
もともとは麦わらをストローとして使っていた

ストローとはそもそも、なぜストローと言うのでしょうか。その理由は英単語のstrawの意味を振り返ると分かります。strawとは麦わら、わらで、中が空洞になった茎を使って、液体を飲んでいた時代が実際にありました。
その時代、麦わらの方をstraw、飲料用のストローをdrinking strawと区別していました。辞書には原義が「巻き散らかされているもの」とあります。巻き散らかされたもの→わら(straw)→飲食用のストロー(drinking straw)ときて、drinkingが脱落し、ストロー(straw)だけで飲料用のストロー(drinking straw)を指すようになった歴史があるのですね。
この背景を踏まえ、麦茶を買ってくれた顧客へのお礼として、2010年から麦の茎を使ったストローを作っていた企業があります。福井大麦倶楽部ですね。福井県は生産量、作付面積ともに六条大麦の日本一の産地。その大麦の本場で麦茶を販売する企業が、
<麦茶を飲んでいただくお客様に麦畑の風を感じてもらえたら>(公式ホームページより引用)
と思い、手作業で作り続けてきた話になります。今までも分けてほしい、売ってほしいという話があったそうですが、衛生面を確保したまま量産化は難しいと、商品化はしていなかったとか。
しかし、2018年ごろから海洋プラスチック問題が騒がれるようになると、にわかに注目度が高まります。その声に背中を押される形で、商品化へと踏み切ったみたいですね。
ストローはすべて手作業で作られる

県民福井という地元紙の報道を読むと、大麦ストローを作る際には茎の確保から始まって製品の完成に至るまで、特別なプロセスがあると分かります。まず、コンバインで大麦を刈り取ると茎が粉砕されてしまうため、特別な農機具で収穫。
その後に、天日干し、カットし、皮をむいて光沢のある茎の部分を露出させます。最後は20センチメートル前後に切りそろえて完成。全て手作業のため、10本セットで300円になります。
プラスチック製のストローの場合、1本1円ほどの販売価格になるため、大量に注文する店舗などの側からすると、価格の差はとても大きくなります。しかし、地球環境に優しく、地域の特産品を生かした商品のため、さまざまな方面で評価されているみたいですね。
草のような臭みは一切ない

早速、筆者も取り寄せてみました。開封してみると、まず驚きはストローの強度。コロコロと乾いた音を立てて転がり、手触りも軽く優しい印象がありました。
唇に触れる感じはプラスチック製と変わりません。口にくわえたときは何か草のような味があるのかと思っていましたが、無味無臭でした。
「本当のストローじゃない」
と、周りの人に見せるたびに似たようなリアクションが返ってきます。それでいて、思い切り力を入れれば指でちぎれます。
日常的な利用はもちろん、ストローに込められた特別なストーリーは、飲食店がお客と会話を持つ素敵なきっかけになるはず。コストは高くつきますが、顧客満足度を高め、顧客のリピーター化をはかる際のきっかけとしては最高のはずです。さまざまな立場から、大いに応援したい試みだと感じました。
[All photos by Masayoshi Sakamoto]

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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。
https://hokuroku.media/
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