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南極にも「砂漠」はある
最初は、砂漠の定義から。そもそも砂漠とは何かと聞かれたら、どう答えますか?
「砂がいっぱい」
「乾燥している」
「雨が降らない」
「暑い」
などが、日本人の平均的なイメージではないでしょうか。
『精選版 日本国語大辞典』には、
<雨が非常に少なく、そのため植物などがほとんど見られない、小石や砂礫で地表をおおわれた不毛の地>(『精選版 日本国語大辞典』より引用)
と書かれています。要するに、雨の少なさが1つのポイントとなるのです。しかし、この雨の少なさだけで考えると、
「砂がいっぱい」
「乾燥している」
「雨が降らない」
「暑い」
といったイメージとは真逆の場所も砂漠と呼べてしまうようです。南極ですね。
日本の環境省によれば、南極は雨ではなく雪の量を測って年間の降水量として計算しているそう。
南極の沿岸部ではその雪がたくさん降るものの、海から離れた内陸部では、雪の元となる雲や水蒸気がほとんど存在しないため、50mmくらいの年間降水量しか確認されないのだとか。
もちろん、だからといって南極の内陸部が、正確な意味での砂漠に分類されるかといえばされません。世界の気候区分上の正式な砂漠(無樹木気候、乾燥帯)とは区別されます。
平凡社『世界大百科事典』には砂漠気候の説明として、
<年降水量が250mm未満の乾燥の厳しい砂漠気候>(『世界大百科事典』より引用)
とあります。
注目は「乾燥の激しい」という言葉。世界の196カ国・地域とEU(欧州連合)が締約する砂漠化対処条約でも「砂漠化」の定義として「乾燥地における土地劣化」が挙げられています。
その意味で、土壌からの水蒸気の蒸発が少ない(乾燥していない)南極の「砂漠」は、厳密に言えば砂漠ではありません。しかし、「極地砂漠」「白い砂漠」といった呼び名も存在するため、広い意味で言えば南極にも砂漠があると言えるのですね。
ゴビ砂漠の「ゴビ」は「砂漠」という意味
冒頭で黄砂は、ゴビ砂漠からもやってくると書きました。中国とモンゴルにまたがるゴビ砂漠は、日本でも知名度の高い砂漠だと思います。
この聞き慣れたゴビ砂漠の「ゴビ」は何語で、どういった意味を持つ言葉かご存じでしょうか?
『ブリタニカ国際大百科事典』や『世界大百科事典』によると「ゴビ」は、モンゴル語だとわかります。
<草がまばらに生え,若干の動物が生息する荒れ地>(平凡社『世界大百科事典』より引用)
という意味の普通名詞だとの話。要するに「砂漠」「乾燥地」という意味です。
日本語表記の「ゴビ砂漠」を正確に訳せば、「砂漠砂漠」や「乾燥砂漠」になってしまうのですね。
実は、サハラ砂漠も一緒です。
小学館『日本大百科全書』によると「サハラ」はアラビア語で、
<平坦(へいたん)な砂漠>(『日本大百科全書』より引用)
を意味するようです。
日本語の「サハラ砂漠」は厳密に言うと「平坦な砂漠砂漠」という意味になってしまうのですね。
しかし、「ゴビ」「サハラ」単体では意味がわかりません。外来語を日本語に取り込む時、言葉の性質を表す目的で、重複表現が意図して使われるケースも少なくありません。その一例と考えればいいのですね。
砂漠でおぼれ死ぬ人は少なくない
最後は、不幸にも、砂漠でおぼれてしまった人たちについて。
先ほども確認したように、砂漠は降水量が極めて低く、大地からの蒸発量が大きくて、乾燥が激しい土地を言うのでした。
その定義から考えると、砂漠でおぼれた人がたくさんいるなどと言われても信じがたいと思います。しかし、砂漠にはまれに豪雨があり、その豪雨は濁流となって地表を流れます。
その定期的に発生する濁流が、砂漠に枯れた谷(ワジ)をつくります。隊商(キャラバン)は、通り道としてそのワジを利用します。しかし、急な豪雨で濁流にのみ込まれ、不幸にもおぼれて死に至ってしまった人が過去に多数存在するようです。
デスバレー国立公園(アメリカ合衆国)のような観光客が訪れる砂漠でも、記録的な豪雨と濁流の発生で、周辺の車や宿泊施設が押し流されたというニュースが、2022年(令和4年)にあったばかり。
砂漠でおぼれ死ぬ可能性がある、砂漠観光に訪れる際には頭に入れておきたいトリビアですね。
[参考]
※ 黄砂とその健康影響について – 環境省
※ 白い砂漠 – 環境省
※ ケッペンの気候区分
※ 砂漠化する地球 -その現状と日本の役割- – 環境省
※ 砂漠化対処条約 – 外務省
※ なんと、9割が溺死…日本人が知らない砂漠地帯の「ヤバすぎる現実」 – 週刊現代
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