そもそも「シュクメルリ」って何?
「シュクメルリ」とはコーカサス地方の旧ソ連構成国のひとつ、ジョージアの名物。鶏肉を牛乳やサワークリーム、大量のニンニクとともに煮込んだ料理です。
松屋はこのシュクメルリを“日本のごはん”に合うようにアレンジ。さらに卓上コンロで提供し、熱々の状態で食せるという工夫も施されました。2019年12月に一部店舗でテスト販売したところ好評を博し、「松屋世界紀行」というシリーズ第1弾として全国販売へと踏み切ったのです。
テスト販売時には駐日ジョージア臨時代理大使が来店し、その模様を大使自身のTwitterに掲載したことでも大きな話題に。
今回、シュクメルリ鍋が復刻されることになった背景には、2020年6月に開催された「第2回松屋復刻メニュー総選挙」があります。これは、過去15年間に販売されたメニュー9品から“復刻してほしいメニュー”をウェブ投票で決めるというもの。この選挙において堂々の1位に輝いたのが「シュクメルリ鍋定食」だったのです。
アルミ鍋付きだからお家でもグツグツ感が楽しめます
こんなご時世なのでテイクアウトを推している松屋。テイクアウト用シュクメルリには無料でアルミ鍋が供されます。店舗同様にお家でも熱々感を楽しめるとはうれしい限り。IH・ガスともに対応。
フタを外すとニンニクの濃厚な香りが一気に放たれます。これは食欲をそそられずにはいられない。
早速アルミ鍋に中身を流し込み、火にかけてみましょう。デフォの盛り付けを目指すべくチーズがトップになるように注意していたものの、不覚にも底に沈ませてしまったという・・・。
加熱時間の目安は2分。グツグツ煮え立ったぐらいが食べ頃なのだそう。
そして完成した“お家シュクメルリ鍋”。昨年食したときには気にとめなかったのですが、想像以上に鶏肉がゴロゴロ入っているのが印象的です。
ニンニクは香りのみならず旨みも強烈に主張。表面がパリッと焼かれた鶏肉はジューシーで、クリームソースとも絶妙に調和しています。
全体にやさしさを添えているのがさつまいも。ほんのりした甘みが、ガツンとしたニンニク感と見事にマリアージュ。さらにソースに溶けたチーズがコクをプラス。シチューでもあり、チーズフォンデュ的な風格もあります。隠し味に忍ばされた醤油がほのかな和テイストを醸しており、これがまたご飯にもよく合う。総選挙で1位を勝ち取ったのも納得の一品です。
なぜシュクメルリ鍋はヒットしたのか?真面目に考えてみた
日本とそう馴染みがあるとは言えない異国の郷土食を、日本人好みに合わせる松屋の力量には脱帽。久しぶりに食して、シュクメルリ鍋がなぜ、ここまで反響を呼んだのか無性に気になってしまい、真面目に考察してみることに。そこで以下の3つが浮上したのです。
“牛乳×ニンニク”という組み合わせが斬新だった
和洋中、ニンニクを使う料理は星の数ほどあれど、“牛乳×ニンニク”の組み合わせは意外と少ないように思えます。イタリアンのクリーム系パスタ、フレンチのクリームソースでもニンニクは風味づけ程度。そんな中、シュクメルリのど直球なニンニク感と濃厚クリームという斬新なタッグが日本人の胃袋を掴んだのではないでしょうか。
単体でも味わえるマイルド感、且つご飯にも合う仕立て
筆者はジョージアを旅したことがあるのですが、実は現地のシュクメルリのクリームソースは驚くほど塩辛い。とてもじゃないけど「スプーンですくって味わう」という雰囲気ではありません。ソースはパンにつけて食すというのがジョージア流のようでした。
ちなみにシュクメルリをオーダーするとこんなパンが付いてきます。フランスパンとナンを足して2で割ったような独特の食感です。ふんわりと吸収性がよくソースとの馴染みも良い。パンとの相性は抜群ながらも、鶏肉特有のクセと脂感が強すぎてご飯に合う味ではなかったです。
一方で、松屋のシュクメルリ鍋は単体でも食せるやさしい塩加減で、マイルドなテイスト。さらに隠し味に醤油を加えることで、ご飯にも合う仕立てに。これらのアレンジが威力を発揮したのではないかと思うのです。
じゃがいもではなく、“さつまいも”を選んだ
上の写真の通り、現地シュクメルリの具は鶏肉のみ。本場スタイルをそのまま踏襲すると、ひたすら鶏肉と格闘し続けなければならない。おそらくさつまいもは“箸休め要員”として選出されたのでしょう。
一方で、シュクメルリ鍋ファンの中でも賛否両論あるさつまいも。日本人的感覚からすると鶏肉やニンニク、クリームにはじゃがいものほうがしっくりしそうです。
が!私は勝手に思うのです。じゃがいもが入っていたら「クリームシチューにニンニクを大量に入れたヤツ」という印象になりかねないと。さつまいもという変化球によって、クリームシチューを連想させることはない、れっきとした他国の郷土料理という趣を濃くさせたのではないかと・・・。
まあ勝手にあれこれ書いてしまいましたが、とにかくシュクメルリ鍋は期待を裏切らないおいしさです。ですが悲しいかな、やはり期間限定。気になる人はお早めに!
[All photos by Nao]
Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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