複数都市の見どころを効率よく回る海外周遊ツアー
複数の都市に点在するいくつもの見どころを効率よく回れる海外周遊ツアー。世界遺産やお城、美術館、自然など、さまざまなテーマのツアーがあります。今回は、海外周遊ツアーに参加中、予定やホテルの変更があった場合のトラブルについて、アディーレ法律事務所の佳山亮子弁護士が解説します。
悪天候で予定が変更になった場合の補償は?
A. 楽しみにしていた旅行の予定が悪天候で変更になってしまったのは、とても残念なことですが、旅行会社が予定の変更による金銭的補償をしてくれることはありません。悪天候の場合の予定変更は不可抗力であり、旅行会社に過失が認められないからです。
ただし、海外旅行保険に加入していれば、金銭的補償を受けられる可能性はあります。
海外旅行保険にはさまざまな特約があり、その中のひとつに「旅行費用変更補償特約」という特約があります。海外旅行の予定を変更しなければならないときに補償が受けられる海外旅行保険の特約です。
「旅行費用変更補償特約」では、渡航先が地震や噴火などの天候の悪化により、やむを得ず旅行の予定を変更した場合に補償を受けることができます。よって、上記特約を締結していた場合は、ルーブル美術館見学をできなった分の金銭的補償を受けられる可能性はあります。
もっとも、保険会社によって補償を受けられる条件は異なりますので、海外旅行保険に加入する際には補償内容をよく確認するようにしましょう。
また、せっかく楽しみにしていた海外旅行へはぜひとも行きたいものですが、病気やけが、あるいは災害など、どうしても旅行をキャンセルしなければならないときもあるでしょう。
海外旅行保険の旅行費用変更補償特約では、やむを得ない事情での旅行の変更にも補償を受けられるので、もしものときにも安心です。海外旅行保険への加入を検討する際には、旅行費用変更補償特約も選択肢として覚えておくといいでしょう。
予定の変更に伴い、ホテルが格下になったら返金される?
A. 台風や大雪、大雨などの悪天候により飛行機が欠航したときでも、不可抗力のため、航空会社には基本的に宿泊費や食費などの補償義務が生じません。つまり、航空会社が宿泊費を補償してくれることは基本的にないのです。
また、同じく旅行会社も不可抗力の場合には過失は認められないので、旅行会社に補償を求めることも難しいです。
ただし、海外旅行保険で「航空機遅延費用特約」を付加していた場合には、返金の可能性があります。
- 1. 出発地において、搭乗予定の航空機が6時間以上の出発遅延・欠航・運休・搭乗予約受付業務の不備による搭乗不能、または搭乗した航空機の着陸地の変更により、6時間以内に代替となる航空機を利用できない場合
- 2. 搭乗した航空機の遅延等によって、乗継地から出発する予定の航空機に搭乗できず、乗継地への到着時刻から6時間以内に代替となる航空機を利用できない場合
に、発生した費用を負担したときに保険金が支払われるものです。
そして、宿泊施設の客室料も補償対象となります。1回の補償につき、2万~3万円を限度として支払われるのが、一般的です。ただし、航空会社から払い戻しを受けた金額や、負担することを予定していた金額は差し引かれます。
したがって、ローマで延泊した際のホテルがパリで宿泊予定のホテルよりも格下だった場合は、上記特約を結んでいる場合は、その差額を返金してもらえる可能性はあるでしょう。
旅行保険の補償で航空機遅延費用は、病気や怪我による死亡や医療費負担、賠償責任、携行品などの補償に比べると絶対はずせない中心的な補償ではありませんので、損害保険会社の商品にもよりますが、オプションで付帯しないと補償がついていないケースが多いようです。
保険料についてあくまでも目安ですが、6日間での旅行保険にこの補償をつけても、プラス100円前後くらいで、旅行期間が20日、30日になってもその差は何十円程度です。
海外旅行保険へ加入する際は、オプションの補償についても細かく検討することで、自分の安心につながると思います。
[協力]
アディーレ法律事務所
[All photos by Shutterstock.com]