久慈川沿いに広がる田園風景の中を走る水郡線
久慈川に沿うようにして走る水郡線の沿線。田園風景と絶景地を訪ねました。旅の途中で立ち寄った「常陸大子駅(ひたちだいごえき)」周辺は、昔ながらの旅館や古民家カフェなど、個性的なお店が集まっていて、何度も通いたくなる町です。
時間旅行を楽しめる古民家カフェ
“しばし時間旅行をお楽しみください……”
ホッとするひとことが書かれていたのは、古民家をリノベーションした「daigo café(ダイゴカフェ)」さんにあったメニューでした。「daigo café」は、常陸大子駅近くにあり、水戸駅から水郡線に乗ると、約80分で到着します。それは、休憩をしたくなる、ちょうど良い距離と時間です。
ガラス戸をゆっくり開けて店内に入ると、落ち着いた空間が広がっていました。誰もいないのかと中を見渡すと、男性が1人静かに座って腕組みをしています。店内の心地よい音楽に、考え事をする文豪のように見えました。どこの席に座ろうか、うろうろする私に、男性は全く動じる様子もなく、コーヒーカップが置かれたテーブルの前で目を瞑っていました。
カフェの中には、昭和レトロな家具や、面白そうな本が並んでいます。どこの席がいいか少し迷いながら腰掛けました。メニューには、こだわりの食材が使われたお料理の紹介が産地も含め、丁寧に書かれています。
選んだのは、珍しい「カミアカリ」という巨大胚芽玄米と、「手ごねハンバーグ」です。ハンバーグは特製デミグラスソースで煮込まれていました。サラダに少し添えられていたリンゴチップも、お料理にもとても合うのです。
デザートは、奥久慈のりんご屋さんで作られたアップルパイです。大きなリンゴが、ゴロゴロに入ってはみ出すほど。飲み物は、奥久慈にある「高見園」さんの、香り高い紅茶です。
選んだお料理は、大満足の”奥久慈満腹セット”となりました。静かで、落ち着いた音楽が、ちょうど良い音量で掛かっており、なんとも居心地の良い空間でした。
住所:茨城県久慈郡大子町大子688
久慈川を渡りながら進む水郡線
水郡線は、「奥久慈清流ライン」という愛称がついていて、久慈川に沿って列車は走ります。橋梁は「第11久慈川橋梁」まであるので、久慈川を11回も渡るのです。橋梁を渡る音を何度も楽しめるのも、魅力のひとつです。
大子町で八溝川と合流する久慈川。支流の滝川には、日本三名瀑のひとつ「袋田の滝」もあります。
田園風景とりんご畑の広がる水郡線
水郡線沿線は、田園風景が広がる場所も多く、秋になると、辺り一面が黄金色になります。
稲刈が終わると、刈った稲を天日干しする「はざかけ」が多く見られます。ちょうど地域一斉に稲刈を始めた時は、手際良く稲を干していく作業があまりにも見事で、見入ってしまいました。
田園風景に混じって多く見られるのが、りんご畑です。秋はリンゴも赤くなる季節です。沿線では、色づいた可愛いりんごの木をたくさん見かけます。
三勝八景の矢祭山公園でお手軽絶景地
水郡線が茨城県を超えて福島県に入ると、矢祭山公園駅に到着します。駅の目の前には、雄大な景勝地として有名な矢祭山公園があり、ハイキングコースが続いています。
ハイキングや野鳥観察にも人気がありますが、園内には水郡線が見える絶景ポイントもあります。少し高い場所ですが、駅から10分弱で行ける手軽な場所で、四季折々の絶景の中を走る列車を見渡すことができるのです。
季節が変わるごとに、桜の中、新緑の中、つつじの中を列車が走ります。
住所:福島県東白川郡矢祭町大字内川字矢祭
元祖「しゃも弁当」を食べに行く
「常陸大子の駅で『しゃも弁当』を食べなきゃいかんですよ。駅前にC12型蒸気機関車もあるから見てきなさい」
鉄道と駅弁が好きな叔父からのひとことでした。早速、常陸大子駅前にある玉屋旅館に事前に電話で予約注文したのが、「しゃも弁当」との出逢いでした。それからは、水郡線に行く時には欠かさず寄ることにしています。
まずは、紙製の3色の紐が十文字に括られているところが、駅弁らしくて大好きです。きゅっと、しっかり縛られた紙製の紐をほどく時に、ワクワクします。
C12型蒸気機関車の前で、叔父の教え通りに「しゃも弁当」をいただきました。“もも肉”と“むね肉”の両方が入っていて、噛めば噛むほどおいしい鶏肉です。鶏肉の下には炒り卵が入っているのですが、炒り卵だけでも、もっと食べたいほど。
玉屋旅館は、宿泊はもちろん、店内で「しゃも弁当」を食べることもできます。店内では、鮎の塩焼きも食べられるので、時期によっては店内で食べることにしています。
住所:茨城県久慈郡大子町大子718
水郡線は、四季折々の季節を楽しめる路線です。水郡線に乗って旅をするなら、常陸大子駅で途中下車して町歩きするのも、旅の小休止にはちょうどいいかもしれません。
[All photos by Hiromi Ito]
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