2023年9月24日まで「和のあかり×百段階段」
1935(昭和10)年に建てられた、現存する唯一の木造建築である文化財「百段階段」。趣の異なる7つの宴会会場を99段の階段廊下がつなぐ空間で、年に5~6回企画展が開催されています。
2023年7月1日(土)〜2023年9月24日(日)に開催されている「和のあかり×百段階段2023~極彩色の百鬼夜行~」。8回目を迎えた今夏は「~極彩色の百鬼夜行~」をテーマに和のあかりや伝統文化を色艶やかに展示、見えざるものと出会う異界へと続く物語が描かれています。
昨年に続き、音楽家ヨダタケシさんによってオリジナルBGM(全8曲)も創作。手を触れずに演奏する電子楽器「テルミン」の揺らぐ音色と、片山千穂さんの歌声が一層世界観に深みを出しており、耳でも楽しませてくれています。
百鬼夜行へのプロムナード
3階でエレベーターを降りたら、「夏の夕暮れ」をテーマに百鬼夜行の物語はスタート。壁と天井には、江戸風鈴と小田原の相模鋳物がいっぱいに飾られ、ガラスと鋳物の涼やかな音が無数に鳴り響き、何が起こるのか胸が高鳴ります!
入口には、江戸時代から伝わる「名古屋ちょうちん」と、山口県柳井市の民芸品「柳谷金魚ちょうちん」も。これから訪れる7つの各間は、順番に訪れることで世界観に一層入りこめます。部屋を飛ばさず、一部屋ずつ巡りましょう。
異界へと続く道・十畝の間
「異界へと続く道」をテーマにした「十畝の間」。一葉式いけ花第4代家元粕谷尚弘さんの作品世界に、まず圧倒……。稲荷神社のように木の門が奥へと連なり、吸い込まれている感覚になります。門にはさまざまな草花が絡み、トロピカルな花が異世界感があり、少し不気味で美しい光景です。
床面は鏡のようにすべての風景を映し、日本の着物や浴衣など和柄模様の「籠染灯籠」の陰影が伸びて異界への道を標しています。
鬼の住処・漁樵の間
日本画や彫刻に囲まれ、純金で仕上げられた「漁樵の間」は、「鬼の住処」をテーマに、ペットボトルアーティスト本間ますみさんの作品群が燃えるような紅に染まっています。ペットボトルで創作した大きな水晶や孔雀などの作品と部屋の豪華絢爛な共演。
和太鼓と民族的なコーラスが重なる音楽をBGMに、全体が迫力満点。一体鬼はどこにいるのだろうか……。
見つけたときのゾッとする感覚は、幼少期に触れた日本昔話の恐怖感さながら!
異世界の四季・草丘の間
四季の風景を描いた「草丘の間」では、歌舞伎や舞台演劇など舞台衣裳を中心に「異界の四季(歌舞伎に観る四季)」を表現。
部屋の中央には、七夕飾り作家桜井駿さんが創作した、龍や鳳凰を描いた巨大な七夕飾り。
床の間では、造形作家人形師よねやまりゅうさんの異形の動物たちが無言の圧力で鎮座……。
藤棚の下は、藤の精霊が登場する歌舞伎女形の舞踊『藤娘』の世界。歌舞伎や精霊の世界に没入したようなリアリティを体感できます。
白き狐の世界・静水の間
「白き狐の世界」をテーマに、歌舞伎演目『義経千本桜』の場面や、特殊技法で染めた藍染花や、漉き紙で創作した下弦の月など夢幻的な作品が、夜の草花の部屋に溶け込んでいます。
源義経の家臣・佐藤忠信に化けて、両親の皮で作られた「初音の鼓」を持つ静御前のお供をする白狐(源九郎狐)の物語『義経千本桜』。展示のススキと頭上のススキ画に囲まれて、親と死別した狐の哀愁を誘う空間。
狐とは反対に、小さな妖怪たちが集う陶芸作品は今にも動き出しそうなほどにぎやか!
水が紡ぐ詩・星光の間
「水が紡ぐ詩」がテーマの「星光の間」。繊細なカットが美しい「江戸切子」や「吹き硝子」、 優しい色合いの「津軽びいどろ」、海のように輝く「琉球ガラス」と、光の粒や水の波紋のようなガラス作品。黒髪の人魚をイメージした歌声の音楽に誘われて、キラキラと反射する水の底へ引き込まれているような気分に。
対岸の現世・清方の間
闇夜から水の底を通ったら「対岸の現世」をテーマにした、妖怪と現世の“境”を思わせる懐かしの風景へ。木や植物には生命のように小さなあかりを灯し、1点ずつじっくり見てほしいほど愛おしいあかりです。
一際目を惹くのは、かんざし作家榮さんの妖艶に輝く青い彼岸花。
倉敷切子灯篭をモチーフにした「希莉光あかり」(写真)、和傘をアレンジした「和傘あんどん」、精密に設計された「組子細工」など、日本の伝統文化と技がいろいろな光と影を生みだしています。
なお、「清方の間」の“欄間と天井の絵画”は著作権の都合上撮影不可。本企画展の展示作品は撮影可能です。
神々の園・頂上の間
最後の「頂上の間」は「神々の園」をテーマに、植物や花をモチーフにしたランプが集まって、華々しく曼荼羅を描いています。琵琶やチベットのベルなど、さまざまな楽器を奏でる音楽で神仏の世界観を表現。
他にも、水引で創作された黄金の龍、間伐材を再活用した日本の神々のお面、日本最古のだるまのひとつと云う「越谷張子だるま」といった、厄除け・開運を願う縁起のいい作品も展示。夢現の物語の最後にふさわしい、未来への願いと祈りのお部屋です。
物販で現世へ着地
会場の通路には、切り絵加工の「にしきごい」がゆらゆら空を泳いでいたり、新潟県の長岡花火をモチーフにした「かみはなび」を展示していたりと、至る所が見どころ。
物販エリアには、風鈴や妖怪の本など、会場で見かけた作品も数多く販売されているので、現世に戻ってきた記念のお土産にもぴったり。
夏の連動企画
最後に、本企画展との連動企画にもふれておきます。
和のあかりルーム
2023年7月1日(土)~9月23日(土)の期間限定のコンセプトルーム「1日1室限定・和のあかりルーム」(1室2名10万3,500円~/税サ込・宿泊税別)。本企画展の「十畝の間」でも展示された「籠染灯籠」や漉き紙のあかりに包まれる贅沢な宿泊が叶います。
本企画展の入場券と、企画展限定オリジナルアロマや「鬼灯」のあかりのグッズが付いています。エグゼクティブラウンジ「桜花」も利用できるうえ、朝食も付いていて、1日中過ごしたくなるプラン。
公式サイト:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/stay/plan
8月末まで!夏のビアテラス
Cafe&Bar「結庵」では、2023年7月1日(土)~8月31日(木)の期間は「和のあかり×ビアテラス」を開催中。アルコールやジュースなどドリンク類を90分間フリーフロー(税込3,850円/サ別)で楽しめます。会場にも飾られていた金魚ちょうちんや狐のお面がテラス席に登場し、お祭り気分も高めてくれます。
公式サイト:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/archives/74507
五感で浸る夏の涼を
“昭和の竜宮城”と呼ばれるほど、豪華で煌びやかな「ホテル雅叙園東京」。1年中おでかけスポットとして立ち寄れて、大人だけでなく、和装デートをする若者たちが多いのもうれしい光景。妖怪たちに誘われて、優美な夏の夢を体感してほしいものです。
開催期間:2023年7月1日(土)~2023年9月24日(日)
会期中無休
開催時間:11:00~18:00(最終入館17:30)
*8月19日は17:00まで(最終入館16:30)
入場チケット代(税込):大人1,500円・学生800円(オンライン販売・当日販売)
※要学生証呈示・未就学児無料
問合せ(イベント企画10:00〜18:00):03-5434-3140
会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化「百段階段」
住所:東京都目黒区下目黒1-8-1
交通:「目黒駅」から徒歩約3分
公式イベントサイト:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/wanoakari2023
公式サイト:https://www.hotelgajoen-tokyo.com/
[all photos by kurisencho]