長沢浄水場(神奈川県川崎市)
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最初は神奈川県川崎市多摩区にある長沢浄水場(東京都水道局)です。川崎市の多摩区とは東京から見れば多摩川を挟んで狛江市の対岸に位置する自治体ですね。
この多摩区にある水沢浄水場(東京都水道局)は建築の分野でも有名で、
<曲面を用いた伸びやかな造形を特徴>(山田守設計による長沢浄水場のデザインに関する研究より引用)
としており、建築家・山田守の「作品」としても評価されています。山田守は日本武道館や京都タワーなども設計した人です。「わき上がる水」を連想させる噴水のような柱が室内外に多用されていて、耐震強度の改修を経てもその独特の美しさは保たれています。
この浄水場の建物が、なんと初代『ウルトラマン』において宇宙忍者バルタン星人が初めて登場する回のロケ地となっているのです。その後も同作では繰り返し登場する建物で、浄水場の見学会では名建築を学びたい人とウルトラマンの聖地を巡りたい人が異なる感動を持って建物を眺めるのだとか。不思議な見学会です。
※聖地の登場話(初代『ウルトラマン』)
- 侵略者を撃て バルタン星人
- 宇宙から来た暴れん坊 ギャンゴ
- ミイラの叫び ミイラ人間、ドドンゴ
- 無限へのパスポート ブルトン
- 遊星から来た兄弟 ザラブ星人 にせウルトラマン
丸の内(東京都千代田区)
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東京の玄関口として進化し続ける丸の内。皇居東側の一帯で、もともと江戸時代は大名屋敷が建ち並び、明治維新後は陸軍の演習のための練兵場があったようです。1914年(大正3年)に東京駅ができると、丸ビル・新丸ビルなどが次々と建てられ、高層ビルが建ち並ぶビジネス街へと生まれ変わっていきます。
初代『ウルトラマン』(全39話)が空想特撮シリーズ第1弾『ウルトラQ』の後番組として放送された1966年(昭和41年)7月から1967年(昭和42年)4月の当時、丸の内は「ビル街」を撮影する際の貴重なロケ地でした。特にビル街を南北に貫く丸の内仲通りと、その沿道のビルは何度も撮影が行われています。先ほどのバルタン星人が初めて登場する回にも出てきます。
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ビジネス街になってからも丸の内は度重なる再開発が行われていますので、作中の景色と現在の景色、何が一緒で何が違うのか見比べるように聖地を巡礼しても面白いかもしれませんね。
※聖地の登場話(初代『ウルトラマン』)
- 侵略者を撃て バルタン星人
- ミロガンダの秘密 グリーンモンス
- 恐怖の宇宙線 ガヴァドンA・B
- 怪彗星ツィフォン ドラコ、ギガス レッドキング2
- 怪獣殿下 後篇 ゴモラ
- 禁じられた言葉 メフィラス星人 バルタン星人3 ザラブ星人、ケムール人
東レの基礎研究所(現:医薬研究所)(神奈川県鎌倉市)
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「初代ウルトラマンの聖地」と言われて、マニアの方が真っ先に思い浮かぶ場所が、東レ株式会社の医薬研究所(旧:基礎研究所)のようです。同社の公式ホームページによると、1962年(昭和37年)に鎌倉の丘陵地に東レが基礎研究所を創設します。20年先に結果が出るような難解な、しかし偉大で意義深い研究に取り組むための研究施設として立ち上がったようです。
設計はあのル・コルビュジェに師事した経歴を持つ建築家・坂倉準三です。パリ万博日本館・岡本太郎邸(現:岡本太郎記念館)・新宿駅西口広場など数々の名建築を残す中で、東洋レーヨン基礎研究所(現:医薬研究所)を設計しました。
その建物は、なんと初代『ウルトラマン』の最終話で、ウルトラマンが宇宙恐竜ゼットンに負けてしまう回のロケ地に使われています。ゼットンに組み伏せられて力と時間を消耗し、必殺技も跳ね返されて最後は死んでしまうウルトラマン。ドイツ表現主義の映画を見るような演出で悲壮な最期が描かれます。
やはりウルトラマンファンには、忘れようにも忘れられない舞台なのかもしれません。
※聖地の登場話(初代『ウルトラマン』)
- 人間標本5・6 ダダ
- さらばウルトラマン ゼットン、ゼットン星人 ゾフィ
以上が、初代ウルトラマンのロケ地として登場した都心周辺の代表的な聖地になります。
多摩川住宅も有名みたいですが、残念ながら現在、建て替えの工事が行われています。移り変わりの激しい世の中(特に東京周辺)で、50年以上も前に放送された作品の聖地が残っているほうが奇跡に近いのかもしれません。
[参考]
※ 山田守設計による長沢浄水場のデザインに関する研究 – 大宮司勝弘、岩岡竜夫、岩田利枝