旅好きなら見逃せない「小松市」
北陸の空の玄関口、小松空港を擁する「小松市」。霊峰白山の眺望や山海の美味、加賀が誇る九谷焼、開湯1300年の歴史をもつ粟津温泉など見どころは多彩。
そう、小松空港に着いてすぐリムジンバスで金沢に直行してしまうのは、実にもったいないんです。ここでは、そんな小松市のなかでも、旅好きの間でにわかに話題を集めている隠れスポットをお伝えします。
TAKIGAHARA FARM
小松空港からクルマで30分ほど、のどかな田園風景を横目に狭い道を抜けると、木々に囲まれた「TAKIGAHARA FARM」が見えてきます。ここは古民家をリノベした宿やカフェ、バー&ラウンジ、クラフト工房から構成される複合施設。
東京でファーマーズマーケットを手がけるNPO法人「ファーマーズマーケット・アソシエーション」のメンバーが発起人となり2016年に誕生しました。コンセプトである“農業のある新しい暮らし”を自然や食、アートを通じて体感させてくれるという場です。
メイン棟となる「TAKIGAHARA CRAFT&STAY」は築100年の古民家を改装。扉を開けると、その外観からは想像もつかないモダンな空間が現れます。1階のラウンジにはザハ・ハディッド、 アキッレ・カスティリオーニ、エーロ・サーリネン、ジャスパー モリソンらの家具が設置。スタイリッシュで洗練された雰囲気に古民家にいることを忘れてしまうほど。
Bunk Bed Room
Director’s Suite
2階は宿泊専用フロアに。16台のバンクベッドを備えたドミトリー「Bunk Bed Room」(1泊5500円/1名)や、2段ベッドが2台あるプライベートルーム「Band Room」(1泊2万4000円/4名)、クイーンサイズベッドと2段ベッドが備わるプライベートルーム「Director’s Suite」(1泊2万8000円/4名)の3タイプがあります。
築80年の石蔵を改装した「TAKIGAHARA HOUSE」は1組限定で4名まで利用できます(1泊3万1000円/4名)。他の建物からやや離れているので、よりプライベート気分を味わいたいときにおすすめ。筆者が訪れた1月は辺り一面銀世界。しんしんと降る雪の音が耳に響き、不思議なほど心身が浄化されるのを実感しました。
2階はベッドルーム、1階はリビングとバスルームに。キッチンや冷蔵庫も完備されているので自炊も可能です。長期滞在やワーケーションとしての利用も人気なのだとか。有機的なデザインはただそれだけで落ち着くうえ、木の柔らかな香りも魅惑的。きっと、新しいアイデアが生まれる創造的な場所となるはず。
「TAKIGAHARA CAFE」ではスペシャリテである小松産そば粉を使ったガレットほか、近隣で採れた旬野菜を用いたサラダやスープを提供。摘みたてのハーブで作るハーブティーなどのドリンクも充実しています。
さらに体験型プログラムとして畑仕事やワークショップも随時開催。土や自然と触れ合えば、多忙な日常で忘れかけていた自然の安らぎを感じられることでしょう。
本山石切り場
TAKIGAHARA FARMとセットで訪れたいのが、クルマで約3分の場所にある滝ヶ原石切り場。小松市には良質な凝灰岩が広範囲に分布しており、古墳時代から切石文化が受け継がれてきました。国会議事堂に使われている石材も、実は小松市で採掘されたものなんですよ。
滝ケ原町では1800年ごろから採掘が始まり、戦後の最盛期には12カ所の石切り場があったそう。こちらは近年まで採掘が行われていた「西山石切り場」。小松市の文化と産業を支えた石切り場の一つです。迫力ある佇まいはまるでヨルダンのペトラ遺跡の神殿のよう。
現在、採掘が行われているのは「本山(ほんやま)石切場」のみ。通常は立ち入り禁止ですが、採掘販売元の石材荒谷商店に事前連絡すれば見学可能です。真っ直ぐに300m伸びる採掘坑は圧巻!
奥に進むにつれて、静まりが増す坑道。ひんやりした空気に包まれれば、思わず地底世界にいるような感覚に。この石切り場は100年以上先祖代々受け継がれているそう。現在は重機で採掘を行なっていますが、かつては手作業で石を切り出していたのだとか。
九谷セラミック・ラボラトリー
日本のみならず、“ジャパン・クタニ”として海外でも広く知られる石川県の九谷焼。そんな伝統工芸品を新たな角度から知ってもらおうと、2019年にオープンしたのが「九谷セラミック・ラボラトリー」。
製土、ギャラリー、工房を兼ね備えた複合型工房で、展示見学や体験メニューを通して九谷焼を深く知れる施設です。建築家・隈研吾氏が手がけた建築も見どころのひとつ。
同施設はもともと、九谷焼づくりに欠かせない磁器土を60年にわたって製造する工場があった場所。ファクトリーゾーンでは花坂陶石の粉砕から陶土となる様子を間近で見学できます。
ギャラリースペースでは、九谷焼の成形や焼成、絵付などさまざま工程が立体や映像とともに展示。さらに新進気鋭の九谷焼作家による作品展も随時開催されており、その場で購入も可能です。
伝統的な技法を継承しながら、新たな感性で生み出された作品も多数。シックな色合いの「ETHNI9(エスニック)」は、塩焼きそばなど中華料理店が多い小松市の土地柄に合わせて作られたオリジナルブランド。ラーメン鉢、チャーハン皿、餃子皿、タレ皿の4種が用意されています。いつものおうち中華が格上げされそうな顔ぶれです。
工房では本格的な作陶体験も可能。ろくろを使った「そばちょこ」(3,000円 税別)や、五色の絵具で彩色する「白生地」(2,500円 税別)をはじめ、旅の記念にぴったりなコースが充実しています。ベテランの先生による丁寧な指導があるので初心者でも安心。
里山に溶け込むファームハウス、壮大な石切り場、新たな視点で楽しむ伝統工芸……。今度の北陸は、小松市が主役の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?