
(C)PR TIMES
対馬の「天道信仰の聖地」だった!
「オソロシドコロ」がなぜ禁足地になったのかを知るためには、対馬の伝承を振り返ることがポイントです。対馬はかつて対馬固有の「天道信仰(太陽崇拝)」でした。その聖地なのが「オソロシドコロ」です。文字通り「恐ろしいところ」という意味で、八丁郭のほか、裏八丁郭、多久頭魂神社の不入坪の3カ所のことをいいます。

美しい対馬の山々
「天道信仰」の中心人物であった天道法師を祀っている石積みのお墓があります。この天道法師の母は高貴な身分の女性で、対馬に入り口のない虚船に乗って到着。朝日に向かって小用をたしていると、不思議なことに太陽の光で妊娠してしまいます。
そして、673年にその女性から生まれてきた子どもは、「天童(天道)」と名付けられ、奈良の都で仏教の修行を積み、対馬に「天童法師」として帰ってきました。天童は不思議な力を持ち、神の言葉を伝えることができたり、嵐をまとい空を飛ぶことができたそうです。
そのような噂を耳にした文武天皇は、天童なら自分の病を治せるかもしれないと対馬に使者を送り、天童法師を呼びつけました。17日間の祈祷の末、天童は文武天皇の病を癒すことに成功。文武天皇は天童にとても感謝して、「宝野上人」と「贈り名」したそうです。
「八丁郭(はっちょうかく)」と「裏八丁郭(うらはっちょうかく)」とは?

神秘的な森に佇む八丁郭 (C)PR TIMES
龍良山(たてらさん)は、天童法師が神事を行っていた山とされ、山全体が「天道信仰」の聖地です。ここには、八丁郭=天道法師のお墓と、裏八丁郭=母のお墓があります。
1300年ほど前から仏僧や山伏以外は、立ち入り禁止でした。この「八丁郭」は、地元の人たちから「オソロシドコロ(おそろしいところ)」と呼ばれ、立ち入ると祟りがあるといわれていたのです。
八丁郭と裏八丁郭を参拝する際のルール
現在は、八丁郭と裏八丁郭の禁足は解かれています。しかし、下記のお参りのルールがありますので、必ず守りましょう。
塩でお清めをする
大声を出さない
転ばない
物を拾って帰らない
お参りが終わったら、後ずさりをして帰る
お参りの際は、これらのルールをしっかり守って、神様に敬意を払いたいですね。かつては、うっかり足を踏み入れてしまったら、わらじを頭に乗せて「インノコ」(犬の子)と言いながら後ずさって出ていかなければいけなかったり、転んだときは片袖を身代わりとしてちぎって置いていかなければいけないなど、厳格なルールがありました。
多久頭魂神社の「不入坪」は現在も禁足地である理由は?

「多久頭魂神社の不入坪」は、現在も縄で仕切られている禁足地です。境内の一部には、八丁郭と裏八丁郭と同様に石積みのお墓だと思われるものが存在しますが、それが何なのかわかっていません。そのため、入ってしまうと何が起こるかわからないので、絶対に立ち入らないように注意してなければなりません。
「オソロシドコロ」は、神様に対する畏怖の念を持って参るべき太陽信仰の聖地だったのです。対馬の「オソロシドコロ」を訪れる機会があったら、今回ご紹介した伝承に想いを馳せながら、ルールを守ってお参りしてくださいね。また、『禁足地巡礼』(扶桑社新書)には、日本各地の禁足地について、より詳しく書かれているので、興味のある方はぜひチェックを!

Ayami ライター
都内在住のフリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。
【日本の美しい禁足地vol.1】薄暗く荘厳な雰囲気~長崎・対馬の「オソロ
Apr 9th, 2022 | あやみ
歴史や宗教的な背景などで立ち入ってはいけない場所。それが「禁足地」です。この連載では、日本各地にある禁足地にフォーカス。1回目は、長崎県の離島・対馬にある「オソロシドコロ」をご紹介します。名前からして恐ろしい雰囲気を醸し出していますが、なぜこの場所は禁足地になったのでしょうか? 「オソロシドコロ」の歴史と今に迫ります。
【日本最古を探せ】坂本龍馬も訪れた長崎の世界遺産「グラバー邸」
Apr 3rd, 2022 | 内野 チエ
「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所やコト、モノを発掘してみました。今回は現存する日本最古の木造洋風建築「グラバー邸」を紹介します。
【世界遺産】潜伏キリシタンの歴史と文化をめぐる旅!『沈黙』の舞台・長崎「
Feb 1st, 2022 | ロザンベール葉
2018年7月に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。キリスト教が禁じられているなかで、潜伏キリシタンが信仰を続けた証となる遺産群です。五島列島を含む長崎県を中心に熊本県の天草地方など、日本の西端に位置する地にそれらが点在しています。今回はそのなかの一つ「外海の出津集落」を訪れてきました。
【日本一の〇〇連載】陥没湖比べ!「最大」は琵琶湖ですが…「最小」は一体?
Dec 21st, 2021 | 坂本正敬
TABIZINEでは、意外な日本一を紹介しています。今回は湖の日本一です。日本で最も大きな湖は琵琶湖ですが、この琵琶湖と同じ「陥没湖」として、日本で最も小さい湖はどこになるのでしょうか?
【実は日本が世界一】地球で「最北のサンゴ礁」が冷たい日本海に存在した!?
Dec 15th, 2021 | 坂本正敬
日本にある「意外な世界一」なモノやコトをピックアップして紹介する当連載。今回は、一般的には温かい海でしか見られないとされているサンゴ礁のお話です。世界で最北のサンゴ礁が、なんと日本海(長崎県壱岐)にあるのです。
ラピュタのような世界、女性が悩みを吐露する場・・・岩の中のパワースポット
Dec 17th, 2020 | 内野 チエ
長崎県佐世保市の知られざるパワースポット「清岩寺」。別名「福石観音」とも呼ばれています。名前に「岩」や「石」がついているとおり、岩石に囲まれたお寺です。境内のあちこちに見どころが点在し、じっくり見て回ると小一時間はかかりそう。どこを切り取っても圧倒されるような風景が広がり、お参りやお出かけに最適です!
【2020年開運】長崎県のパワースポット3選!海上の神社、ゼロ磁場、海中
Nov 26th, 2020 | 青山 沙羅
2020年、全世界がコロナ禍に見舞われました。今までの日常が失われ、世界中の人々の生活が変化しています。こんなときだからこそ、パワースポットの良い運気をいただき、人生に立ち向かう勇気を養いたいものです。日本全国にあるパワースポットで、コロナの災いを退け、健康運や金運、仕事運を上げましょう。北海道から沖縄まで、47都道府県のパワースポットをご紹介します。今回は長崎県です。
癒される!優しい人が多い都道府県【ちょっと面白い都道府県ランキング】
Jan 13th, 2019 | 青山 沙羅
北から南まで47都道府県、小さな日本なのに風土、文化、方言、県民性がそれぞれ違います。各都道府県が持つ個性に着目し、「ちょっと面白い都道府県ランキング」をシリーズでご紹介。今回は、優しい人が多い都道府県について。
トラベルライター22人が選ぶ、おすすめ観光地ランキング【長崎編】
Oct 22nd, 2018 | 坂本正敬
旅の達人、プロのトラベルライター22人に「47都道府県のおすすめ観光地」アンケートを実施。各県それぞれ、行ってよかったスポットTOP5を選んでもらいました。TABIZINE5周年企画として、1県ずつランキングで発表していきます!今回は、長崎編です!
【日本の不思議】古代史最大のミステリー、邪馬台国の女王・卑弥呼に迫る
Aug 7th, 2018 | あやみ
日本史の教科書に登場する「卑弥呼」。日本史上初めての女王とされる人物です。しかし、残念ながら、邪馬台国の時代の日本に文字がなく、卑弥呼に関する史料はほとんど残っていません。そんな古代の日本に存在した女王、卑弥呼の謎を追い求めてみました。