台湾ラーメンの元祖「味仙 今池本店」
2021年5月現在、味仙は愛知県内に10店舗を構えますが、いわゆるチェーン展開ではなく、創業者とその兄妹によるのれん分けです。
「今池本店」は1960年(昭和35年)、台湾出身の郭明優さんが営業を開始した第1号店。台湾ラーメンが誕生したのは創業から約10年後、同氏がまかないとして故郷の担仔麺(タンツーメン)を辛口にアレンジしたのがはじまりなのだそう。次第に常連客のみに提供され、やがてレギュラーメニューに。ちなみに“台湾人が作ったから台湾ラーメンでいいや”という軽いノリで命名されたとのこと。
1階と2階を合わせて280席を超える大箱。広い店内、酔客の喧騒、厨房から届く中華鍋のリズミカルな音──。さながら台湾にある大型食堂のよう。
驚くべきは料理が出されるスピードの早さ。あれこれ注文してしまうと、卓上がたちまち一杯になってしまうので、台湾ラーメンに集中したい時はまず単品でオーダーするが吉です。
辛い、痛い!でも旨い!
台湾ラーメン(700円・税込)
丼を覆うのは、真っ赤なスープと唐辛子とニンニクで炒めた挽き肉、そして鮮やかに輝くニラ。どこを切り取っても辛そうなビジュアル・・・。早速スープから試してみましょう。
スープはレンゲ上では透明感ある風合いで、一見辛くなさそうな錯覚を覚えるものの、一口すすった途端に強烈な辛さに襲われます。辛いというよりむしろ痛い。これは、もはや全細胞が震撼するレベル!
が、辛さのすぐ後に挽き肉の濃厚な旨味、ニラとニンニクによる香味が追いかけてきて、さまざまな要素が渾然一体に。口に運ぶたびに辛みと旨味が交互に伝わり、もはやレンゲが止まりません。
やや固めに茹でられた中太のストレート麺は、適度なコシがあり心地良い歯応え。挽き肉や唐辛子との絡みも抜群で、丼内のすべての旨味が存分に感じられます。
前述の通り、味仙は郭兄妹によるのれん分けで展開されており、台湾ラーメンの味が店によって微妙に異なるのも特徴。2016年、東京・神田に誕生した「郭 政良 味仙」は、三男が経営する「日進竹の山店」の系統にあたります。筆者も東京店で食したことがあるのですが、そこでは白ネギの輪切りがたっぷりトッピングされ、ガツンとした香味のパンチが印象的でした。
一方で今池本店は白ネギがないため、唐辛子の辛みがど直球で主張してくるという様相。それぞれ食べ比べて味の違いを発見するのも一興かもしれません。
ビールが進む一品料理も多彩
台湾ラーメンの店というイメージが強い味仙ですが、本格的な中国・台湾料理も実に充実しています。「青菜炒め」(720円・税込)はいたってシンプルな味付けながら、これまでかというほどニンニクが効いており、ビールのアテに似合いすぎる一品。
常連客から人気が高いという「あさり炒め」(770円・税込)はあさりの出汁と唐辛子の辛みが見事なバランス。旨味が溶け出したスープは格別そのもの。
これぞ王道系!というべきルックスの「麻婆豆腐」(770円・税込)は豚肉のコクと豆板醤の深みが冴え、そのままでもおいしく、ご飯にかけたらもう箸が止まらないおいしさ。
しょうゆ薫る「チャーハン」(720円・税込)は、しっとりとパラパラの中間ほどの米感が絶妙です。玉子の甘みやチャーシューのコク、ネギの風味が見事に調和するさまは、まさに正しい町中華のチャーハンといった姿。
強烈な辛さの先に、やみつきになる旨味を湛えた台湾ラーメン。まずは本家を体感し、底知れぬ旨辛の魅力に溺れてみてはいかがでしょうか。
住所:愛知県名古屋市千種区今池1-12-10
電話番号:052-733-7670
営業時間:11:00~20:00(~5/31まで)
定休日:年中無休
URL:http://www.misen.ne.jp
[ALl photos by Nao]