600年の歴史を誇る! プロの料理人用庖丁の国内シェアのほとんどを占める「大阪府堺市」
職人が一本ずつ手作りで仕上げる「堺打刃物」で有名な大阪府堺市。プロの料理人用庖丁は、国内シェアのほとんどを占めています。
そんな堺市の刃物の歴史は、600年前にさかのぼります。15世紀に刀工を祖とする庖丁鍛冶集団が、加賀国(現在の石川県)から堺へ移住。
16世紀になるとポルトガルから日本に鉄砲とタバコが伝来し、堺では庖丁鍛冶技術を活かした、鉄砲とタバコの葉を刻むタバコ庖丁の製造が盛んに! その伝統は現在も受け継がれています。
職人の手仕事でつくられる「打刃物」は「片刃構造」が特徴。両刃が主流の世界でも類を見ない形状で、刃は鋭角で切れ味はスパッと鮮やかです。そのため、食材の断面も美しくなめらか。刺身といったやわらかい食材も繊維や細胞膜を壊すことなく切れるため、素材の旨味を閉じ込めることができるのです。
切った食材が刃から離れやすい点も魅力。このような独自性から堺市の刃物は、経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」に指定されています。
堺市の刃物について詳しく知りたいのなら、「堺刃物ミュージアム CUT」を訪れるのがおすすめ。堺の刃物の歴史や製造方法、つくる道具などを実物、模型、イラストでわかりやすく展示しています。
1階の「TAKUMI SHOP[包丁・砥石]」には、家庭用からプロ様までさまざまな包丁が勢ぞろい。スタッフが最高の1本を選ぶのをサポートしてくれますよ。
さらに堺市には、日本で唯一、鋏の伝統工芸士に指定されている平川康弘氏が営む鋏工房も! 事前予約をすれば工房見学も可能で、轟音と火花が飛び散る迫力ある鍛造作業が見られるかもしれません。
関鍛冶の刀祖“元重”と“金重”がこの地に移り住んだのがはじまりの「岐阜県関市」
700余年、刃物の伝統を誇る岐阜県関市。同市に刀鍛冶が誕生したのは、鎌倉時代のことです。関鍛冶の刀祖とされる「元重」と「金重」がこの地に移り住み、刀鍛冶をはじめたとされています。
この地は、良質の焼刃土と炉に使う松炭、長良川と津保川の良質な水など、理想的な風土条件を備えていたのです。そのため、いつの間には多くの刀匠が集結。室町時代には刀匠が300人超となり、「折れず、曲がらず、よく切れる」といわれた関の刀は、その名を全国に轟かせるように。
関の刀は「五箇伝(大和・山城・備前・相州・美濃)」のうちのひとつ「美濃伝」の流れを汲む「関伝」と呼ばれ、数々の名刀を生み出したのです。
「関の孫六」で知られる「二代目兼元」と「和泉守兼定」が特に関の刃を有名にしました。兼元(孫六)は、独特の鍛刀法(四方詰め)により頑丈な刀をつくり、その刃文は「三本杉」として有名に!
このように生まれた技法とモノづくりの精神が、関の刃物には受け継がれています。今や国内のみならず、世界にも知られる存在になっているのです。
そんな関市の秋を彩るイベントが、1968年にはじまった「岐阜県関市刃物まつり」。このお祭りの一番の見どころは、市内刃物メーカー、卸売業者40社以上が出店する「刃物大廉売市」です。
包丁やはさみ、爪切り、ナイフといった高品質な「関の刃物」をお値打ち価格で購入できます。
また、市内だけではなく全国のナイフメーカーが展示・販売する「関アウトドアズナイフショー」も見逃せません。多彩なナイフがそろっていますよ。
さらに、刀匠による火花飛び散る古式日本刀鍛錬実演のほか、居合切り・抜刀術の実演、包丁研ぎ、刃物検定なども開催。一度は訪れてみたいですね。
鍛冶職人から技術を学べる道場も! “金物の町”として知られる「新潟県燕三条(燕市・三条市)」
三条鍛冶は、1625から3年間を代官所奉行として三条に在城した大谷清兵衛が河川の氾濫に苦しむ農民を救済するため、江戸から釘鍛冶職人を招いて、農家の副業として和釘の製造法を指導・奨励したのがはじまりといわれています。
当時は農家の副業でしたが、1649年頃になると若干の鍛冶専業が登場。そして、1661年に会津方面から鋸(のこぎり)、鉈(なた)などの新しい製造法が伝わると、製品も釘から鎌、鋸、包丁へと広がり、徐々に専業鍛冶が増えていきました。
専業鍛冶の増加に伴い、おのずと金物を取り扱う商人が出てきて、やがて金物専門の商人が生まれ、県外へと商圏を広げていったのです。
現在は、その伝統を受け継ぐ作業工具、キッチン用品、大工道具、測定器具、園芸用品、アウトドア用品といった金属加工を中心とした「金属産業都市・三条」へと発展しています。
このように「金物の町」として知られる三条市と燕市ですが、燕三条エリアには製造現場の見学や、モノづくりの技術を実際に体験できるスポットが盛りだくさん!
1926年から刃物を作り続ける諏訪田製作所は、美しいフォルムの「SUWADAの爪切り」で有名です。原料の選定から仕上げまで、すべて職人が手作業で行っている様子を見学できます。工場に隣接するショップでは、ここでしか手に入らない限定品も販売。
また、ステンレスの「切れる庖丁」を追求し続けている包丁メーカー藤次郎のオープンファクトリーは、ガラスなどの仕切りがなく、工場の匂いや空気を直接、感じることができます。隣接する藤次郎ナイフギャラリーも必見です。約600種類もの自社製品を展示販売していますよ。
鍛冶職人からマンツーマンで技術を学びたいのなら「三条鍛冶道場」へ。神社仏閣などに使われる伝統の「和釘」づくりをはじめ、鍛冶仕事をベテランの鍛冶職人に教えてもらえるという貴重な体験ができます。
新潟県三条市
[参考]
堺観光ガイド
刃物まつり
三条市
にいがた観光ナビ|公益社団法人 新潟県観光協会
[A photo by Shutterstock.com]