元一風堂NYのラーメンマスターがブルックリンで「世界のどこにもないラーメン」を作った【ニューヨーク】

Posted by: Kasumi Abe

掲載日: Mar 6th, 2020

空前のラーメンブームが続いているニューヨーク。このブームの金字塔を打ち立てたのは、2008年に当地に進出した一風堂です。一風堂NYはラーメンのみならず、飲みながら小皿料理やラーメンを楽しむという「ラーメンダイニング」という新ジャンルを確立しました。20年間、第一線でラーメン界をリードしてきたラーメンマスターが、2020年自身のラーメン屋をオープンしました。

© Kasumi Abe
エージング(熟成)豚骨を使用した、Chef Special Iron-Men(16ドル)

一風堂で20年、NY店で10年

© Kasumi Abe
鐘ヶ江文浩シェフ

「今度『ニューヨークスタイル』のラーメン屋をオープンします」

長年ニューヨークのラーメンシーンをリードしてきた、一風堂NYの鐘ヶ江文浩シェフが教えてくれました。数ヵ月前、道を歩いていてばったり再会した時のエピソードです。

ニューヨークのラーメンブームは、鐘ヶ江さん抜きには語れません。一風堂に1999年に入社し、ニューヨーク第1号店を開くために2007年に渡米。以来ラーメンマスター(調理長)として、ニューヨーカーに豚骨味をはじめとするさまざまなスタイルのラーメンを提供してきました。

「自分の店で自分のラーメン」を作りたいと、入社20年の節目だった2019年に退職し、満を辞して2020年2月27日、ブルックリンに唐獅子牡丹(以下、牡丹)をオープンしました。

ドライエージ(熟成)豚骨を使ったラーメン

© Kasumi Abe
レンガ壁がおしゃれな店内

お店は、テーブルとカウンターで18席ほどでこぢんまりとしています。インテリアはニューヨークらしく、古いレンガ壁がおしゃれで、いい意味でラーメン屋のイメージを覆してくれます。夏場はバックヤードも開放されるそうですよ。

現在、3種類のラーメンが提供されています。そのどれもがユニーク!

まずは、ドライエージの豚骨、チキン、オックステールから作られた「Chef Special Iron-Men」(16ドル、写真上)、チキン、オイスター、レモンから作られた「ティアモ」(14ドル)、バーカウンターでしか提供しないスパイシー味の「Captain Brooklyn」(15ドル)と、どれもがニューヨークはおろか日本でも聞いたことがないものです。味はまったく想像がつきません。

ニューヨークの熟成ステーキからインスパイアされてできあがったというChef Special Iron-Menについて、話を聞いてみました。

「16ヵ月熟成させた豚のゲン骨(熟成骨)から取ったダシです。熟成したものは旨味成分がたっぷり含まれブロスに深みを出してくれるため、うちのラーメンは100%無化調です」

鐘ヶ江さんは話を続けます。「熟成させた豚骨から作られたラーメンなんて、世界でここだけでしょう。豚骨味でも塩味でも醤油味でもないですし、日本に存在するどのラーメンのジャンルにも属さない独自のラーメンです。私は『ニューヨークスタイル』と呼んでいます」。

早速試食しました。まず独特の香りが食欲をそそります。スープを口に含むと、熟成の独特の香りが鼻腔から抜けていきます。これまでの人生で決して食べたことがない、複雑なコンビネーションで実現した味がします。鐘ヶ江さん自身が一風堂時代に開発した一風堂の細い卵麺とも見事に絡み合っています。

想像を絶する新メニューはまだまだ続く

サプライズはまだまだ続きます。3月からは、なんとエスプレッソマシーンを使った味噌ラーメンも作る予定とか。(まったく想像がつきません!)

これまでの20年間で鐘ヶ江さんが作ったラーメンはスープが600種類以上、麺は3000種類以上だそうで、牡丹で作られる味は彼のこれまでの集大成とも言えるものでしょう。

そしてここのラーメンはいわゆるラーメン、ではなく熟練のラーメン職人が作り上げた新しい食べ物、素晴らしい「創作物」や「芸術」とも例えられるものです。日本では食べられないこの「NYスタイル」、旅の途中に試してみてはいかがでしょうか?

© Kasumi Abe

唐獅子牡丹(からじしぼたん)
住所: 255 Smith Street., Brooklyn, NY 11231, U.S.A.
営業時間は季節によって変わりやすいので、ウェブサイトで確認のこと。
HP: www.karazishibotan.com

[All photos by Kasumi Abe]
All images and text are copyrighted.

PROFILE

Kasumi Abe

a.kasumi ライター・編集者

雑誌、ウェブ、ラジオを通して、グルメから社会問題まで、幅広くアメリカ&NY情報を発信中。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ』がある。日本の出版社勤務を経て、NYに移住したのは2002年のこと。アメリカ(出版社時代)でも街ネタ取材でNY中を駆け回った後、14年に独立。物書きとしては、今では信じられないがメジャーミュージシャンのインタビュー含む音楽評論が原点。

雑誌、ウェブ、ラジオを通して、グルメから社会問題まで、幅広くアメリカ&NY情報を発信中。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ』がある。日本の出版社勤務を経て、NYに移住したのは2002年のこと。アメリカ(出版社時代)でも街ネタ取材でNY中を駆け回った後、14年に独立。物書きとしては、今では信じられないがメジャーミュージシャンのインタビュー含む音楽評論が原点。

SHARE

  • Facebook