2013年には富士山をはじめ19件の世界遺産が新たに登録され、その総数は981件となりました。
その一方で、実は「今後もう見ることができなくなるかもしれない」と言われている世界遺産もあります。
それらは「危機遺産」と呼ばれており、主たる原因として挙げられるのは自然災害や地域紛争、都市開発、密猟。
年に一度開かれる「世界遺産委員会」にて、世界遺産の中から景観の維持や普遍的価値の継続がむずかしいと判断されたものが危機遺産リストに加えられてしまいます。
人的要因がもたらす大きな影響
危機遺産リストに登録されている世界遺産は44件。昨年、シリア内戦の影響で、古都・ダマスカスやアレッポをはじめとした同国にある世界遺産6件すべてが危機遺産として指定を受けました。
古代都市ダマスカス/シリア・アラブ共和国 © milosk50 / Shutterstock.com
古代都市アレッポ/シリア・アラブ共和国
パルミラの遺跡/シリア・アラブ共和国
また、世界遺産に登録されたために観光客が急増し、それが環境の悪化を引き起こすという問題もあります。
これにあたるのがイギリスの海商都市リヴァプールやベリーズの珊瑚礁保護区。過度な観光開発が結果的に世界遺産を危険に晒してしまうという悲しい現実があります。
海商都市リヴァプール/イギリス
ベリーズ珊瑚礁保護区/ベリーズ
地球温暖化による予備軍も!
人的要因も非常に解決困難なものですが、自然的要因として世界の観光地を脅かしているのが「地球温暖化」問題です。
いまのところ危機遺産としては指定されていませんが、その予備軍と言われている場所がいくつかあります。
水の都として人気を博すイタリアの「ヴエネツィア」もその一つ。その他、オーストラリアの「グレート・バリア・リーフ」、アフリカの「キリマンジャロ国立公園」など、知名度の高い場所が名を連ねています。
ヴェネツィア/イタリア
グレート・バリア・リーフ/オーストラリア
キリマンジャロ国立公園/タンザニア
支援による危機遺産リスト登録解除も
危機遺産に登録されると、世界遺産基金への財政的支援を申請できたり、国外から技術スタッフが派遣されたり、様々な援助を受けることが可能に。
そのため、周辺調査や保護計画の立案及び作業といったプロジェクトによって助けられた世界遺産もあります。
かつてはアメリカの「イエローストーン国立公園」やカンボジアの「アンコールワット遺跡群」、ブラジルの「イグアス国立公園」も危機遺産に登録されましたが、現在はリストから外れています。
イエローストーン国立公園/アメリカ
アンコールワット遺跡群/カンボジア
イグアス国立公園/ブラジル
世界遺産は、観光や集客のためのツールではなく、わたしたちが未来へ引き継いでいくべき大切なもの。まずは旅行先ではマナーを守る、自分なりの温暖化対策を考えてみる、といった身近なことから始めてみたいですね。