食べることが人生をつくる
TABIZINE編集部の山口です。
先月、山梨県北杜市の美酒と美食のペアリングを味わう、スペシャルフルコース「YAMANASHI GASTRONOMY」という一日限りのイベントに参加しました。場所は「Terroir 愛と胃袋」。昔の宿場町だった場所にある、大きな古民家を改装したセンスあふれるレストランです。
「Terroir 愛と胃袋」鈴木シェフを中心とした北杜エリアの仏・伊・和・中のシェフとソムリエが集まり、1日限りのとんでもなくスペシャルなフルコースが生まれました。
一皿一皿にぎゅっと詰まった物語がある。それは、この土地の水と土が育む恵み、人々のおもてなしの想いや自然への敬意、様々な手間ひまの物語でもあります。
料理と語り合うように、その香りと味わいをかみしめ、命の勢いをいただくひとときに、「ああ、食べることが人生をつくっていくのだなあ」としみじみ感じました。
丁寧につくられたものを食べると、自分自身の人生も丁寧に生きないといけないなと思うのです。
アミューズ
汲み出し豆腐 発酵大豆ソース(HUKU笑i)
水の恵みを感じる味わい。やさしく染み渡り体をととのえてくれる。
香茸クロケット(Terroir 愛と胃袋)
巨大な水滴のような器に露のように盛られたソースが斬新。生命力を感じる香り。
紅しぐれ大根の唐揚げ(秀よし)
大根の唐揚げ大好きなんです。こんなところで出会えるとは。
生ハムスプレッドのクロスティーニ(Morimoto)
ぎゅぎゅっと詰まった肉の旨味と焦げ目の香ばしさが合います。
アミューズ4品は、八ヶ岳タッチダウンのビール「HOKUTO Japanese pilsner」とともにいただきました。
前菜ー冷菜
八ヶ岳生ハム3種盛り <12カ月熟成、24カ月熟成、野生猪肉60カ月熟成>(Morimoto)
+city farm シャルドネ 2022
今回筆者がイベント後にふとした瞬間思い出す一皿がこちら。12カ月熟成の生ハムは羽衣のような繊細さ。目を閉じて味わいたくなる、とろけるような肉の食感、力強い風味、夢に出てきそうなほどです。
熟成ってすごい。
コロンと一つ添えられた丸いシャリにどの生ハムを合わせるか迷ったのですが、刺身は新鮮なものだからと、一番熟成の浅い12カ月熟成の生ハムを巻いてみました。お米一粒一粒の存在をしっかり感じる! そしてそこに絶妙なバランスで絡みつく生ハムの塩味と脂の存在感。冷たいお米をこんなにおいしいと感じたのは生まれて初めてです。至福です。
前菜-温菜
八ヶ岳湧水鱒の真薯 白肌ごぼう煎餅添え(秀よし)
+武の井 純米吟醸 ひとごこち
ごぼうの筒の中に八ヶ岳の清流で獲れたマスをすり潰したペーストが詰められている技ありの一品。ごぼうは土から生まれてきたという感じがすごく伝わってくる食べものだと思う。だから洗練された風貌の一皿でも、懐かしい気持ちになります。
スープ
甲州地どりの蒸しスープ(HUKU笑i)
+シャトー・シャルマン セミヨン釜無 2000
まるでピカピカの泥団子のような不思議な物体。どうやって食べるの? と思っていたら……
すべての旨味がスープに溶け出したらきっとこんな味になるんだろう、と思わせる旨味の玉手箱でした。
魚料理
陸作信玄えび ブイヤベースソース(Terroir 愛と胃袋)
+GRACE WINE ロゼ 2021
美しすぎて、料理というより別の生き物。
飯
八幡芋の台湾式おこわ(HUKU笑i)
+武の井 純米焼酎 長期樫樽熟成 八ヶ岳の舞
スープに続きこちらも扉を開ける喜びと驚きに満ちた一皿。笑みが溢れる。
肉料理
ジビエ<鹿、猪、野鳥>のトゥルト 赤ワインソース(Terroir 愛と胃袋)
+アケノヴェニュス カベルネ・ソーヴィニオン 2020
何かを暗示するような盛り付けのジビエは、生命の躍動をそのまま閉じ込めたような一皿。こちらもふとした瞬間、脳裏に焼き付いて離れないビジュアルとともに、思い出します。
勢いのある命をいただくということは、いただく側もちゃんと立っていないと、受け止められない。そう感じた印象的なメインでした。
デザート
柚子プリン 柚子ピール甘露煮(秀よし)
+七賢 山の霞
柚子のデザートというと、爽やかな酸味と甘味が主役に思いがちですが、こちらは柚子皮とカラメルの苦味が主役だと感じた一皿。いい意味で予想を裏切られるとうれしくなります。
ミニャルディーズ
どんぐりフィナンシェなど(Terroir 愛と胃袋)
森からの贈り物のようなお菓子たち。
ペアリングのお酒
どのお酒も素晴らしかった! 筆者が日本酒好きということもあり、その後お正月用に2本購入したのは「武の井 純米吟醸 ひとごこち」。透明なみずみずしい飲み口でするするいけちゃう困った日本酒です。
一生忘れられない「おいしい時間」の思い出をつくる
美酒美食というと、なんだか高尚な場であるイメージが湧きます。お酒に詳しくないとダメなんじゃないかとか、一口食べて多くの言葉があふれるようでないといけないんじゃないかとか、素材や調理法や美食界の有名人を知っていないと恥ずかしいんじゃないかとか。
でもきっと本質は、大切な人と「おいしい時間」を楽しむ。そこに尽きるのかなと思います。
ああ、あのときのあの料理、本当においしかったなあ。楽しくていい時間だったなあ。そんな風に、何年経っても思い出して幸せな気持ちになるような食の思い出。あの料理をまた食べたい。その気持ちが、もう一度その場所を訪れる原動力になる。
そんな、一生忘れられない「おいしい時間」の傍らには、美酒美食があるのではないかと。
気になった一皿があったら、ぜひお店も訪ねてみてください。そして人生に、旅心を。
Terroir 愛と胃袋 鈴木信作シェフ
https://aitoibukuro.com
秀よし 櫻井秀義シェフ
https://kobuchizawa.net/hideyoshi/
HUKU笑i 羽田野博司シェフ
hukuwarai_chineserestaurant
Morimoto 森本慎治シェフ
https://morimoto-mt8.com
ソムリエ booshino 鈴木忍さん
booshino_vins_et_plus
[All Photos by Aya Yamaguchi]
TABIZINE Editor's Blog
「人生に旅心を」
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