
秋田県能代市の「ふるくじ」
小学生に駄菓子屋への道案内をしてもらう
街の駄菓子屋の数は基本的には人口に比例している傾向があるんですが、この地域は住宅街が小さめで田畑の多い田園地帯。これは通りがかりでは見つけられないなと直感し、そのへんを歩いている小学生に聞いてみようというプランに。ところが、そもそも小学生も出歩いていない・・・どうしたものかなと車でウロウロしていると、向能代駅近くの中学校の体育館裏でキャッチボールをしている男子小学生が2人いました。
不審者と思われるのを承知で「このへんに駄菓子屋さんってある?」と聞くと、「あるある!連れてってあげる!」と、こちらの都合は完全無視で、いきなり走り出す少年たち。よく知らない人に親切に道案内までしてくれるその懐の深さにニヤけつつ、走ってついていきました。
中学校の近くに看板のない店が

看板のない駄菓子屋
東雲中学校の正門からダッシュで1分。暗がりに明かりの漏れる商店が1軒、看板はありません。子どもたちに聞くと店名は「ふるくじ」で、特徴のあるその名前は誰かが勝手につけた愛称で、昔からそう呼ばれているそうです。
店内に入ると角度をつけた陳列棚が正面にあり、売り物がとても見やすく取りやすく、棚の向こう側では店主がニコリと店内を見守ります。

商品の見やすい陳列棚
店主の女性は母親から商売を引き継いだという2代目で、福祉関係のお仕事との兼業とのこと。元々は昭和30年創業の商店で、その名残りで地元製造の醤油を今も販売し続けています。平日は17時45分からという駄菓子屋としてはかなり遅めの営業開始時間ですが、それでも小中高生問わず来店し、賑わっていました。店名の「ふるくじ」は、おそらく「街で一番古い、クジを売っているお店」が由来だそうです。
「長く続けてるから、2代目3代目のお客さんが来る。こないだは社会人になった子が、『初任給で大人買いしにきたよ!』といってたくさん買っていきました。駄菓子屋でたくさんと言ってもたかが知れてるけど、やっぱりうれしいね」
小学生からの「サインボール」は宝物

息子(左)と道案内してくれた小学生
たくさん飲食して居合わせた皆で楽しんでいましたが、案内してくれた小学生2人は帰る時間が来ました。別れ際になぜか、キャッチボールに使っていた軟式ボールを「あげる」というので、きっと大切な遊び道具だろうけど、ありがたく頂戴することに。二度と会わないかもしれない人に何かあげたくなるの、なんかわかるなあ・・・。

小学生からもらった「サインボール」
せっかくなので、「じゃあサイン書いてよ」とこちらから提案してマジックで名前を書いてもらいました。彼らの人生初のサインボールは、駄菓子屋いながきの宝物として大切に保管してあります。
この2人の少年のうちの1人はこの地域で一番大きな米農家の子で、お父さんも子どもの頃からこのお店に通っていたと話していました。実は彼が後にとんでもないミラクルを引き起こしてくれるんですが、話すと非常に長くなるのでそれはまたの機会に。地元の人も旅人も、子どもも大人も思春期の子も。分け隔てなく包み込んでくれる店主が営む「ふるくじ」は、周囲が真っ暗になっても人が出入りし続けていました。
それにしてもこの一帯の地名の由来、気になります。店主もご存じなかったので、今度市役所とかに電話して聞いてみましょう。

ふるくじ
住所:秋田県能代市向能代字トトメキ106-80
営業時間:平日17:45~19:00
土日15:00~19:00
不定休
[All photos by Atsushi Miyanaga]

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Atsushi Miyanaga
駄菓子屋いながき店主。1979年生まれ。経営していた学童保育を事業譲渡し、その後、息子と二人で日本一周駄菓子屋巡りの旅へ。超高齢化や後継者不足、利益率の低さなど、店主から語られる昔ながらの駄菓子屋の窮状を知り、なんとかこの文化を未来に繋げられないかと埼玉県加須市に駄菓子屋を開業。発達障害のシングルファザーですが、周囲の助けもありなんとか楽しく生活しています。
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