車や特急券を使わず、渓谷沿いの温泉へ
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「奥多摩の風 はとのす荘」(以下、「はとのす荘」)が位置するのは、JR青梅線の鳩ノ巣駅から徒歩5分という立地。筆者のように車を持たない層にも心強いです。鳩ノ巣駅までは、都心から約2時間。電車が目的地に近づくにつれ、窓の外の緑の分量が増えていき、だんだんと「あれ、ここまだ東京だよね?」という雰囲気に。東京にもこんなに緑があるんですね。
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平日の夕方──。その日、鳩ノ巣駅(無人駅!)で降りたのは筆者ともう一人、住民と思しきおじさんの2人だけ。思った以上にローカルですが、奥多摩駅まで2駅という立地は、奥多摩登山やハイキングの格好の拠点となりそう。
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目指す宿「はとのす荘」は、駅から徒歩5分以内のはず。グーグルマップを頼りにすすんでいくと、鳩ノ巣渓谷沿いに看板が見えてきました。
全客室、渓谷ビューのバルコニー付き!
(c)はとのす荘
「はとのす荘」の前身は、1960年に建てられた国民宿舎「鳩の巣荘」。老朽化のため1年以上をかけて建て替えられ、2015年5月、「奥多摩の風 はとのす荘」としてリニューアルオープンを果たしました。
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清潔感漂うエントランスに、期待感が高まります。館内に入ると、正面には渓谷の緑が迫ってきました。渓谷沿いという立地を存分にいかし、27室の客室はすべて渓谷ビューのバルコニー付き!部屋に入り、ベランダの扉を開いてみると、渓流の音が聞こえてきました。目には見えませんが(笑)、大量のマイナスイオンが放出されているのを肌で感じます。
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最初は少しうるさいくらいに感じた渓流の音が、だんだんと心地よくなってきました。温泉のある宿泊施設では、部屋のお風呂は利用しないことも多いのですが、「はとのす荘」の部屋風呂は温泉ではないものの、渓流を眺めながら入浴できる造りになっています。これは、入っておかないと(笑)。
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(c)はとのす荘
全27室のホテルですから、温泉の大浴場、露天風呂のスペースは決して広くありません。それでも、自家源泉「鳩ノ巣温泉」の内湯、小河内ダムの建設により沈んでしまった「鶴の湯温泉」の源泉が汲み上げた運び湯の露天風呂と、2種類のお湯が楽しめるのはうれしい限り。
地元食材を使った、イタリアンを堪能
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夕食は、青梅の契約農家の食材をはじめ、地元の野菜をふんだんに使った、イタリアンのフルコースです。「なぜここでイタリアン?」という素朴な疑問に、支配人の宮川和志さんは、「ほかの宿との差別化をはかりたかったんですよ」と答えてくれました。ひとつひとつ丁寧に作られた料理の質は高く、自家製のパンはいくらでも食べられそうなおいしさ。パン皿もきちんと温められていて、細やかな気配りを感じます。あまり食べられないという人には、少な目の量にも対応してくれます。
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もともと築浅のホテルですが、館内はとても清潔。丁寧に掃除していることがよくわかります。清潔な場所って、やっぱり気持ちいいですよね。宮川支配人によれば、スタッフは地元の人が中心とのこと。「本当に一生懸命、丁寧に掃除してくれています。みなさん、ここに来て良かったと思ってほしいという思いで仕事に取り組んでいます」。
30回以上、訪れているリピーターも
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館内、そしてサービスの随所に宿の「心配り」を感じます。たとえば、コロナ対策で、さまざまな場所に消毒液が置かれていました。夕食時の飲み物の代金は、伝票の確認のみで署名はなし。エレベーターボタン、ドアノブなども定期消毒しているとのこと。お風呂場のシャンプー、リンスには、日本語でわかりやすく、「シャンプー」「リンス」と明記されています。
フロントには、手書きの散策マップがありました。どのコースも魅力的に紹介されていて、旅心を刺激されました。奥多摩地区に咲く花の名前が、客室名になっているのも風流!それぞれの部屋には、その花のイラストが飾られています。
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「ダムができた当初はたくさんの人が訪れた場所ですが、今このあたりは奥多摩の中でもちょっとした穴場です(笑)。安心、安全、清潔をモットーに、この景色を楽しめる環境づくりをしていきたいですね」と、宮川支配人。清潔な施設、あたたかいおもてなし、そして圧倒的な景観にひかれ、すでに30回以上、足を運んでいるリピーターもいるそう!宿泊する時間が取れないときは、日帰りプランを利用するという選択肢もあります。
紅葉の季節の再訪を決意!
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翌朝は少し早起きして、渓谷沿いにお散歩へ。奥多摩随一の景観美を誇る鳩ノ巣渓谷を歩きました。宿からすぐの鳩ノ巣小橋の周辺は、紅葉の時期にはひときわ美しく色づくそうです。都心からも気軽に行ける距離だし、また季節をかえて訪れてみたくなりました。今回は時期を逸してしまいましたが、初夏にはホタルも見られるそうですよ。
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帰路、青梅駅から上り電車に乗り換えるとき、折り返しの青梅線を待つ、しっかりと歩く準備を整えた人たちを何人も目にしました。つい数十分前まで自分がいた場所へと向かう人たちを心底うらやましく思いながら、中央線快速に乗り込みます。特急券なしで行ける、こんな素敵な場所があることを知ったことに心の中でガッツポーズしながら。
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