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古代エジプトやメソポタミアにさかのぼる「ハープ」
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「ハープ」という楽器を知っていますか? 知人のカフェで開かれた演奏会で、2度ほど生演奏を聴いた経験が筆者はあります。
『日本大百科全書』(小学館)を読むと、高さは1.7m、弦の数が47本の大型ハープ(グランドハープ)をスタンダードなハープと呼ぶとわかりますが、筆者の見たハープはもう少し小さかったです。
確か奏者が「アイリッシュハープ」と言っていた気もします。ハープの上にあるレバーを盛んに上げ下げして、ペダルを踏んでいなかったので、たぶん記憶は正しいのだと思います。
音楽の美しさをストレートに理解させてくれるこの楽器は、世界のどこで主につくられていると思いますか? 『ブリタニカ国際大百科事典』を調べると、紀元前1200年ごろのラムセス3世の墓から大型のハープが出土したそう。同じく地中海沿岸ではいろいろなハープが見つかっているとの話です。
要するにハープの由来は、古代エジプトやメソポタミアにさかのぼると言われているそうです。少なくとも日本発祥の楽器ではなさそうですよね。
じつは日本がハープ製造「世界2位」に!
そんなヨーロピアンなイメージがあるハーブですが、実は2021年時点での製造数は、日本の企業が世界第2位を誇っています。世界のシェアは5社が分け合っているようですが、その日本企業の世界シェアは20%だとか。しかも東京でも大阪でもなく日本海側の福井県にその企業はあります。
もちろん生産台数は日本一。グランドハープの製作は年間約200台、アイリッシュハープは約600台に達するのだとか。福井県永平寺町にある「青山ハープ株式会社」がその世界的企業の名前です。
国産第1号のグランドハープもつくった
※写真はイメージです (C) Pavel L Photo and Video / Shutterstock.com
東京に暮らしている人が「青山」と聞けば地名を思い浮かべてしまいます。その地名の青山とはもちろん関係がありません。創業者・青山次太郎さんが、青山楽器製作所を1897年(明治30年)に福井で立ち上げたから「青山」なのです。
ヴァイオリン・オルガン・ピアノなどの修理を創業以前から手掛けていたと公式サイトに書かれていますが、修理ではなく製造に興味を持ち、前述の年に青山楽器製作所を福井市で創業したのです。事業を受け継いだ青山政雄さんが、アイリッシュハープを目にして魅了され、ハープ製作に乗り出します。
通常のグランドハープはペダルを踏んで演奏します。「分数楽器」といって、体の小さい子ども向けの楽器も存在しません。グランドハープは大きすぎるので、子どもの教育・習得が難しい楽器とされていたそうです。
しかし青山楽器製作所がつくるアイリッシュハープは、ペダルを踏まずに演奏できる上に、小型で正確な音程と音質を表現できるため、本格的なハープを導入する前の子どもたちの教育の場面で高い評価を得たといいます。
さらにグランドハープの製作にも乗り出すと、3代目にして現社長である青山憲三さんの時に、国産第1号のグランドハープが完成します。
1974年(昭和49年)に記念コンサートが開かれ、その後の製作によって世界的な評価を確かなものにし、1989年(昭和64年/平成元年)に社名を現在の青山ハープに変更、世界有数のメーカーとして現在も製作を続けているのです。
地元の子どもたちの郷土愛を育むきかっけに
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永平寺町へ1992年(平成4年)に本社を移転した際には専用ホールもつくって、以後は年に数回、奏者を招いてコンサートを開いているそう。
地元の福井新聞にも同社の地元への貢献がいろいろ報じられています。例えば、中学校の授業にハープ演奏を取り入れる地元の取り組みに賛同し、選択科目の1つとして生徒を受け入れ、同社の製品を貸し出しレッスン機会を提供していると2003年(平成15年)の記事に書かれています。
自分の生まれたまちにこれだけの世界的企業があるならば、地元の子どもたちの郷土愛を育むきかっけにも確かになりますよね。地方で活躍する世界的企業の存在が、それぞれの土地で生まれ育つ子どもたちの地元への思いを深めるきっかけになっている、そんな例をこの連載でもっと探して紹介したいなと思いました。
皆さんの土地には、どのような日本一&世界的企業がありますか? 何か意外な例があればTABIZINE編集部まで教えてくださいね。
[参考]
※ 『日本大百科全書』(小学館)
※ 『ブリタニカ国際大百科事典』(ブリタニカ・ジャパン)
※ おもしろ日本一 – 福井県観光連盟
※ 青山ホール – 青山ハープ
※ 沿革 – 青山ハープ
※ ノンペダルハープ – 青山ハープ東京オフィス
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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