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【日本一の〇〇連載】世界屈指の急流!滝のような「暴れ川」は富山県にあった

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Jan 12th, 2022.

日本の川は一般的に世界の川に比べて傾きが急で流れが速く、洪水を繰り返す「暴れ川」も少なくないと知られています。では、その川の中でも最も傾きがきつく「日本一の暴れ川」と人々に恐れられる川はどこなのかを調べてみました。

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image from Wikipedia


日本三大急流よりこう配がきつい富山の川

最上川の風景
最上川

「日本三大急流」「日本三大暴れ川」という言葉があるそうです。日本三大急流については、

  • 最上(もがみ)川・・・山形の南堺から、いくつも盆地を貫き日本海へと注ぐ
  • 富士川・・・南アルプス北部から駿河湾へ流れる
  • 球磨(くま)川・・・熊本県南部の人吉盆地を流れる

とされています。暴れ川については、

  • 利根川・・・関東平野を斜めに横切り銚子の犬吠埼へと通じる
  • 筑後川・・・九州の熊本・大分・福岡・佐賀の4県を流れる
  • 吉野川・・・石鎚山脈を源流に高知・徳島県を流れ紀伊水道に達する

と言われています。いずれも一級河川です。

<国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定されたものを「一級水系」と呼んでいます。一級水系に係る河川のうち河川法による管理を行う必要があり、国土交通大臣が指定(区間を限定)した河川が「一級河川」です>(国土交通省の公式サイトより引用)

しかし、同じく国の管理下にある一級河川の中には「日本一の暴れ川」との悪名を誇り、日本三大急流の川よりもこう配がきつい河川があります。

それが、富山県の南東部にある北ノ俣岳(標高2,661m)から富山湾(日本海の一部)までの56kmの距離を一気に流れ下る「常願寺(じょうがんじ)川」です。

けた違いのこう配を誇る富山の一級河川

富士山と橋

56kmといえば、東京駅周辺から神奈川の茅ヶ崎へ行くくらいの距離です。2,500mを超えた高さから、人によっては通勤ルートにも等しい短距離(通勤者には遠距離に感じる?)で水が流れ下っています。

川の傾きを表す言葉として、「河床勾配(かしょうこうばい)」という言葉があります。100m進むうちに川の流れの高さが1m変わる場合の河床勾配を1/100と記すそうです。

例えば、日本三大急流と言われる富士川の河床勾配は平均1/240。上流から下流に至るまで、240m進むと川の高さが平均1m変わるという意味ですね。

最上川の河床勾配は、最も傾きが急な上流部でも約1/200です。球磨川の場合は、最も傾きが急な上流部でも約1/500。それぞれ川の上流部で川に沿って200m・500mの距離を進むと川の高低差が1m変わるということです。

一方で、富山を流れる常願寺川の平均河床勾配は、約1/30。山地の上流から扇状地の河口に至るまでの傾きの平均が1/30ですから、日本の一級河川としてはトップレベル、世界屈指の急流だといわれています。ちなみに源流近くの山頂部では約1/19といった数値になるようです。

これは川ではない、滝だ

常願寺川 image by 663highland from Wikipedia

しかも常願寺川には、不幸にも繰り返し洪水を繰り返してきた「暴れ川」の悪名もあります。国土交通省北陸地方整備局・立山砂防事務所の公式サイトには、

<日本一の暴れ川~常願寺川~>(立山砂防事務所の公式サイトより引用)

と書かれています。この場合、日本一は「暴れ川」に掛かる言葉だと理解する方が自然ですよね。

また、常願寺川の流域は日本屈指の「多雨・豪雪地帯」です。年間降水量は日本平均の2倍以上。源流近くの地質は非常にもろくて、過去に山崩れが繰り返し起き、その土砂が流れて、何度も大災害を引き起こしてきました。さらに土砂の影響で川底が高くなり、放っておけば天井川となります。川の堤防の内側に土砂がたまり、周囲の土地よりも川底が高くなった状態を天井川と呼ぶようです。

治水のために明治時代に訪日したオランダ人技術者デ・レーケは常願寺川を見て、「これは川ではない、滝だ」と発言したそうですし、第6代富山工事事務所長として第二次世界大戦後に常願寺川の治水工事を指揮した橋本規明は、「今まで自分の現場10年、行政10年の知識だけでは、この常願寺川を手がけるには何の役にも立たぬ」と言ったそうです。その理由は、水が流れるように石が川を流れてくるからですね。

常願寺川流域を旅すると、人よりも大きい謎の巨岩(大転石)が平野部に放置されているケースが今でも多々見られます。それらは土地の人に聞くと、かつての大洪水で上流部から流れてきた岩なのだとか。

すさまじい歴史ですよね。

片貝川 image from Wikipedia

ちなみに常願寺川の流れる富山県には、一級河川ではないものの二級河川の「片貝川」も流れています。富山7大河川の1つで、こちらの平均河床勾配は1/12です。ここまでの情報がただの前振りになってしまうような数字です。

その驚くような数字が出る理由は、海岸からわずか3kmの地点まで山並が迫り、その山の中を川が流れているからです。もちろん、こちらの川も洪水と氾濫を繰り返してきた記録が残っています。

山岳地帯が多く平野部の少ない日本には急流が多く、洪水の歴史が各地にあり、常願寺川や片貝川、日本三大暴れ川の流域以外でも不幸な出来事が繰り返されています。

治水に取り組んだ(今も取り組む)人たちの努力によって、現代の私たちは平和・安全だと油断しているかもしれません。しかし「暴れ川」や荒川、鬼怒川など、川そのものに氾濫の危険をにおわせる名前が付いている川の近くに住んでいる人は、先人たちからの警鐘だと思って、あらためてハザードマップに目を通してみてはいかがでしょうか。いざという時の避難のプランを、この機に考えてみるといいかもしれません。

 

[参考]

常願寺川 – 国土交通省

熊本県の球磨川、静岡県の富士川と並び、日本三大急流のひとつに数えられている最上川。

河床勾配(かしょうこうばい)

自然と地域の豊かな共存をめざして – 関西電力

片貝川水系河川整備基本方針 – 富山県

片貝川 日本一の急流河川 – 北陸・魚津市観光協会

第8章 河道特性

博物館だより – 富山県立山カルデラ砂防博物館

治水・砂防ウオッチング

よくある質問とその回答(FAQ) – 国土交通省

吉野川の歴史 – 国土交通省

2. 流域及び河川の概要について

1.吉野川の概要

三大河川の兄弟縁組が実現 – 全国知事会

日本三大急流とは!? – プレスマンユニオン

常願寺川の特徴 – 立山砂防事務所

2. 最上川の概要 ~流域及び河川の概要~

土砂災害から富士川流域を守る

流域の概要(地域特性) 球磨川水系

第4章 常願寺川の砂防事業

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。 https://hokuroku.media/


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