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「峠の国盗り綱引き合戦」とは?
県境は、合併などがなければそう簡単に変わるものではない、というのが、多くの人の共通認識ではないでしょうか。しかし、この日本には1年に1回、綱引きで県境を決めている場所があるのです。
行っているのは、静岡県と長野県です。静岡県浜松市天竜区と長野県飯田市の境である兵越峠(ひょうごしとうげ)で、「峠の国盗り綱引き合戦」が行われているのです。ここでは静岡県側が「遠州軍」、長野県側が「信州軍」として、毎年10月の第4日曜日に綱引き合戦を繰り広げています。勝ったチームが、「国境」を相手側に1メートル動かすことができるのです。
戦国時代から続く伝統があるというわけではない
兵越峠 Wikipediaより
ただ、もちろんこの「国境」は正式なものではありません。
この戦いで定められた「国境」には「国境」と書かれた立て札が置かれますが、その隣にはしっかりと「告!! この標識 国盗り綱引合戦に於て定めた国境である 行政の境に非ず」と記された立て札も置かれており、あくまで両自治体の交流の一環で行われているのです。
戦いが始まったのは、1987年です。それまで、両自治体の商工会青年部は野球などで交流を深めていましたが、この年は綱引きをしようという案が出ました。それもただ綱引きをするのではおもしろくない、「国境」を賭けようという話になりました。これが「合戦」の始まりです。戦国時代から続く伝統があるというわけではないそうです。
戦績は信州軍が勝ち越し
「合戦」は2020年11月までに、中止もはさみながら32回開催されています。戦績は信州軍17勝、遠州軍15勝と信州軍が勝ち越しており、今までに信州側に「国境」が置かれたことはありません。海のない信州軍は「信州に海を!」を合言葉にしていますが、兵越峠から太平洋までは直線距離で約67キロメートルあります。信州軍は最短でも6万7000連勝しなければならないということになるのです。はたしてその日は来るのでしょうか(ちなみに、遠州軍が9万連勝すると、諏訪湖が遠州軍のものになってしまうそうです)。
現在この大会は、両市長による口上合戦、子ども綱引き大会などもあわせて行い、メインイベントとして国盗り綱引き合戦が行われます。全国でも屈指のユーモアあふれる町おこしです。
【出典】
『知れば知るほど面白い!日本地図150の秘密』(日本地理研究会編/彩図社)
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