都会の狭間の異空間「星のや東京」
TABIZINE編集部の山口です。
一体、ここはどこなんだろう。まるで異世界から東京をのぞいている気分。それが、星のや東京に宿泊して感じたことです。
過ごすほどに、呼吸が深くなる。どこでもない、都会の狭間の異空間。
窓から景色を眺めていると、「ここは外の喧騒とは全く別の時間が流れているんだ」という、時が止まってしまったような不思議な感覚になります。非日常というステレオタイプの言葉に当てはめてしまうにはもったいない、唯一無二の浮遊感です。
そしてそれは、「塔の日本旅館」というコンセプトであるこの建物に張られた、数々の結界によって成り立っていると感じました。まるで静謐なダンジョンのように……。
【第一の結界】靴を脱ぎ香の調べを聞くエントランス
一枚板の荘厳なヒバの木の扉が開くと、靴を脱いであがる畳の空間が広がっています。開放的な天井と、雅な香の調べ。それでもどこか秘密めいた雰囲気で満ちているのは、空間の細長さにあるように感じました。
一瞬で外の賑やかさとは切り離されつつも、緊張せずにいられるのは、靴を脱ぐことで自宅のようにくつろげる場所だと安心できるからかもしれません。
【第二の結界】ロビーで雅楽に整えられる
チェックインの時間やディナーの後、ロビーでは雅楽の生演奏が楽しめます。笙の音の美しさが体の隅々まで浄化してくれるよう。音による禊を済ませて、客室へ向かいます。
【第三の結界】麻の葉くずしの江戸小紋
「麻の葉くずし」の江戸小紋で覆われている、星のや東京の外装。遠くからは無地に見える粋なデザインでありながら、外から中を見えにくくする役割もあります。
内側から見る「麻の葉くずし」の紋様は、まさに結界。部屋でくつろいでいるときに、正面のオフィスビルの人々の様子を眺めていると、星のや東京にいる自分との空気感が違いすぎて、異世界から東京をのぞいているような気分になりました。いい意味でよそ者になったような、自分だけ透明人間になったような。
【第四の結界】お茶の間ラウンジ
24時間無料でお茶やお菓子を楽しめるお茶の間ラウンジもまた、静謐です。フロアごとに設置され、1フロア6室しかないので、滞在中、筆者は誰かと鉢合わせすることがありませんでした。このお茶の間ラウンジがあることで、小腹が空いたからホテルの外にちょっと買い物、ということも必要ないため、ある意味外と内を隔てる結界となっています。
カウンターの本棚に、TABIZINEの著書「いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日」を発見! この瞬間だけ、ちょっと日常に戻ったような気持ちになりました(笑)。
【第五の結界】地層空間で宇宙をのぞくレストラン
地下一階にあるレストランは、地層のように塗られた重厚な壁が時空を超える食の旅に誘ってくれます。
ここでは、フレンチの技法で日本のさまざまな土地固有の食材が際立つコース料理に昇華させたNipponキュイジーヌがいただけます。お料理の斬新さとペアリングが素晴らしく、4時間以上もかけて食事を楽しんでいたことに全く気づきませんでした。
油滴天目の器も吸い込まれそうなほど美しく、宇宙を垣間見るようなひととき。まさに時空を超えた空間です……。
【第六の結界】密やかに空とつながる天然温泉
そして星のや東京は、地下1,500mから湧く天然温泉も楽しめるんです。洞窟のような内風呂からつながる、密やかに空とつながる露天風呂。湯船に浸かりながら見上げる、切り取られた東京の空は、結界の内側からのぞく外の世界です。
ここ大手町はその昔海だったそうで、「大手町温泉」は塩分が強く、地中深くに閉じ込められた海水や海藻のミネラル類を多く含んでいます。
星のや東京は、大都会に出現した“静謐なダンジョン”
日常を切り離す多くの結界を内包する星のや東京。筆者の印象を一言でまとめると、ここは、“静謐なダンジョン”です。隅々まで明るく照らしすぎない、古来から日本の美意識にある、闇や影の中に美を見出す感性が呼び覚まされるようでした。
どこでもない場所で、誰でもない自分になれる。そう感じられる時間がここ「星のや東京」にはあります。
住所:東京都千代田区大手町1-9-1
電話:050-3134-8091(星のや総合予約)
料金:1室1泊112,000円~(2名1室利用時、サービス料・税込、食事別)
アクセス:JR東京駅丸の内北口から徒歩約10分
>>アメニティ・設備はこちら
公式サイト:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyatokyo/
[Photos by 星のや東京 , Aya Yamaguchi]