日本の桜の8割は染井吉野
江戸時代後期 染井吉野の品種が誕生する
明治期 挿し木や接ぎ木で全国に広がる
1878年(明治11年) 開成山に染井吉野が植えられる
2016年(平成28年) 樹木調査で開成山公園の染井吉野が日本最古と認められる
春の花と言えば、誰もが思い浮かべるのが「桜」ではないでしょうか?
学校や公園、神社、道路脇など、あちこちに植えられており、開花シーズンになると淡いピンク色の花が美しく咲き誇ります。日本全国にある桜の木の約8割が「染井吉野(ソメイヨシノ)」であり、その起源は江戸時代後期にあると言われています。
江戸時代後期に誕生した「奇跡の1本」
染井吉野の品種が初めて誕生したのは今からおよそ200年前。オオシマザクラとエドヒガンの品種がかけ合わされて生まれたとされており、その最初の1本は江戸時代の後期に発見されたと伝わっています。そして、現在の東京都豊島区から、挿し木や接ぎ木で株が増やされていき、明治期に全国に広がりました。
現在、全国で見られる染井吉野は、もとはたった1本の木から始まったもの。挿し木や接ぎ木は、いわばクローンを増やす技術であり、どの染井吉野も基本的にまったく同じ遺伝子を持っています。
染井吉野には「花が咲いた後に葉が出る」「成長が早く育てやすい」「花見がしやすい枝ぶり」などの特徴があります。現在の研究でさえも、同じようにオオシマザクラとエドヒガンを交配しても同様の特徴を揃える品種を作り出すことは不可能であり、江戸時代後期に誕生した染井吉野はまさに「奇跡の1本」なのです。
現在、DNAを抽出して最初の1本を探す研究も行われていますが、今のところ特定までには至っていません。
開成山公園 (C) 福島県観光物産交流協会
一方、文献や最新の科学調査によって、「日本最古」と証明された染井吉野が福島県郡山市にあります。その染井吉野は「開成山公園」内にあり、1878年(明治11年)に植えたという文献が残されていました。
2016年(平成28年)に実施された樹齢調査によって科学的にも証明され、2019年(令和元年)、樹木医学会の学会誌で、現存する染井吉野の幹として日本最古のものであることが認められました。
駒込にかつてあった園芸の里「染井村」
染井吉野桜記念公園 (C) kuremo / Shutterstock.com
江戸時代後期に染井吉野を広げた拠点地だった東京都豊島区。当時は「染井村」と呼ばれ、染井通りにはたくさんの植木屋が並び、東京随一の園芸の里であったのだとか。
そんな染井吉野の故郷、染井村を記念して、JR山手線駒込駅そばには「染井吉野桜記念公園」があり、「染井吉野桜発祥之里碑」が建てられています。
染井吉野桜記念公園には染井吉野の生みの親となったオオシマザクラとエドヒガンザクラと植えられており、2つの原種を比較して見ることができます。
オオシマザクラは白く大ぶりの花で、花と同時に葉が出るのが特徴。エドヒガンザクラは葉が出る前に濃いピンク色の花が咲きますが、花は小ぶり。そんな両者の「長所」だけを上手く受け継いだ「奇跡の1本」である染井吉野。次の春は、ぜひ3種の花の違いを目で見て確認してみてくださいね。
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