旅行に出かけると高揚感で鈍感になってしまいがちですが、国内外のホテルや旅館、簡易宿所(民泊)では、盗聴や盗撮をされるリスクが常にあります。実際に世界中の宿泊施設で盗聴や盗撮の事件が起こっており、日本の毎日新聞からも『民泊 盗撮対策を「ホテル・旅館より危険」専門家ら指摘 』といった記事が出ています。
そこで今回は盗聴や盗撮の問題にも詳しい、総合探偵社スプラッシュの代表である現役探偵の今野裕幸さんに、盗聴や盗撮の実態、さらには宿泊施設の利用者でもできる簡単な盗聴・盗撮対策を教えてもらいました。
盗聴、盗撮被害の9割は思い込み
大前提として強調しておきたいですが、今野さんによると「盗聴されているかも」「盗撮されているかも」と疑心暗鬼になって調査会社に依頼するクライアントのうち、およそ9割は「思い込み」で終わると言います。
なるほどインターネットを見ると、ラブホテルはほとんど全ての場所が盗撮・盗聴されているといったような印象を受ける情報もあります。テレビ番組で報じられる盗聴・盗撮調査員の生々しい活動を見ると、自分の家にもあるのではないかと不安になってしまいますが、実際に盗聴・盗撮の被害はラブホテルを含めて一般人が考えるほどには起きていないと言います。
ただ一方で、浮気調査のために張り込みを行っている際に、宿泊施設に仕込まれた盗聴器の音声を偶然キャッチしてしまうケースもあると言います。現在は盗聴器、盗撮機器が大手インターネットショッピングサイトでも普通に販売されているため、先の情報とは矛盾するようですが、どこで盗聴・盗撮被害が起きてもおかしくはないとも教えてくれました。
簡易宿所(民泊)はやはりリスクが高いと言える
簡易宿所(民泊)は、旅行者に新たな選択肢を与える画期的な宿泊場所として、広く認知・利用され始めています。自宅の余剰スペースを生かすなどしてゲストを招き入れるホストにとっても代えがたい思い出と収入が得られますし、逆にゲストにもホテルでは味わえないローカルな体験が満喫できるメリットがあります。
数多くの優れた民泊オーナーを個人的に知っていますし、筆者自身も民泊の開業に興味があるため、民泊の印象を悪くするような言い方はあまりしたくないのですが、上述の毎日新聞の記事でも専門家が指摘しているように、民泊は盗撮・盗聴リスクが一般的に高まる傾向があるようです。
総合探偵社スプラッシュ代表の今野さんも同様の考えを示しており、やはり従業員などの出入りが少ない民泊は、オーナーが盗聴器や盗撮カメラを設置しやすい環境にあると言います。
「オーナーがリスクを冒してまで、そんなことをするか?」という疑問も出てくるかもしれませんが、今野さんによれば宿泊所、一般の住宅の違いに関係なく、盗聴器や盗撮機器をセットする犯人は、建物のオーナーが圧倒的に多いと言います。盗聴や盗撮をした音声や画像は届く範囲が決まっているため、犯人も受信のために現場から一定の距離内に居なければ駄目だからですね。
例えば住宅にセットされた盗聴器は、なんとなくストーカーなど犯人が外に居るような印象を受けますが、実際は夫が妻の不倫を疑ってセットしたり、子どもの素行を把握するために親がセットしたりと、家族が犯人であるケースが圧倒的に多いみたいです。
その意味で、自宅を兼ねた簡易宿所(民泊)などは、オーナーが単独で宿泊スペースに自由に出入りできる上に、住居を兼ねているため距離的に受信も常時可能なため、盗聴器、盗撮カメラのセットに適した環境がそろっていると考えられるのですね。
盗撮が疑われるときに旅行者ができる対処法3つ
民泊が一人で悪者のような流れになってしまいましたが、旅館やホテルが安全というわけではありません。実際に創作なのか現実なのかは分かりませんが、旅館やホテルの盗撮らしき映像はインターネット上に存在します。どこであれ国内外の宿泊所で「なんか怪しい」と感じたときは、旅行者としてどのように対処をすればいいのでしょうか。今野さんは幾つかの対策を教えてくれました。
対策その1:市販の盗聴器、盗撮カメラの特徴を一通り把握しておく
まずは、現状で市販されている盗聴器、盗撮カメラを旅行前に見ておくだけでも違うと言います。ざっと目を通せば、壁掛け型、フック型など盗聴器、盗撮機器がどのような形をしているのか分かりますし、性能も分かるといいます。「こんなもので盗撮できるの!?」と知っておくだけでも、被害は防げるかもしれないと教えてくれました。
対策その2:部屋を真っ暗にしてスマートホンのフラッシュ機能でチェックする
スマートホンのフラッシュ機能を使って、盗撮カメラを探す方法もあると言います。部屋を真っ暗にして、スマートホンのフラッシュを点灯させ、怪しい物体に近づけてみるといいそう。盗撮機器と言っても、結局はカメラ。ペン先ほどの大きさかもしれませんが、必ずレンズがついています。暗闇で光を当てるとレンズがきらりと反射するみたいです。まさにプロの技ですね。
対策その3:置時計などを伏せてしまう
盗撮をしたい犯人の心理として、盗撮しやすい角度に盗撮カメラをセットする傾向があると言います。「いいアングル」で盗撮をしたいため、例えばベッドに向けて、盗撮カメラを仕込ませた置時計を正対するように置くといった手口が予想できるそう。ベッドならベッド、脱衣所なら脱衣所に、不自然に置かれた時計や置物などは、伏せておくだけでも被害を防げる可能性が高まるみたいですね。
以上、宿泊施設における盗聴や盗撮の実態、あるいは被害を少しでも減らす方法を紹介しましたが、いかがでしたか? 「盗聴器が仕掛けられているかも」などと思い始めたら、もう正直、怖さが勝って何も楽しめなくなってしまうはず。9割が思い込みと紹介したように、思い込みで終わるケースがほとんどのはずですが、どうしても気になる場合は、上述した対策を行ってみてくださいね。
【取材協力】
今野裕幸・・・1976年、埼玉生まれ。年間1,000件の相談実績を誇る総合探偵社スプラッシュ 代表にして、現場を指揮する現役探偵。調査業に精通し、多岐に渡る調査の提案、法律、示談のアドバイスまで幅広く活動する。TBS番組など、メディア出演実績多数。
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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