「沖縄そば」は「そば」ではない!?
「沖縄そば」は「そば」といいますが、そば粉が入っていない沖縄固有の麺です。小麦粉100%にかん水を加えてつくるので、原料と製法から中華麺に属しています。
もともとは450~500年前、中国から沖縄へ伝えられた麺類が起源。中国の『琉球交流史』には、1534年に琉球王の四十九日供養に「粉湯(中国語で、汁そばの意味)」を献上したと記録されています。当初は琉球王国宮廷料理の食べ物で、明治時代には裕福層に食されるようになり、昭和初期になると庶民へも広まりました。
戦後、配給の小麦粉による製麺が復活してくると、各地域でさまざまな沖縄そばが作られるようになります。ところが、本土復帰して4年目の1976年、公正取引委員会から沖縄生麺協同組合に対し「沖縄そばはそば粉を全く使っていないため、『そば』と表示してはならない」との通達が入りました。
「沖縄の食文化を変えてはならない」という思いで活動を続けた人々の尽力によって、1978年10月17日、公正取引委員会から正式に認められ、「沖縄そば」の名称が使用できるようになったのです。
沖縄そばとソーキそばの違いとは?
沖縄そばは、麺の太さや形、具のトッピング、スープの種類などが、地域によって異なるのも特徴です。
ちなみに沖縄そばとソーキそばの違いは、トッピングの違い。豚の三枚肉(バラ肉)がトッピングされたものが沖縄そば、甘辛く味付けされた骨付きのスペアリブ(ソーキ)がトッピングされたものがソーキそばなのです。
では、筆者が食べ歩いた個性豊かな沖縄そばの特徴を、それぞれ紹介していきます。
島豆腐の厚揚げがいい「金月そば」(読谷村)
沖縄そばのお店に入って、メニューにそのお店の名前がついているものがあれば、きっとそれがおすすめ。食べてみたくなりますよね。読谷の国道沿い(実際には平行に走る地域の道路)にある「金月そば(きんちちそば)」もそうでした。
「金月そば」(小600円・税込)は、三枚肉1枚と厚揚げ1枚、それにソーキ2個。三枚肉も厚揚げも立派な大きさなので、ソーキは別の皿にのってきます。
大きな三枚肉だけでもハッピーなのですが、この炙りソーキがまた香ばしさも加わっておいしい。ソーキは豚のバラ先肉で、軟骨がついていることが多いです。その軟骨もおいしく煮込まれています。
島豆腐の厚揚げは初めて食べましたが、しっかりと固めで余計な水分が飛んでいて、これまた沖縄そばに合います。
中太の自家製麺はもちもちっとした食感。沖縄産の小麦粉を使っているそうです。鰹や鯖、煮干し、とびうおなどの、8種の魚節から出汁を取ったスープは魚の旨味たっぷり。
「やんばる鶏ジューシー(炊き込みご飯)」(220円・税込)もいただきました。パラっと炊き上がっていて絶品でした。
近くには沖縄の陶器「やちむん」の窯元が並ぶ「やちむんの里」や、地元の農産品が販売されている「JAおきなわ読谷ファーマーズマーケット ゆんた市場」もあります。
沖縄で一番コシがある麺!?「首里そば」(那覇市)
沖縄で一番固い麺ともいわれているのが、こちら「首里そば」。首里城のそば、住宅街にあるお店です。「首里そば」(小400円・税込)は、鰹出汁のスープに三枚肉、ロース肉、かまぼこ。薬味は小ねぎとしょうがです。
気持ちいいほどまっすぐで角が立っているこの麺。確かにコシがあって食べ応えがありました。硬派なイメージでしょうか。すっと背中が伸びる感じです。
「じゅうしい」(200円・税込)もいただきましたが、これがまた首里そばに合います。出汁を含んだ、パラパラとした炊き上がりのご飯です。それに大根や厚揚げ、いんげん、しいたけ、三枚肉、ロース肉が入った「煮付け」(450円・税込)も注文してしまいました。なんとなく懐かしいようなおかず。ほっこりさせられます。
店内は昭和の現代住宅といった雰囲気です。玄関で靴を脱いで上がるので、まるで友達のうちに遊びに来たようでした。
住所:沖縄県那覇市首里赤田町1-7
電話:098-884-0556
営業時間:月・火・水・金・土11:30~14:00
定休日:木・日
久米島のビーチのすぐそば!「パーラースリーピース」(久米島)
「パーラー」と聞けば、例えば「資生堂パーラー」みたいな軽食を出してくれる、スイーツなんかも充実しているお店を思い浮かべますよね。沖縄だと、お弁当やお惣菜を売っていたり、店内でも食べることができるお店がパーラーです。
久米島の「パーラースリーピース」はイーフビーチそばにある、水着でも入れそうなお店でした。
こちらが、「久米島そば アーサー入り」(800円・税込)です。分厚い三枚肉が3枚に、かまぼこ、なると。何しろうれしいのが地元の海でとれたばかりのアーサー(あおさ)。たっぷりのってます。紅しょうがは刻んであって、なるとは外側が赤くなってるものでした。麺は平打ちのふっくら麺。鰹ベースの出汁がよく絡んでつるつるといい食感です。
焼きそばもいただきました。沖縄そばの麺を使ったソース味です。居酒屋さんとかでたまに見ますが、このビーチそばの開放的なパーラーに焼きそばというのが、なんだかしっくりきます。あと、何種類かの「ぜんざい」もあります。沖縄でぜんざいはかき氷のことです。軽食にスイーツということで、やっぱりパーラーでした。
住所:沖縄県島尻郡久米島町比嘉160-3
電話:098-985-7037
営業時間:月~日11:00~15:00
懐かしい気分になる那覇で一番古い店「むつみ橋かどや」(那覇市)
那覇で一番の繁華街、国際通りの交差点すぐそばにあるのが「むつみ橋かどや」です。戦後すぐに開業したということで、その味はなんだか懐かしい気分にさせてくれました。
上の写真の「三枚肉そば」は大きな三枚肉3枚にかまぼこで600円(税込)、「ソーキそば」でも700円(税込)と、とっても財布に優しいのでした。ちなみに肉なしの「かけそば」は300円(税込)、「お代わり麺」が100円(税込)、「いなりずし」は2個で100円(税込)です。
そしてこちらが、「ロースそば」(500円・税込)です。三枚肉やソーキは脂身も多めですが、ロースは赤身。あっさりといただけます。スープがしっかりめの豚骨と鰹なので、物足りないということもなく、ちょうどいいバランス。これはダイエット中にもしっかりたんぱく質が摂れてよさそう。
お店の外観はなかなか年季が入っています。中に入れば、まるで昭和にタイムスリップしたような気分にもなります。
初めて入ったお店でも、なんだか懐かしいなって思うことありますよね。むつみ橋かどやは、まさにそんなお店でした。
住所:沖縄県那覇市牧志1-3-49
電話:098-868-6286
営業時間:水~月11:00~17:00
定休日:火曜
自慢のジューシー付き「3丁目の島そば屋」(宜野湾市)
宜野湾で訪ねたのは「3丁目の島そば屋」。2013年オープンのお店です。「沖縄カレーそば」といった独特なメニューもありますが、いただいたのは「島そば」(小690円・税込)です。三枚肉に炙り軟骨ソーキものっています。しっかりとした肉の存在感がいいですね。出汁は濃いめ、麺は平打ちの縮れで太麺。コシがあって食べ応えがあります。
すべてのそばにはジューシーがついてます。このお店のジューシーも、ぱらっと炊かれていて、とてもおいしいのです。
そして、気になったのがこちら。30円(税込)で追加できる「ふーちばー」。よもぎです。これも麺に入れていただきました。よもぎはお団子などに入っているのを食べたことはありましたが、生のものを食べるのは初めて。ちょっと癖のある香りがまさに癖になりそうです。
タイ料理などに使うパクチーのような立ち位置ということになると思います。沖縄に根付いている食材ですから沖縄そばに合うわけです。
住所:沖縄県宜野湾市嘉数3-10-1 ホワイト パピヨン里101
電話:098-963-9392
営業時間:木〜火11:00〜15:00
定休日:水曜
公式サイト:https://ameblo.jp/shimasobaya/
やんばるの老舗「元祖木灰沖縄そば きしもと食堂」(本部町)
「沖縄美ら海水族館」がある山原(やんばる)の本部町。その港のそばにあるのが「元祖木灰沖縄そば きしもと食堂」です。以前このお店の「八重岳店」に伺ったことがありますが、今回は本店です。
なかなか趣のある店構え。何しろ創業から100年以上ということですから老舗ですね。
「そば小」(700円・税込)をいただきます。スープはしっかり鰹出汁に豚骨、しょうゆがきいています。そうそう、沖縄そばのスープはしょうゆを使うこともあれば塩のものもあります。麺は平打ちの太麺でふっくらした印象です。ストレート麺ですが、スープが濃いめなのでよく合います。
三枚肉と赤肉もしっかりめの味付け。かまぼこはあっさりですが魚の風味が香ります。シンプルでおいしいのです。きっと沖縄の人たちは昔からこういう沖縄そばを食べてきたに違いないと思わせてくれる一杯です。
週末のお昼時、観光客といったお客さんも並んで順番を待ちました。町自体がのんびりしているので、並んでいてものんびりとした気分です。
「コーレーグース」(またはコーレーグス)は、泡盛に島唐辛子を漬けたもの。沖縄そばには欠かせないので、どのお店にもありますが、こちらのものは容器に雰囲気がありました。「かけすぎ注意」との文字。かけすぎれば辛くなるし、アルコールも効いているので注意ということですね。
ちなみに沖縄そばではコシをプラスするため、かんすいの代わりに木を燃やした灰を水に入れた上澄み液である灰汁を使うお店もあるのですが、きしもと食堂では、灰汁使っているそうです。
住所:沖縄県国頭郡本部町渡久地5
電話:098-047-2887
営業時間:11:00〜16:30
定休日:水曜
てびちの迫力が十分!「すーまぬめぇ」(那覇市)
これは迫力があります。那覇東部にある「すーまぬめぇ」の「すーまぬめぇスペシャルそば」(800円・税込)です。三枚肉にソーキ、そして、てびちもどーんと!いかにも沖縄といった一杯です。てびちは豚足のこと。軟らかく煮込まれていてコラーゲンたっぷり。パクっと口に入れて骨ははずしながら食べます。
こちらは「ソーキそば」(小700円・税込)です。ソーキはスペアリブの部分で、しっかりとした肉質。軟骨ではないので、こちらも骨を出しながらいただきます。やっぱり骨付き肉のうまみは特別ですね。
肉がたっぷりで、とても肉肉しいのですが、しっかり茹でて煮込まれているようで、まったく重くないんです。そして味付けはあっさりなので、肉自体のおいしさがよくわかります。
麺は平打ち麺。ふっくらとしながらもコシが感じられて、いいバランスでした。
「すまぬめぇ」は、「すまさんの家の前」という意味らしく、たぶん向かいが「すまさん」のお宅だったのかと思います。那覇市内ながら、庭のある沖縄の古民家です。
庭にも席がありますが、店の中はこんな感じ。まさにどこかのお宅という雰囲気で、「お邪魔します」という気持ちになります。
優しい味が心にしみます!「高江洲そば」(浦添市)
浦添市の「高江洲そば」は、空港について直行した1軒目でした。お目当ては「元祖ゆしどうふそば」です。
まずはスープを一口いただくと、とても優しい味わい。出汁感がしっかりありつつも、ちょうどいい濃さのスープで、うっすらと白く上品です。ゆし豆腐がほろほろと浮かんで、その食感の柔らかさが絶妙。
ソーキも入っていますが、こちらも味付けがはんなりとしていて、それでもそのコリっとした食感がたまりません。
そして、薄焼きたまご。実は筆者は個人的に、これがたまらなく好きなのでした。なんとなく「こころのごちそう感」が増加するんです。
店構えはこの通りで、かなりあっさりとしています。ここで合っているのかちょっと迷いました。
そして店内は広くて、いかにも食堂といった雰囲気。いろんな人たちがやってきては食べて帰るという、気さくな感じもいいですね。
住所:沖縄県浦添市伊祖3-36-1
電話:098-878-4201
営業時間:月~土10:00~16:00
定休日:日曜
以上、沖縄そばのおすすめ8軒でした。筆者は沖縄そばが大好きで、自分で麺を売ったり三枚肉やソーキを煮たりします(冒頭の写真がそうです)。ここで紹介したお店以外にも、おいしいお店はたくさんあります。みなさんのお気に入りが見つかればいいなと思います。
[All photos by Atsushi Ishiguro.]