奇跡的に倒壊を免れたとされる世界平和のシンボル「原爆ドーム」
原爆ドームは広島県の物産の促進を図り、産業の発展に貢献する目的で、1915年4月に建設された広島県物産陳列館です。中国山地から広島湾へ流れる太田川が形成したデルタ(太田川と元安川の分岐する地点)が建設場所に選ばれ、その河岸約2,310平方メートルを埋め立てたほか、旧広島藩の米倉と民有地を整地し、全体で約3,200平方メートルを敷地としたといわれています。
チェコの建築家ヤン・レツルが設計した建物は、煉瓦と鉄筋コンクリートでつくられた3階建て、建築面積は約1,002平方メートル。正面中央部分は5階建ての階段室で、その上に楕円形のドームが載せられており、一部には地階もありました。屋根のドーム部分は銅板葺、そのほかはスレート葺で、ドーム先端までの高さは約25mでした。さらに噴水池のある洋風庭園や、あずまやを設置した和風庭園も整備されていました。
©️Everett Collection / Shutterstock.com
1945年8月6日、世界で初めて原子爆弾が投下されたその日。原爆の爆心地から北西約160mの至近距離に位置していた原爆ドームは、熱線と爆風を浴びて大破、全焼。しかし、爆風が上方(爆発点:高度約580m)からほとんど垂直に働いたため、耐力の弱い屋根を中心につぶされ、壁の厚い建物の中心部は奇跡的に倒壊を免れたと考えられています。
建物の頂上天蓋の残骸が傘状になっている姿から、いつしか市民の間で「原爆ドーム」と呼ばれるようになったそうです。
そして、1996年に時代を越えて核兵器の廃絶や恒常的な世界平和の大切さを訴える力強いシンボルとして、世界文化遺産に登録されました。
見どころは?
2021年に5回目の保存工事が完了した原爆ドーム。米軍が被爆後に撮影したカラー写真を参考に、ドーム部分の鋼材がピンクから焦げ茶色に塗り直されました。原爆ドーム内部に立ち入ることはできませんが、柵の外からは見学可能です。間近で崩れ落ちた外壁やむき出しの鉄骨を見ると、原爆の恐ろしさをひしひしと感じますよ。
その後、近くに架かる元安橋や相生橋の上や、元安川の対岸、複合商業施設「おりづるタワー」へ。異なる場所から原爆ドームを眺めるとまた違った趣があります。
なお、WEBサイト「Hiroshima Peace Tourism(広島ピースツーリズム)」では、原爆ドーム内部を360°で見ることができるARを掲載。スマートフォン片手に原爆ドームの周辺を歩くのもおすすめです。
また、原爆ドームのある平和記念公園内の「広島平和記念資料館」もぜひ訪れたいスポット。被爆者の遺品や被爆の惨状を示す写真や資料の収集・展示のほか、広島の被爆前後の歩みや核時代の状況を紹介しています。原爆投下後の広島の悲惨さを目の当たりにしてショックを受けるかもしれませんが、当時に思いを馳せ、戦争と平和について改めて考えさせられますよ。
同じく平和記念公園の「原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)」も見どころのひとつ。1952年に建立されました。原爆犠牲者の霊を雨露から守りたいという想いから、屋根の部分がはにわの家型をしているのが特徴です。碑の内部には石室があり、原子爆弾により死亡し、氏名が判明した方々の名前を記帳した原爆死没者名簿が納められています。
そのほか、1964年8月1日に点火されて以来ずっと燃え続けている「平和の灯(ともしび)」、核兵器と戦争のない世界の達成を目指し、その精神文化運動のシンボルとして設立された「平和の鐘」、3本の鉄柱がそれぞれ60度ずつひとひねりした塔上に、球体の三方を向いた時計がのった「平和の時計塔」など、同公園内だけでも多数の見どころがあります。
原爆ドームへの行き方
JR「広島駅」から路面電車で約20分「原爆ドーム前」下車徒歩1分
JR「広島駅」新幹線口から広島市内循環バスで約11分「原爆ドーム前バス停」下車徒歩1分
JR「広島駅」南口から路線バスで約10分「原爆ドーム前バス停」下車徒歩1分
JR「広島駅」南口から路線バスで約10分「紙屋町バス停」下車徒歩約10分
広島空港から空港リムジンバス広島バスセンター行きで約55分「広島バスセンター」下車徒歩約5分
住所:広島県広島市中区大手町1-10
電話:082-242-7831
公式サイト:https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/atomicbomb-peace/163434.html
展望台から2つの世界遺産が望める広島の新名所「おりづるタワー」
原爆ドームの東隣に位置する複合施設「おりづるタワー」もあわせて訪れたい場所。広島を代表する銘品や話題の商品や新商品、地元で愛されているお土産などがそろう物産館、広島や瀬戸内の味にこだわったメニューが豊富な「握手カフェ」、専用の折紙で折ったおりづるを投入できる「おりづるの壁」、そして、平和記念公園と原爆ドーム、晴れた日には宮島の弥山まで、広島の2つの世界遺産を同時に望める屋上展望台「ひろしまの丘」があります。
屋上展望台は周囲がメッシュで覆われたウッドデッキの展望スペースで、風がそのまま通り抜ける設計になっていて心地良いです。テイクアウト専用のカフェも常設していて、景色を眺めながら軽食やドリンクを楽しむこともできます。
さて、広島にはおいしい食べ物がいっぱいあります。カキやあなご飯といった瀬戸内海の魚介も魅力的ですが、やはり「お好み焼き」は外せません。広島のお好み焼は、小麦粉の生地を薄くのばし、キャベツや豚肉、焼きそばなどを山盛りにし、薄く焼いた卵などを重ねて蒸し焼きにします。ソースは濃厚な甘口のものを使うのが一般的で、マヨネーズをかけることも。地元では飲んだ後の〆としても愛されているそうです。広島はお好み焼き店の登録店舗数が全国1位! ぜひ気になるお好み焼き屋を訪れてみてくださいね。
住所:広島県広島市中区大手町1-2-1
電話:082-569-6803
展望台・物産館の営業時間:10:00~18:00
休館日:12月31日
展望台入場料:大人2,200円、中・高生1,400円、小学生900円、幼児(4歳以上)600円
おりづる投入料:100円
交通アクセス:JR「広島駅」から広島電鉄(宮島線・江波線)で「原爆ドーム前駅」下車、徒歩すぐ
公式サイト:https://www.orizurutower.jp/
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