遺産の両方の価値を認められた複合遺産として登録されています。文化遺産としての価値を認められているのは、かつてこの地に隠れ住んだキリスト教徒が、こうした教会や地下都市を残しているからこそ。
目を疑うような奇岩の風景だけでも十分見ごたえがありますが、自らの信仰を守ろうとしたキリスト教徒が残した遺産を目の当たりにすると、彼らの強い想いと覚悟が伝わってくるような気がします。
残念ながら教会内部は写真撮影禁止。ぜひご自身の目で、フレスコ画の神秘的な美しさを確かめてみてください。
徒歩でローズバレーへ
ギョレメ野外博物館に行った後、まだ時間があったので、徒歩でローズバレーへと足を運んでみることに。
ローズバレーは、ギョレメとチャウシンの間に広がるピンク色の岩が連なる渓谷で、夕陽の名所として知られています。
自転車やバギーを借りるという選択肢もありながら、何となく徒歩で行くことにした筆者たち。歩くのはちょっと大変でしたが、思ったほどには遠くなく、ほかの旅行者がみんなバギーや車で来ているからこそ、たどり着いたときには達成感がありました。
ローズバレーの中へは入っていきませんでしたが、近くの高台から見下ろすローズバレーは忘れられない絶景。とりわけ、スポットライトのように陽の光を浴びている部分がなんともいえず美しかったです。
同行者の存在が選択肢を広げてくれた
一人で行動していたら、こうしてローズバレーに来ることはなかったでしょうし、ましてや歩いて来ることなんて考えられなかったでしょう。しかし、同行者ができたことで、行動の選択肢が増え、会話しながら歩いたからこそ、歩くことも苦になりませんでした。
この一日は、まさに同行者がいたからこそ生まれた一日。同じ場所を再び訪れても、二度と同じ旅はありません。そう考えると、旅の出会いはいつだって尊いなと思います。
実際のところ、旅先で偶然出会った相手と、再び会う機会はそうそうありません。相手が、アメリカやエジプトといった遠い異国に住んでいればなおさら。しかし、「カッパドキアで知り合ったあの人と過ごした一日は楽しかったな」という思い出は、ずっと心に残り続けることでしょう。
[All photos by Haruna]
Do not use images without permission