その1:梅雨入り・梅雨明けの発表は防災情報
テレビやインターネットなど各種のメディアでは、梅雨入り、梅雨明けの情報が毎年発表されています。
「ああ、今年も嫌な時期がやってきた」、「いよいよ夏が来るぞ」などと、季節の移ろいを実感するいい機会になりますが、実は気象庁を中心に各報道機関が梅雨入り、梅雨明けを発表する理由は、単に季節の変化を知らせたいからではないそう。梅雨入りの情報は、防災目的で発表するみたいですね。
梅雨入りの発表は、大雨や洪水、土砂崩れなどのリスクが高まる時期への注意喚起として行うそうで、一方の梅雨明けは厳しい夏の始まりに伴う熱中症などのへの注意喚起として、防災のために行うのだとか。
季節の移ろいを楽しむ目的ではなく、防災上の目的があると心に留めて聞くと、またニュースも違って聞こえてくるかもしれませんね。
その2:梅雨には陰性の梅雨と陽性の梅雨がある
梅雨と言われても、6月から7月にかけてすっきりとしない天気が続く程度にしか、理解していない人も少なくないと思います。しかし、梅雨には2種類あって、陰性の梅雨、陽性の梅雨があるのだとか。
陰性と陽性の梅雨の違いとは、なんとなく文字からも分かるように、陰性はすっきりとしないシトシト雨が続くような梅雨、陽性は大雨になる梅雨を意味します。
陰性は梅雨の前半期に訪れるケースが多く、陽性は梅雨の後半に訪れるケースが多いと言います。6月も終わるこれからは梅雨の後半。大雨による洪水や土砂崩れなどに注意した方がいいのですね。
その3:梅雨の語源は諸説あって分かっていない
梅雨という漢字は「ばいう」とも読みますが、「つゆ」とも呼びますよね。しかし、梅雨の漢字が何で「つゆ」と読まれるのか、そもそもなぜ「つゆ」と言うのか、疑問に感じた人も多いと思います。梅雨の語源は何なのでしょうか?
結論から言いますが、梅雨の語源は諸説あって分かっていないのだとか。まず梅雨という漢字は、中国から輸入しています。中国語では「メイユ」と発音しますが、『梅雨前線の正体』(東京堂出版)を読むと、「梅が熟して黄色くなる時期の雨」という意味を持った「黄梅雨」から来ている説、梅(méi)と同じ音を持つ黴(カビ/méi)が本当は使われていたものの、黴雨が梅雨に変わったという説があるとされています。もちろん、『広辞苑』(岩波書店)には梅雨と黴雨、どちらの漢字も掲載されています。
ただ、毎年梅を使ってシロップや梅酒を作っている立場からすると、黄梅雨の実感がすごくあります。中国人の豊かな詩想からすれば、黄梅雨が由来だとしか思えないのですが、いかがでしょうか。
一方で「つゆ」という読みに関してですが、梅雨という漢字が日本に入ってくると、雨粒や水滴を表現する「露(つゆ)」が梅雨の漢字と結びついたという説があります。また、梅雨の漢字と古語の「ついゆ(つゆ)」が結びついたという説もあるのだとか。「ついゆ」を『広辞苑』で調べてみると、「費ゆ」「弊ゆ」「潰ゆ」などの漢字が当てられており、「ついえる」と意味が同じだと書かれています。
今度は「ついえる」の意味を調べると、「くずれる」といった意味があり、梅雨の時期は梅が熟れてつぶれてしまうところから、「ついゆ」という言葉が使われ、その言葉が梅雨という漢字と結びついたという話もあります。要するに、なぜ今の時期の長雨を「梅雨」と書き、その漢字を「つゆ」と読むのか、毎年の自然現象でありながら、定かではないみたいですね。
以上、梅雨に関するトリビアを幾つか紹介しましたが、いかがでしたか? 他にも梅雨は日本だけの天候ではないだとか、アオイの花を見れば、梅雨入り・梅雨明けの時期がだいたい分かるという話もあります。
アオイとは人の背丈ほど高く育つ植物で、茎に花が縦に並んで咲き誇ります。梅雨入りのころに茎の下の花が咲き、空に向かって順番に花が開いて、梅雨明けのころに茎の上まで咲きそろう特徴があるのだとか。
小学生のころ、近所の墓地に生えていたアオイを、「奇麗だな」と思って素手で引きちぎって家に持ち帰った記憶が筆者にはあります。今思えば褒められた行為では全くありませんが、花も咲きそろっていた点を考えると、あれは梅雨明け間近の出来事だったのだと考えられますね。
[仁科淳司著『やさしい気象学』 – 古今書院]
[茂木耕作著『梅雨前線の正体』 – 東京堂出版]
[弓木春奈著『気象災害から身を守る大切なことわざ』 – 河出書房新社]