ODAを通じたベトナム支援
日本企業の進出先として、ベトナムは極めて重要な国になりました。近年は米中対立や台湾情勢なども影響し、日本にとって中国が最大の貿易相手国という事実は変わらない一方で、工場をベトナムに移転したり、調達先を変更する日本企業もみられます。
そして、ベトナムは世界の中でも親日的な国として有名です。では、なぜベトナムは親日的と言えるのでしょうか? いくつか理由がありますが、ここでは3つ紹介しましょう。
まず、長年日本はODA(政府開発援助)を通じてベトナムを支援してきました。支援の範囲も政治や経済だけでなく、社会や医療、教育など多分野に及び、それらがベトナムの経済成長を後押しすることになりました。そういった人と人の交流を通じ、ベトナム社会では徐々に日本への親近感が増大していったと考えられます。
日本経済を支えるベトナム
2つ目は、冒頭でも触れましたが、今日、ベトナムには日本経済を支えるほど多くの日本企業が進出しています。つまり、それだけ多くのベトナム人が現地で日本企業に勤務しているということです。
外務省の海外進出日系企業拠点数調査(2021年)によると、ベトナムは中国、米国、タイ、インドに次ぐ5位となっています。そして、米中対立や台湾情勢など中国を取り巻く世界情勢で懸念が高まる中、日本企業の中には中国からベトナムにシフトしようとする動きが増えているように感じますし、ベトナムの重要性は地政学的な視点からも増すばかりです。今後、日本企業にとって、ベトナムの価値は戦略的にいっそう高まるでしょう。
ともに抱える領有権問題
そして、3つ目が政治的な背景です。日本は中国との間で半導体製造装置の輸出規制、尖閣諸島など多くの問題を抱えていますが、実はベトナムも同じように、中国と南シナ海の西沙諸島の領有権を巡って争っているのです。
また、過去には南シナ海でベトナム漁船が中国船に攻撃され沈没するといった事件も起きており、ベトナム市民の対中国感情は決していいとは言えません。中国と問題を争っているという立ち位置は日本とベトナムも同じであり、そういった政治的事情が日本とベトナムの結束につながっているともいえます。
いずれにせよ、歴史的、経済的、そして政治的視点からも、ベトナムには親日的になる事情があるといえるのです。今後、それはさらに強まることが予想されます。
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