
シルクエンペラーが建てた地域住民の厚生施設

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大正から昭和初期、日本における輸出総額の約4割が絹製品だったころ、シルクエンペラーと称された片倉財閥の2代・片倉 兼太郎(かねたろう)氏によって創建されたのが「片倉館」。竣工は1928(昭和3)年。今から90年以上も前のことですが、往時の姿をほぼそのまま残しているのです。当時の写真と見比べてもわかりますよね。

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諏訪湖に面したこちら側(現在は裏側)は、当時は水運が発達していたこともありメインエントランス的な役割も担い、屋根の下のレリーフには、パイナップルの装飾が。パイナップルは歓迎やおもてなしの意を表すらしいとのこと。

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しかも「片倉館」は、地域住民の厚生施設・社交場としての役割を果たすために造られたというから、シルクエンペラーの偉大さがわかります。
大理石に包まれ玉砂利が敷かれた深さ1.1mもある温泉

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洋館というとシンメトリー(左右対称)なデザインが多いのですが、「片倉館」はアシンメトリー(左右非対称)な独創的なデザイン。これは兼太郎が1922~1923(大正11~12)年にかけて北米・中南米・ヨーロッパなどへの視察旅行の際に出会った、当時ドイツ領のカルルスバードの厚生施設などの影響を受けているのだとか。

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ゴシックリバイバルやロマンティックリバイバル建築と呼ばれ、八角形の尖塔がファサードを彩ります。

(C)片倉館
真っ白な大理石からなる浴室には、彫刻やステンドグラスが施され、中世ヨーロッパのようなレトロロマンチックな雰囲気。中央に設けられた長方形の湯船は7.6m×4mもある大きなもの。一度に100人も入ることができる大きな風呂をイメージさせることから “千人風呂”と呼ばれているのだとか。さらに深さは1.1mもあり、大人の胸の高さほど。湯船の底には真っ黒な玉砂利が敷かれていることにもビックリ!

(C)片倉館
実はこれは、足裏を刺激して健康促進のためなのですが、昭和初期にこの発想があるとは感心するばかり。上諏訪温泉の湯が並々とあふれますが、ずっと立ち湯ではなくても大丈夫。湯船の縁には段差があり、側面を背もたれにゆったり座って入れるのでご安心を。
浴室の広さや造りは男女ともに同一。建物とは打って変わりシンメトリーなデザインで、ハトやヒツジのレリーフが施されているので探してみてください!
大ホールだった無料休憩室のバルコニーは必見

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浴室から赤絨毯が敷かれた螺旋階段を上がれば2階の無料休憩室へ。漆喰に列柱が連なる広々した休憩室は、元々大ホールだった場所。信州そばや味噌かつ丼などが味わえる食事処も併設され、ゴロリと横になれば、ポカポカした温泉の心地好さも手伝ってうたた寝しそうなほど。
※2階休憩室および食堂は休止中(2020年5月30日現在)

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見逃してはもったいないのが、休憩室の奥にある富士山を思わす!? 両袖階段を上ったところにあるバルコニー。諏訪湖を一望できるので、火照った身体を冷ますのにも最適。スクラッチタイルの壁面や煙突、装飾なども間近に見ることができ建築フリークなら必見です!

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浴室棟併設の会館棟もノスタルジック

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鉄筋コンクリート2階建ての浴室棟に加えて、国の重要文化財に指定されている木造2階建ての会館棟などもあり、温泉と合わせて見学することができます。入浴とセットは1050円(見学のみは400円)。さらに13時30分と15時30分のガイド付きの見学は600円(要予約)。
※新型コロナウイルス感染防止のため、ガイド付き見学は休止中。ガイドなし見学は6月1日(月)より再開

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漆喰と飴色に輝く木肌が美しい館内には、書院造りの和室や格天井・204畳の大広間などがあり、意匠も美しいノスタルジックな雰囲気に包まれています。

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片倉館
住所:長野県諏訪市湖岸通り4-1-9
電話番号:0266-52-0604
営業時間:10:00~20:00(受付は19:30まで)
定休日:第2・第4火曜
料金:750円(入浴料)
アクセス:JR「上諏訪駅」より徒歩8分
HP:
http://www.katakurakan.or.jp/
※2020年5月現在、新型コロナウイルス感染症対策のため営業時間やサービス体制などが通常と異なることがあります

TAI WATANABE ライター・エディター・ディレクター
10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
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