過ごしやすいイギリスの夏
イギリスに住む日本人の多くが、イギリスのいいところとして「さわやかな夏」をあげます。湿度が低いうえ、気温が高くなったときも、夜になれば羽織るものが必要なくらい涼しくなり、とても過ごしやすい季節なのです。
イギリス人も、日が長く天気のいい日が増える夏が大好きという人はとても多いです。また、どんより雲に覆われた天気で有名なイギリスでは、近隣のスペインやギリシャなどで過ごす夏のビーチバカンスも大人気です。
イギリス人にとっての「猛暑」とは?
ところが、夏が大好きなのにイギリス人は「暑さが苦手」と言う人がとても多いのです! イギリスは北海道の気候に似ていると言われ、ひと夏に2週間程度は最高気温が25℃から30℃前後まで上がる日があります。
最高気温が25℃以上が「真夏日」、30℃を超える場合は「猛暑」、35℃となると「非常事態」という感覚です。例えば、最高気温が30℃以上になると電車のシステムが故障したり、大きなビルの空調がキャパオーバーとなって故障したりと、暑さ以外の不調が社会全体で発生することもあります。
「熱帯夜」は18℃以上
日本では「夕方から翌日の朝までの最低気温が25℃以上になる夜」が「熱帯夜」と定義されていますが、イギリスの熱帯夜は最低気温が18℃以上の日を指します。
ニュースの天気予報などでは「最低気温は18℃の予想です。今晩は寝苦しい夜になるでしょう」というようなトーンで報道されます。ちなみに日本で育った筆者にとって、イギリスで「寝苦しいほど暑い」と感じたことはほとんどありません。
イギリス人が暑さに弱い理由は?
では、なぜイギリス人はそんなに暑さに弱いのでしょうか?
ほとんどの家にエアコンがない
遮熱、断熱効果の高い家が多く、夜になっても家の中の温度が高いままで、窓を開けても室内のほうが外より暑いということが当たり前のイギリスですが、自宅にエアコンがある人はほとんどいません。そのため暑くてもエアコンで涼むこともできず、「暑い!」と苦痛に思う人が多いようです。
交通機関や公共施設にもエアコンがない
家と同様、バスや地下鉄、電車などの交通機関や学校などにもエアコンがほとんどありません。そのため30℃前後まで気温が上がった日の満員の地下鉄などは、実際かなり不快な暑さです。
日差しが強い
日本より北に位置するイギリスでは、夏場はとにかく日差しが強い! 気温30℃の日も木陰に入れば過ごしやすいのですが、日向に出ると強い日差しが体感温度をかなり上げます。日除けはもちろんのこと、日焼けや皮膚がんの予防のためにも帽子をかぶる人が、年齢や性別に関係なく多いです。
「暑さ」に慣れていない
最終的には、これが一番の理由でしょう。「暑さに慣れていないので、暑いのが苦手」という人が多いです。ただし「ホリディでは暑いところに行きたい」というのが矛盾していて面白いですよね。
ここが違う! イギリスの暑さ対策
日本とは違うイギリスでの暑さ対策の常識とは?
1. 昼間は窓は開けない
遮熱性、断熱性の高い家が多いので、暑い日に窓を開けるのは気温が下がる夜から朝まで。気温の上がる昼間は窓やカーテンを完全に閉めて、冷えた空気を家から逃さないように過ごします。
2. 大半の人が変わらず「ホットの紅茶」を飲む
どんなに暑くても、やっぱり紅茶の国。真夏のイギリスでは、喉が渇いたら「あー、暑い。紅茶飲む?」が当たり前です。ちなみに最近はアイスティーも見かけますが、飲む人は少数派です。
実際、日本よりも暑いインドやトルコでも冷たい飲み物をがぶ飲みせず、ホットの紅茶を飲む習慣があるので、体温に近い温度の飲み物を飲むほうが理にかなっているのかもしれませんね。
決して暑さに強くない筆者にとっても、イギリスの夏は湿度も低く快適です。どんなに暑い日でも、日陰で動かなければ汗が滴るなんてことは皆無、寝苦しいほど暑い夜もほとんどありません。日本人にはありがたすぎるイギリスの夏をいつかぜひ体験してみてください。
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