「力不足」の意味
「力不足」は、与えられた役目を果たす力が足りないこと。謙遜したり、謝罪したりするシーンで使う場面が多いといえます。他の人に対して、能力不足を指摘する場面でも用いられます。
私の力不足がこのような結果を招いてしまいました
「役不足」の意味
一方「役不足」は、その人の力量に比べて役目が軽いこと。また、役目が軽いために実力を発揮できないこと。もともとは俳優などが与えられた役に不満を抱くという意味で、歌舞伎や演劇の世界で「こんな役では、自分の能力に見合わない、物足りない」と感じるときに使われていました。
前田さんには役不足かもしれませんが、Bチームのサブリーダーをお願いできますか?
「荷が重い」という意味ではない!
「私には役不足ですが……」というふうに謙遜の意味をこめて使ってしまうケースがありますが、これは間違い。これでは「私の能力からするとちょっと物足りない役目ですが……」という意味になり、とても尊大な印象を与えてしまうので、注意が必要です。
「力不足」と「役不足」の簡単な覚え方
力不足と役不足はどちらも「不足」という言葉がついているので、少しややこしく感じてしまうかもしれません。
意味が覚えられない! という時は、何が不足しているのかに注目すると覚えやすいですよ。力不足は、与えられた役目に対して力が足りていないという意味。役不足は反対で、能力に対して役目が物足りないという意味です。
【クイズ】適切なのはどっち?
1→力不足
2→役不足
1の正解は力不足。謙遜の気持ちを込めて「私では能力が足りていないかもしれませんが……」と言っています。
2の正解は役不足。「木村さんの能力に比べて、役目が軽すぎるのではないか?」と言っています。
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。